そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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コウメイがリュウゼンに出した出師之表には並々ならぬ気迫が篭っていた。

漢中より北に攻め入り、長安を落とす。

この為の将の名、兵、戦術が記されており、何よりも先帝(リュウビ)の思いを遂げんが為の出兵である。

それがコウメイの直筆により掛かれており、誰も反対する者はいなかった。


と、思うじゃん?ww


だが、一人だけいた。

その者は、コウメイの部屋に押し入り、コウメイを怒鳴りつけた。

「これはどういう事なのだ!ここに書かれている将は!ゴハン、バタイ、ヨウギ、リョウカ、ギエン!

これは良い!歴戦の強者だ!ヒイ、トウシ、ゴイ、リゲン!政務が主だが、先帝を知る人物だ!

チョウホウ、カンコウ!これも良い!バショク、ショウエン!まぁよい!!

誰が悪いと言っているのではない!ここには32人の将が書かれているが、33人目はどうしたのだ!」

「はい、その33人目は33人目に在らず、この第壱の筆頭人でございます」

「だったら何でワシの名前が無いのだ!!」


「・・・チョウウン将軍。もはや天下に誇る五虎将は将軍を残すだけとなりました。ですが、将軍がいてくれれば

こそ、この出師の兵達の士気が奮い立ちます。チョウウン将軍は100人力、いや千・・・万にも匹敵する強さを

誇りますが、その存在だけで蜀軍全て・・・20万人の兵の力となるのです」

「つまりこういう事か・・・・。ワシにはあぐらを画いて座っていろと!?・・・・・・・

あれが五虎将のくたばり損ないじゃと!!!!!!!!!!埃を被っていろと!?」

「いえ・・・そうではありません」

「なら何だというのだ!・・・・コウメイ殿。私は先帝を・・・いや、あえてゲントク先生と呼ぼう。

ワシが奴隷市場でコウソンサン殿に買われたのが5,6の時。以来甘えて育ってきたが、15、6で人生の師匠に会った。

ゲントク先生に文・学を習い、カンウ先生に、チョウヒ先生に武を習い、古城の旗揚げに立会い、先陣に立ち、

修羅場を何度も潜って来た。この先生らがいなければ今頃のたれ死んでいただろう。まして、この出師はゲントク先生の悲願で

あろう!漢王朝を復興させんが為のゲントク先生の悲願であろう!!それに立ち合わさぬとはどういう事なのだと聞いている!

