そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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キョウイが成都の門を抜けようと馬を進めていると、そこにリケイが馬を連れて立っていた。

「おや、リケイ殿。どうされました」

「はい、丞相様よりここでキョウイ様を待ち、共に行けと言われておりました」

「そうでしたか・・・。これは長旅になりますが・・・」

「伺っております」

「これはどこへ行くのか、またその後どうなるかは・・」

「伺っております」

「死ぬかもしれないのですよ?」

「覚悟は出来ています」

「でしたら、一緒に参りましょうか。これから先は私一人で行くよりも二人の方が怪しまれずに済むでしょう」

門を出てからは無言が続いたが、キョウイが笑いながら話しかけた。

「これは、外から見たらどのように見られますかな」

「・・・」

キョウイは気を楽にしてもらいたくて声を掛けたがリケイは頬を真っ赤に染め、答えられなかった。


やがてキョウイがリケイに近寄った。

「リケイ殿、馬の足を速めてあの木の下までいったら降りて私の方から木に登って下さい。追っ手が来ています」

そう言うとキョウイも馬を飛ばした。

木の麓に付き、リケイはキョウイのしゃがんだ肩に乗り、枝に取り付くとリケイは登っていった。

後ろから10騎の蜀兵が着いてきていた。

「何者だお前達は!私達は何も追われる覚えは無いぞ!!」

だが、10騎の兵は何も言わずに剣を抜いていた。キョウイも馬から剣を抜き、リケイの安全を確かめると切り掛かっていった。

ただの兵であったのでキョウイには叶うはずも無く、一人残らず切り殺した。

だがリケイはその光景を見て、気を失い木から落ちた。



「奴婢はいらんかね~」

街中をリケイは首かせを付けられ、4人の女と歩いていた。全員の首かせが鎖で繋がっている。

「奴婢はいらんかね~」

「婢をくれ!いくらじゃ」

「5匹まとめて絹一束じゃ」

「買ったわい!」

新たな主人に買われ5人は歩いたが、リケイの前の女が倒れこんだ。もうしばらく何も食わずにいたのだ。

「ええい!この足手纏いめ!」

そう言うと主人の剣が前の女の首を刎ねた。


そこでリケイは体を震わせて覚醒した。

「ああ、良かった。気が付きましたね」

「あ・・・私は」

「木の上から落ちました。何とか間に合って私の体で止めましたので大怪我は無いと思いますが、勝手に調べる事は出来ず

ただ、待っておりました」

キョウイは火を起こし、肉をあぶっていた。

「どこか痛みますか?」

「背中と太ももが・・・」

「太ももは自分で見られましょう。背中を出して下さい」

リケイは身を硬くして背中を出した。

「あぁ、だいぶ擦れています・・・が、大事ないでしょう。薬を塗っておきます」


リケイは心臓が飛び出さんばかりであった。その心臓の音が背中に伝わっていないか・・・それだけが気になった。

その後、夜露を避ける為に山穴に移動し、火を背にしてキョウイは表に座った。

リケイはその背中を見て、このまま何があろうとも拒まないだろう自分を妄想して眠りに付いた。


コウメイからの指示は、呉のリクソンと兄のショカツキンを表敬訪問し、極東から北へ上り、北平へ行けとの指示だった。

呉。荊州にいるリクソンは、コウメイからの手紙を読むと二人を自室に招き語り合った。

「コウメイ殿はあなたを後継者として迎えたいようですね」

「はぁ」

「私も早く見つけたいものだ」

「はぁ」

他愛も無い会話だったが、リクソンの人柄が分かり、戦の話となると黙り込む。だがそれはあらゆる事に頭を巡らせている

ような顔つきで、敵にした時は恐ろしい男になろう・・・とキョウイは感じた。リケイも

「まるで先帝とお話しているかのような優しい方でした」と話していた。

その後の旅路は支障の無いようにリクソンが通行手形を出してくれたので、旅は捗った。

ショカツキンにも会ったが、

「私ももう年だ、私よりも私の息子と話すと良い」

と、息子のショカツカク(諸葛恪)を紹介された。

頭の回転が速く、知識も豊富であり、同盟国の未来の将としては頼もしかったが、それに奢る部分も見受けられ、

バショクを思い出さずにはいられなかった。


その後は呉を抜け、魏に入る。

特別、追われるような事は無かったが、カヒ城のあたりで役人に止められた。

「おい、待て待て、どこへいくのだ」

「は・・・」

キョウイが何とかやりぬけようと考えているとリケイが答えた。

「北へ向かっています。幽州にはロショク先生のお屋敷があると聞き、それを拝見したく旅をしています」

キョウイは北と聞いた時、北平の名を出してしまうのではないかと驚いたがそうではなかった。

「ぬう?見てどうするんだ」

「あら、見て思いを馳せこの目に焼き付けるのです。その後も許昌の銅雀台とか、徐州の深い山にも興味があります。

それに都にも行ってみたいのです。何しろ・・・」

とリケイが言葉を並べると役人は煙に巻かれたように

「あぁ!よいよい!行ってこられよ!しかし、お主らのように若い夫婦が旅をするというのも良いものだな!」

「あ・・・はい・・・」

とリケイは顔を真っ赤にした。


その後は関所も無く、馬の足も速かった。

だがキョウイの胸は北平に近づくに連れ、重くなっていった。



成都ではコウメイが朝廷内に篭り、全ての内政を行い、懲罰20棒の軽いものまで全てを取り仕切った。

それこそ寝る間も無く、書類に追われていたが、お陰で影から噂をされる事も無くなり、再び蜀兵の士気も上がっていった。

だが、カンコウやゴハンはその寝ずに働くコウメイを見て心配になっていた。



やがて北平に入ったキョウイは突然に足を止めた。

「リケイ殿・・・少し相談があるのですが・・・」

「はい」

「今回、私達はここまで来てしまいましたが、丞相は当初、これを反対されておりました」

「え・・・」

「ここで劉協様をお連れして、蜀の帝となれば陛下を座から降ろす事になり、簒奪・内乱になると」

「・・・」

「それなのに、どうして急にこれを依頼されたのかが謎なのです・・・」

「ううん・・・」

「これを命じられる前に丞相は、ゴイ殿から影の噂を聞き、憤慨しておりました・・・。そのコウコウや陛下への仕返し

でしょうか・・・」

「いや、丞相様はそのように心の狭い方では無いと思うのですが・・・」

「私もそう思う・・・。だからこそ謎なのです・・・」

答え等見つかる筈もなく、二人して黙々と馬を進めたが、やがて行在所に着いた。


キョウイはどうやって入り込んだものかと思案していたが、リケイは悩んだキョウイを見て一人行在所へ入っていった。

「ん、誰だ?ここに何の用だ?」

「はい、私は蜀の先帝、リュウビの娘でリケイと申します」

キョウイは愕然とした。あろうことか、敵地でこれを名乗ったのである。

だが、考えてみれば劉協を保護している者なので、元は漢朝の重臣であるだろう事は予想出来たし、リケイの思い切りに

感動していた。

「む・・・しばし待たれよ」

そう言うと門兵は中に行ったが、すぐに出てきた。

「劉協様は、喜んでおった、すぐに入るがいい」

そう言って案内された。


屋敷には劉協がいた。ソウヒに簒奪された頃は生きる希望も無く病のような体であったが、

ここで英気を養い、元の気品も取り戻していた。

「そなたはリュウビの娘とな」

「・・・はい」

「確か、以前、皇叔が都にいた時にビケイという者と来ておったが、その娘かの?」

「いえ、違います・・・」

「そうかそうか・・・。だが遠い所を良く来てくれた。その後の皇叔について知っておる事等を聞かせてくれ」


劉協の周りには敵か味方か分からぬ者もいたので他愛の無い話だけをし、その日は帰った。帰り際に劉協が

「今日は楽しかった。また明日でも来てくれ」と言ったので、改めて伺うと、リュウキョウは

畑に出ていた。キョウイがそれを見て畑に向かい、リケイもお茶を用意して待った。

畑は目が届くので警備も無く、これはチャンスだとキョウイは近づいた。

「先帝も畑に向かうのが好きでした」

「そうであろう。私も皇叔を見て畑を始めたのじゃ。これは面白い。私はこうして初めて菜がこんなに旨いかと知った」