それでも丞相の権力を持って、これを通すのであれば、こんな大将軍の位など溝に捨ててくれる!官を辞してでも、

単騎、ゲントク先生の旗を指して槍を持って先駆ける!」


大人しいチョウウンがここまで吠えたのは初めてであり、コウメイは平伏した。

「・・・・私の考えが浅はかでありました・・・・」

「・・・いや、分かってくれれば良いのだ」


それからチョウウンは息を整えると言葉を続けた。

「・・・それから武辺のワシが言うのも何だが、近頃朝廷では胡散臭いのがウロチョロしておるの・・・・」

「は・・・・」


コウメイは半年も成都を離れていたこともあり、朝廷の変わりように驚いていた。

リュウビが作ろうともしなかった側室用の部屋がいくつも作られており、分けのわからぬ人物が行き来していた。

まして、リュウゼンの顔つき・・・。とてもリュウビの子とは思えぬ程に弛んでいたのだ。

だが、口に出す事も出来るわけも無く、ただただ距離を置くことしか出来なかった。

また、長安を落とし、この北伐を成功させる事で目を覚ますだろうと自身に言い聞かせていた。


チョウホウとカンコウは南蛮から帰ってくると、互いに距離を置いていた。

モウカクと祝融の夫婦の姿を見て、男と女というものを始めて見た。互いに、父が女と抱き合うような所は見た事もなく、

自分もいずれ・・・そう考えると、恥ずかしくなり、また恋の宿敵でもある兄弟のような相手を意識していた。


二人はリケイに恋をしていた。

カンコウは荊州で出会い、一緒に成都まで帰ってきた。チョウホウもゴケイに手を引かれて歩いているリケイを見て

一目惚れをしていた。互いに報告しあい、驚いたが、これには勝負をする事も無く、また抜け駆けもする事も出来ず

それを互いに知ってからは、これを口に出す事も少なかった。


だが、二人とも26歳となっており、世間的にも大人の仲間に入りつつある。

二人は互いに意識する事なく、歩いていた。


「なぁ・・・そろそろ決着を付けないか」

カンコウはその意味を理解した。丁度、ゴケイの学堂の目の前を通り過ぎた時だったのである。

「それはいいが・・・どうするんだ?」

「そうだな・・・俺はこんな事でお前と殴りあうなんて出来ぬ・・・」

「俺も同じだ・・・」

「・・・おばさん(ゴケイ)に聞いてみるか・・・」

「そ・・・・あぁ」

二人はゴケイにこれを話した。だがゴケイは

「この蜀の未来を背負う若殿二人がリケイを好むとは、母代わりとしてこの上ない幸せです。ですが・・・

リケイには女の躾という者をきつくしております。殿方の意を押しのけて自分の意見を言う事など無いでしょう。

それがお二人のような仲良しであれば尚更です・・・」

これには二人とも黙るしかなかった。ゴケイは続けた。

「ですが、恥を忍んでのお二人のこの行動も捨て置けません。後でリケイには聞いておきますが、お二人ともこれから

北伐へ向かわれるのでしょう・・・。その間に良い考えが浮かぶかもしれません。それまではこの話は忘れ、力一杯

蜀の為に尽くして下さいまし」

「はっ!未練がましい事は言わず、戦って参ります!」

二人の目は真剣であり、また衆を抜くこの二人の若者に好意を抱いていた。リケイが2人いればすぐにでも嫁がせたい思いであった。


やがてゴケイはリケイに尋ねた。

「リケイ、そなたはいくつになられるか」

「はい、24になります」

「おお、もうそんなに・・・。その良い年になれば意中の殿方がいてもおかしくはないと思うのですが、おられますか?」

「いえ、ようやくゴケイ様の教えを悟り、書物の面白さを理解出来たのでございます。リケイは書物に嫁いでおります」

「書物に・・・」

ゴケイは自分の教えを守り続けるリケイを本当に娘のように思っていた。それだけに幸せに生きて欲しいと願っていたが、

今回の若武者2人にはこれで弁解は出来るだろうと考えた。だが、幸せを思えば、意中の人に嫁がせてやりたい・・・。

しかし、自分の教えでは、親代わりのゴケイの言った相手としか結婚はしないであろうし、深く悩む事となった。


リケイにも思いはあった。カンコウとは生死と共にした長い付き合いで、顔を見ただけで胸が高鳴る事もあった。

チョウホウも、成都に来たばかりで不安だらけだったのに、無邪気に偏見も無く親しくしてくれたお陰で不安も消し飛び

今の生活がある。どちらにも思いを寄せていたが、それは兄のように慕う心であった。

だが、一度だけ、胸が張り裂けんばかりに高揚した事がある。それは過去、コウメイの作戦で桟橋を作る為の人集めを

成都で行った頃、居並ぶ男達の中で一人だけ身長が大きく、また整った顔を見てリケイは心を奪われた。

さらに男は、見ているリケイに気付き、微笑みを返したので、リケイはそれを見て、慌てて逃げた。

それがリケイの初恋であったが、以来、会う事も無かったので、ただただ想いが募るばかりであった。


ゴケイが何度となく、意中の人を聞いてくるので、リケイはこれを話すとゴケイは涙を流した。

意中の人がいてくれた事は嬉しかったし、何よりも一目惚れをして5年が経とうというのに、今でもその人を

思い続けているという乙女心に心を撃たれたのであった。