「劉協様・・・」

「ん・・・」

「実は私達が来たのは、蜀にお連れする為であります」

「・・・」

「これも先帝の願いでありました。どうか、蜀を照らす太陽となって頂きたいのです」

「・・・」

劉協は聞いていたが答える事はなく、やがて空を仰いで口を開いた。

「皇叔の意思がこうして生きてくれているだけで嬉しい。昔、私が血判状を書いた時の指の傷もまだ癒えぬ。

だが露見し、全ては終わったのだ。それに、あの帝の席というモノは重い。毎日、誰が敵か味方かも分からず、

毎日、命を狙われるのだ・・・。それに負ければ一族は皆殺しにされる・・・。私はもうあのような針の筵には

座りたくない・・・」

「ですが、蜀では劉協様を・・・」

「いや、やめてくれ・・・。もう官には関わりたくないのだ・・・。分かってくれ・・・」

キョウイはその劉協の涙を見て、2度と話す事は出来なかった。

その後はリケイも交え、再び他愛の無い会話をすると、行在所を後にした。


「これで簒奪騒動や、内乱は防げたが・・・・蜀はどうなってしまうのか・・・」

キョウイが真剣な面持ちでそれを口からこぼすとリケイは啜り泣き、二人は帰路に着いた。


二人が成都に付いたのは春になる頃。およそ1年あまりをかけての長い旅であった。

キョウイが朝廷内を歩くと、敵とも味方とも分からぬ輩に

「だいぶ、遠くまで行って来たようだの」等と声を掛けられた。だが、朝廷内は以前のような辛気臭さは無く、

生き生きとした空気も感じ取れた。

キョウイがコウメイに報告すると、

「そうでしたか、お疲れでしょうからゆっくり休んで下さい」

とだけ言われた。


その日はゆっくりと休んで翌日、陽も出ぬ内から朝廷に行ってみると既にコウメイは事務を行っていた。

その詰まれた書類の山にも驚いたが、コウメイの顔を見て驚いた。信じられない程やつれているのだった。

「丞相、そんなに根を詰めてはお体に触ります」

「いえ、大丈夫です。戦ばかりしてきたのでこうして机に向かう事の面白さを感じているのです」

「は・・・・」


コウメイはずっと空咳が止まっていなかった。また時折、その覆う手に血がついているのも見た。

だが、そのコウメイの様子を見てリュウゼンやコウコウの疑心も薄れ、兵の士気も高まっているのを見て安心した。

それでもコウメイを放っておけず、

「丞相、今年の夏は暑くなります・・・。お気をつけ下さい」

と危惧していたが、それは違う方面に当たっていた。

キョウイの母が、外で畑に向かっている時に倒れたのだった。


やがてキョウイの母は目を覚ました。

「おお・・・ハク・・・。私はどうしたのでしょう」

「はい、畑で倒れている所を発見され、それ以来、3日も寝ておりました」

「3日も!・・・それでは畑の草も伸びきってしまっているでしょうね・・・」

「いえ、畑の管理は私と・・・その・・・リケイで行いまして、雑草一つありません」

「リケイ殿が・・・」

「はい。今でも畑におります。また、母上の看病も寝ずに行ってくれていました。私の・・・・肉親でも及ばぬ

心遣いでありました。見せ掛けで出来る事ではありません」

「おお・・・リケイ殿が・・・・」

目を瞑ってしばらく休んでいたが、何かを考えているようだった。やがてキョウイの母は叫んだ。

「リケイ殿をここに呼んでくだされ!私はお詫びをしなければいけません!かつて奴婢であったと、跳ね返してしまい

ましたが、それを詫びなければ!ハクを宜しく頼むと伝えなければ!!!!早く!早く!!」

その尋常で無い様子にキョウイは心配を感じたが、裏に行ってリケイを呼んだ。が、キョウイの母は目を開けなかった。

「母上!」

「お母様!」

二人に手を取られてキョウイの母は永眠した。


喪も明けると二人はコウメイの計らいで式を挙げた。

この頃、カンコウとシュホウに女の子が生まれた。


戦も無く、平和な時であった。

ただ、コウメイの空咳は続いていた。




年が明けても蜀は平穏であった。

だが、急に変な噂が流れ出ていた。

(リュウゼンが帝位を降りるらしい・・・)


どこから出たのか分からないが、蜀全体に広まっていた。


「くそ!なんでこんな噂が流れているんだ!誰が降りるものか!」

「はい、陛下を置いて他の誰にもこの蜀は納められません!!」

リュウゼンとコウコウは必死になっていた。


そんな折、コウメイが再び北伐の兵を挙げた。

コウメイが表を持ってリュウゼンの前に出た。

「しばらく兵を養いその数も増え、士気も上がり、今年は豊作でございます。今こそ亡き先帝の悲願を

達成するため、コウメイ、命を掛けて魏を打ち倒して参ります」

「ん・・・むう。所で俺の帝位返上の噂はコウメイが出したと皆言っておるが・・・」

「はて」

「去年のキョウイの旅もその為だと皆言っておる」

「それでしたら、その時に噂は広まっておりましょう」

「そ、それもそうだな。とにかく俺はお前を信用しているぞ」

「は、陛下が先帝の意思を継がんとする限り、コウメイはその信頼に答えます」

リュウゼンも先帝(父)の名を出されると弱く、また出兵中であれば、帝位返上も無いかと、北伐を許した。


兵数も10万と過去最大級の軍であったが、キョウイは進軍中に浮かぬ顔をしていた。カンコウがそれを見て

「キョウイ、どうしたのだ」

「あ、いや。ただの考え事だ」

「そういえば奥方は元気か」

「あぁ。兄貴分のカンコウの所に顔も出さず済まない。ところでカンコウも子が生まれたというではないか」

「あぁ。女の子だ。戦の役には立たんが可愛いものだ。お前は男の子を作って俺のを貰ってくれ」

「そうだな」

と二人は笑いあった。

だが、キョウイの不安は的中した。漢中の広い高原で兵を止め布陣をしたが・・・・

「おい、キョウイ!この布陣はおかしくないか?」

「あぁ。私もそれを考えていた」

「これでは、ただの平面勝負だ・・・」

「丞相に聞いてみよう」

と、二人でコウメイの元へいくと、

「ははは。さすがは二人だ。もはや私がいなくても蜀は守れるでしょう」

「はぁ」

「ですが、これはただの平面勝負ではありません。今、五斗米道の教徒達が山伝いに後方撹乱に向かっています。

そうしてシバイの軍が背を見せた時に、この10万を3隊に分け一気に追い込み、火計を持って打ち破ります」

「なんと、そうでしたか」


だが、この頃蜀に悲報が届いた。

「劉協死す」

この話を聞いて蜀の民は落ち込み、リュウゼンとコウコウは両手を挙げて喜んだ。

「何が帝位返上だ!!これで蜀の雑草1本まで俺のものだ!」

「おめでとうございます陛下!コウメイも呼び戻しなされ!費用の無駄です!」

「おお、呼ばぬで何とするか!コウメイの官を這いで奴隷にしてやるわ!コウコウ、お前の家来でもいいのう!」

すぐに、使者を出した。


蜀軍は、五斗米道の教徒の撹乱に乗じて一気に攻め上がり、南安・街亭を落とし、天水も落とし、五丈原にまで

攻め上った。安定まで行く事も考えたが、兵数に余裕が無いので、このまま五丈原を落とし、ビ城を落とし

長安まで落とす作戦だった。

魏のシバイも奮戦したが、あらゆる間者が五斗米道教徒に遮られ、シバイ本体しかまともに動けぬ状態だった。

シバイ軍は五丈原の城で篭城した。


「丞相!やったのう!ついにここまで来たのう!」

「はい。あと2つの城を落とせば長安まで一本道です」

ゴハンは嬉しさで涙ぐんでいた。