だが、その意中の人は単なる金稼ぎに来た若者であった。諸国を巡り見聞を広め、やがて親の元に帰った。

巡った先で知り合った将に仕官も勧められたが、母は生まれ育った地がここだから・・・と地元で仕官させた。


蜀軍は総勢10万。対して漢中以北の魏の守りはカコウボウと呼ばれる将が付いていた。

ソウソウの娘と結婚しただけの男で、この初陣は40歳であった。

かつてない蜀軍の大進軍にソウエイは怯えた。

この頃には魏の2代目ソウヒは死んでいた。文才はあったがそれ以外は何もなくただの飾りであり、その長子がソウエイだが

これもまた飾りであった。


進軍を続け、チョウウン・ギエン・ヨウギ・ゴハン・リョウカの5将に1万ずつに分け、それぞれに安定・南安・街亭・祈山・天水

と目標を与え進軍した。それとは別にカンコウ・チョウホウには5千を付けて遊撃隊として備え、コウメイが本体4万として

進み続けた。

これら全てを抑えれば、長安を覗く事も容易くなる。

コウメイ軍は落ちた南安に入り、状況を見守った。

対する魏軍もそれぞれに兵を分けて出てきたが、バショクの伏兵やチョウホウとカンコウの挟撃に合い、次々に打ち倒す。

ゴハン・リョウカ・ヨウギの軍は南安と祈山を落とし、天水へ向かった。

一方ギエンは安定を目指したが、天水の遥か遠方であり、新たに指示を待とうと祈山で待機をしていた。

そこでギエンとバショクと何やらもめていた。

「ここは一気に突き進み安定まで落とすのだ!」

「いえ、そんな事をしては天水が魏に落ちた時に退路を断たれる。先に街亭を攻め、退路と補給を同時に確保するのが上策だ!」

ギエンはこの時47歳でチョウウンの大将軍の次の地位にいた。対するバショクはまだ40。しかもコウメイの腰巾着のようで

何かと好きになれなかった。

そこにコウメイ率いる本陣が到着し、これを聞くとバショクの意見を取り入れた。

ギエンはその時、悔しさにあふれ目は血走っていた。

それに反感の相を見たとバショクに伝え、警戒させた。


しばらく時も経ち、チョウウンがとっくに天水を取れている筈の頃なのにいつまでも連絡がなく、不思議に思ってコウメイが

チョウウンの陣まで走った。その頃にはギエンが街亭を力ずくで踏み倒したと吉報も入っていた。

この天水さえ取れれば、あとは安定を抑えるだけで、目標は達成される。


コウメイを見たチョウウンは笑顔で言った。

「いやぁ。丞相。後世畏るべしじゃ・・・・」

「大将軍ともあろう人がどうなさったのですか」

「この天水、敵が陣を構えているので行けば誰もいない。町に入りながらも空城の計かと用心して進めば何も無い。

かと思えば、火矢が飛んできて屋根が崩れ落ちる。慌てて出て行けば誰も追ってこない。安心して陣を張ると銅鑼鉦鼓が

聞こえてくる。それに出て行けばやはり誰もいない・・・・。おかげで敵兵1人も討ち取っていません・・・

申し訳ない・・・まるで、コウメイ殿と戦っている様だ・・・」

「・・・・先ほど、後世畏るべしと言いましたが、敵将に会ったのですか?」

「あぁ。一度だけ一騎打ちに応じてくれたが、この技が尋常では無い・・・。蜀の五虎将は置くとして、あれ以上に

強い者は見た事も聞いた事も無い・・・・」

「名前は分かりますか?」

「あぁ。しかと名乗ったぞ。天水生まれのキョウイ=ハクヤクだと言っていた」

「キョウイ・・・」


そこにチョウホウ・カンコウが飛んできた。

「俺達はキョウイと会った事があります」

「はて」

「かつてシバイの五路の軍の対策を話しに漢中に行った時に会いました。その時はコウメイ先生の桟橋作りに参加していた

そうです」

「なんと、そんな武者が桟橋を・・・・」

「また、母への孝行を尽くすと言って、地元に帰ると行っていました」

「それでこの天水の将となったのか・・・」


だがコウメイは母への孝行という言葉を聞き、笑った。

コウメイは漢中一体に広まっている五斗米道の教徒にキョウイについて聞いた。

「あれは、大変な孝行息子です。かつて兄弟は6人いたのですが、皆死んで、残るのがキョウイだけです。ですが

キョウイも12才の時に高熱を出して死に掛けていました。その時に北斗南斗という生と死を司る者が、そこの山・・・

ガビ山の頂上にいるという噂があり、これにお願いをすれば助かるかもしれんという噂を母が聞きました。

ガビ山は見ての通り、人の手で登れるような山ではありません。それでも母殿は上り詰め、頂上で碁を打っている

北斗南斗に息子の命を助けてくれと懇願したようです。その頃の母殿は手の爪も皮膚もただれきり、碁を打ち終わった

北斗が懐から書を出すと、姜維(キョウイ)十二と画かれており、その母を哀れに思った南斗がそこに六を書き加え

それ以降、キョウイの熱は下がったようです。これは事実かは定かでは無いですが、普段からの母殿を見ていれば子に対する

愛情も伝わり、納得の出来る話であります。また、それだけの母だからこそキョウイは孝行をするのだと、ここらでは

有名な話です」

「なんと・・・寿命が62歳に!」

「はい」

「その母殿の家をご存知かな?」

「はい、こちらです」


こうして翌日、天水に噂が流れた。

(コウメイはキョウイの母をさらい、南安に閉じ込めている)