だがそこに、成都からの使者が来た。

「勅使である!今すぐ兵を成都に戻せ!」

「何だと!!!」

「劉協は死んだぞ!もう兵も馬も全てリュウゼン様のものだ!さっさと戻れ!」

「だまれ!このやろう!!!俺達が何の為にここまで来たと思ってやがる!!蜀の安泰のためだぞ!!それを!!」

ゴハンも食い下がったが、コウメイはそれを制した。コウメイは珍しく大声で

「ゴハン将軍!下がるのです!もう引くしかないのです。詔を謹んでお受けします!」

と、受け取り、使者は悠々と帰っていった。


だが、その後すぐにゴハン・カンコウ・キョウイを陣の裏に呼んだ。

「まったく!コウメイ殿は何と言うことを!」

「ははは。すみません。ですが・・・将は外にあっては君命を受けずとも戦う」

「なんと!」

「これはまさに誰のためでも無い、蜀の為です。もうこうなれば蜀に帰っても無駄だと思います。リュウゼン殿に信を

説いても私の力ではどうにもなりません。であれば、心行くまで戦って、未来の蜀の為に長安を土産に持って帰りましょう」

「よく言ってくれた!!ワシも蜀で育ちとっくに死ぬ覚悟も出来ているのだ!」

「先ほど、表で大声で詔を受けましたので、シバイの間者にも伝わっているでしょう。ここで引いたフリを

しながら、シバイに追わせ、谷に誘い込んで、また火計によってシバイ軍を粉砕します」

「なるほど・・・だが、さっき使者には帰ると言ったのだ。いつまでも兵を引かんと、成都からギエンが攻めてこないか?」

「そうですね・・・」

「あいや、分かった。カンコウ・キョウイ、ちょっと来てくれ」

ゴハンは二人を連れて使者を追った。かと思えばゴハンは使者隊5人を皆殺しにした。

すると馬を降りて山を掘り始めた。

「ほれ、カンコウ、キョウイ手伝ってくれ!」

「はは・・・」

と鍬を持ち彫り始めた。

「まだかカンコウ」

「いや、これは疲れます・・・敵を百人斬ったほうがまだ楽です」

「そうであろうな!どれ、急ぐぞ」

そう言うと使者と馬具を穴に生め、裸馬を四方に散らした。



「コウメイ撤退」

この報告を聞いたシバイは

「コウメイ・・・暗愚な君主に取り付かれるとは、哀れみを覚えるぞ・・・」

「父上、この隙に追い討ちを掛けましょう!やられっぱなしでは気が治まりません!」

と長子シバシが進言した。

「いや、待て。きっとコウメイはそれも考えているであろう・・・。きっと伏兵を用意するはずだ。見ておれ、

帰りがてらの陣で釜戸の数は増えるであろう」

「増える?帰りであれば減るのではないですか?」

「いや、そこがコウメイの強いところだ。追ってきてもただでは済まさんぞとばかりにな」

事実、シバイが子二人と共に軍を率いて追ったが、陣の釜戸は増えていくばかりだった。

「ほれみろ。次の陣はもっと増えているぞ」

そうして五丈原も出るかというあたりの陣では釜戸から煙が出ていた。

「お、とうとうここまでは来ないかと急いで逃げたようじゃの。見てみろ、旗や武具や米が散らかっておるわ」

「父上、頂いてしまいましょう。これで先日やられた兵の家族に報いてやれます」

「そうだな」

すると、魏の物見がやってきた。

「ここより東の隠れた谷に多くの馬車が放置されています。中には多くの兵糧がありました」

「むう!五丈原は魏の領土だというのにコウメイめ、よく知っておるわ・・・。根こそぎ奪ってやれ!」

そう言ってシバイは全軍で蜀の残していった馬車を荒らしていった。

シバイが中を確認すると、綺麗な米が詰まっており満足気な顔をした。

と、隣の荷台を除いてみれば、枯葉が詰まっている。

「ん!」

次の荷台も、次の荷台も慌てて捲ったが枯葉だらけで、やがて火薬の匂いに気付いた。

「しまった!計られたぞ!!!皆!逃げよ!!!!」

そうシバイが号令をかけた直後、谷の唯一の出入り口が落石によって封じられた。

その後谷の上から蜀兵が弓を番え、火矢を放った。

矢は荷台に刺さり瞬時に爆発し燃え移り、馬が驚いて駆け回ればさらに枯葉が散乱し火が燃え移る。

やがて炎が風を呼び、谷が炎の坩堝と化した。

コウメイはそれを見ていた。

「父上!父上ー!」

シバイ親子も懸命に火を剣で払うが、払いきれずシバイの軍勢は次々と焼かれていった。

コウメイはほっとした。

魏の知将、シバイ。五路の軍から始まり、度々北伐で出会い、何度と無くぶつかりあい、その知略は

恐るべきであった。が、それも今、炎に焼かれ死のうとしている・・・。


キョウイもコウメイの隣にやってきた。

「ついにやりましたね・・・」

「あぁ。これで長安までの道も開かれた」


だが、全てを焼くかと思われたが、空に稲妻が走り炎にぶつかったかと思うと、突如大雨が降ってきた。

火という火と消し、底の深い谷も一瞬にして池になるのではないかと思うほど降った。

シバイの軍は殆どが焼け死に、残ったのは守られたシバイ親子と兵が二人だけだった。

それも大雨によって崩れた岩の隙間から懸命によじ登り脱出していった。


コウメイはそれを見て倒れこんだ。

起き上がる事も出来なかった。それをキョウイが抱え木陰に逃げた。

「雨はお体に触ります・・・」

「・・・」

「どうか気をしっかり・・・」

「キョウイ・・・」

「は・・・」

「事は決した」

「・・・」

「事を謀るは人にある」

「・・・」

「だが事を成すは天にある」


コウメイの顔から生気は失われた。

蜀の兵も泣いているのか・・・雨が全てを流していた。
コメント
この記事へのコメント
もうボチボチ臥龍が天に帰りそうだね。
孔明と仲達は幾度と無く戦場で己の知を競ったけど、基本的には孔明が有利だったね。
でも、いかに孔明といえど、天を味方につけた仲達にはついに勝てなかった。その辺は歴史が証明してるね。
仲達は結構自己顕示欲が強くて孔明より自分の方が上だと思ってたけど、死せる孔明、生ける仲達を走らすって言葉があるように、最終的には、己の死すら策に利用する孔明には勝てないと感嘆したって話だね。
まぁ、ぶっちゃけ、孔明が死んだ時点で司馬が天下取ったも同然だったろうねw
呉も頑張ってたけど、孫権以降がほとんど暗愚だったから、結局陸坑(陸遜の子供)が一人で頑張るしかなくて、でも一人だけじゃどうしようもなかったって話だからねw
2011/04/30(土) 03:41 | URL | 冷麺 #-[ 編集]
>めん

終わりましたw

終わらせましたwww

つかれたああw
2011/04/30(土) 07:33 | URL | まる #-[ 編集]
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