その日の夕方にはキョウイは南安の門に立っていた。剣だけは腰に刺していた。

それを見たトウシはキョウイを向かえ、コウメイの所に案内した。

キョウイは付近から矢が狙っていないかと周囲を警戒するが、それを見て母の命に・・・と考えると

剣を取る事も出来ず、胸を張って付いていった。

だが、キョウイが見た母は全く想像も出来ぬ姿だった。


屋敷の庭で男と畑勝負をしていた。

「おお、ハク、きたかね」

「母上・・・これは」

「私はこれまで畑仕事は誰にも負けないと思っていたが、この人には叶いませんでした。コウメイさんと言うのです」

キョウイはそれを聞いてコウメイに会釈をした。キョウイはコウメイに

「私の母は、土を起こし実らせる事が全ての民の生きる道だと言い、畑仕事を好んでいます」

「私もそのような人を二人知っています。一人は荊州で百姓の大将軍として崇められたリキュウ殿。もう一人は蜀の先帝

リュウビ殿です」

「リキュウ殿にお会いしたいと思い荊州にも行きましたが、既に亡くなっておられました」

「孫娘が蜀におります」

「・・・・・お会いして話を聞いてみたいものです」

そこにキョウイの母が口を挟んだ。

「ハクよ、聞けば魏の帝は、元漢朝の劉協さんを蹴落として帝位に付いたというではありませんか」

「は・・・」

「私は官なんて知らないので、生まれたところで仕官させるのがハクの為だと思ってましたが、もはや、ハクや。

好きな所で奉公すると良い。私は、コウメイさんから蜀の話を聞いた。噂はここまで広がっている。一度行ってみたいのじゃ」

「・・・・は」

それを聞くとキョウイは剣を投げ出し、コウメイに平伏した。降状の姿勢であるのでコウメイは急ぎキョウイの手を取った。

その手には熱い情熱が注ぎ込まれており、瞬時に・・・互いに命を掛けられる仲間であると思えた。

そのまま3人で語らい、夜になるとコウメイはキョウイに尋ねた。

「ところでキョウイ殿。天水の仕掛けを教えて頂きたい。あれは人命に関わるので・・・」

「確かに」とキョウイは笑った。

「あれはかつてコウメイ殿が新野で行った空城の計を真似たに過ぎません。ですが、チョウウン殿は決して深入りする事は

無く、誰一人、討つ事は出来ませんでした。私の負けでございます。後で私が全て解除しておきます」

「そんな事をすればお主は魏を裏切る事になりましょう・・・」

「いえ、母も先ほどああ言ってくれました。あのように喜んだ母の顔を見るのは初めてです。また、私も蜀が好きでした。

特に漢中ではホウヨウ殿や五斗米道のチョウレン殿、それに亡きカンウ・チョウヒ将軍の子達とも知己の間柄です。

カンコウ殿とも同年の26でございます」

「そうですか。ですが、お主の名に泥が付きませんか?」

「いえ、名など気にしません。母が喜べばそれで良いのです」

「分かりました。私は子が遅く先日6つになったばかりなので、キョウイ殿を子とも思いましょう」

「コウメイ殿はおいくつになられますか」

「馬齢を重ね47になりました」

「父が生きていれば47です」

そう言うと二人は再度熱い手をかわした。


こうして天水の仕掛けを解き、いよいよ持って安定へ攻め入ろうという頃、魏ではシバイを中心とした20万の軍勢が

長安を出たとの知らせが入った。

五路の進軍をしかけてきた、コウメイを悩ませた宿敵である。

あれはバチョウが生きており、またリクソンのカンウへの想いがあったからこその対策で、それが無ければ

蜀は一飲みにされていたであろう、コウメイを震えさせた進軍であった。その男と直接対決となる。


コウメイはそれを受け、天水にいては防ぎきれぬと判断し、後退。

それを見たシバイは10万ずつに分けて、進行してきた。

蜀は5万ずつ、チョウウンとバタイに分けて交戦したが、チョウホウ・カンコウの遊撃隊の撹乱攻撃も、

シバイの子であるシバシ・シバショウに抑えられ、平面の勝負となってしまった。

こうなれば数が物をいい、蜀軍は2万の兵を失って一気に漢中まで後退した。

だが、驚いた事に、ギエンが安定を落としたという報が入ってきた。

このシバイの進軍の前に指示していたもので、ギエンはバショクとの喧嘩の腹いせか、怒りのままに進軍していた。

これを聞いたシバイは慌てて天水へ戻った。

安定・祈山・街亭・南安を置き、天水を囲む形となった。

だが、魏の長安から安定制圧軍のチョウコウ部隊が発進したので、これを聞いたコウメイはギエンに撤退を命じた。

あのまま安定にいれば挟み撃ちにあってしまうのだ。


そのまま膠着状態が続いたが、やがてシバイは10万の兵を南下させた。

しかもすぐに2方向に分裂させた。その先には街亭と祈山がある。

ここで蜀陣内では意見が別れた。

バショクは

「この2方向に分けた軍は必ず街亭に合流する。ただの陽動作戦である!なぜならな街亭は長安と天水・漢中を結ぶ中心であり

ここを失うと北方の戦力を削ぐ事になるのだ!街亭に5万はなければいかん!」

というのに対し、キョウイは

「祈山へ向かっている軍の総大将はチョウコウ将軍です。あれだけの歴戦の将が虚兵だとは思えません。また、シバイは二路どころか

先年は五路の軍を画策しています。これはどちらもそのまま進軍してくるでしょう」

コウメイは、バショクとキョウイにこれを預けていた。どちらも知略に長けており、いずれコウメイの後を継ぐのは・・・

それを計っていたのだった。

そこに、衛兵が飛んできた。

「チョウウン将軍が危篤にございます!!」

「なんだと!」

コウメイはバショクとキョウイを連れてチョウウンの寝室に急いだ。そこには既にチョウホウとカンコウがいた。

外に医者もいたが、医者は首を振っていた。

「チョウウンどの!」

「おお、コウメイ殿・・・」

「どうなさいましたか」

「いや、少し疲れただけです」

「実はシバイが軍を南下させてきています。将軍に出てもらわねば収まりが着きそうにありません」

「むう、また来たかシバイめ・・・今度こそ叩き切ってやる」

「その為にも、今はお体を休めて頂かないと」

「っふ」

チョウウンは笑った。

「実はな、コウメイ殿、ワシはもういかん。医者が笑顔を見せるようでは、もはやあの世に足を突っ込んでいる」

「何を弱気な事を・・・」

「・・・コウメイ殿、ワシが先帝とコウメイ殿の屋敷を訪ねたのは何年前かな・・・」

「もう20年以上も前の事です」

「そうか・・・もうそんなになるか・・・」

「・・・」

「お、槍の使い手も来ているな」とキョウイを見て笑った。横にいるチョウホウ・カンコウを流し見て続けた。

「ワシは15,6の鼻垂れ小僧の頃、北平のコウソンサン殿の元で小間使いをしておった。そこに3人の兄弟がやってきて

ワシに目を掛けてくれていた。それがワシの先生であった。ゲントク先生はワシに人論の道を・・・お前らの親父・・・

カンウ先生はワシに肝っ玉の据え方を、チョウヒ先生は肝っ玉の置き所を無言の内に教えてくれた。それより槍一本で

戦場を駆け、敵中を先駆けた。良い友にも出会えた。頼みとする後世もいる。幸せな人生であった。さらばじゃ」


そう言うと大きく息を吐いて目を閉じた。

誰もが、休みに入ったものと見たが、座したまま目を開ける事は無かった。

57歳。奴隷として生まれ、槍一本で戦場を駆け、ついには蜀の大将軍まで登り詰めた。ビケイに恋をし儚く散り、それ故に

娶る事もせず、養子も求めず、ただひたすらに忠義を尽くし走り抜けた武将らしい最後であった。


コウメイの悲しみは深かった。だがシバイはそれでも兵を南へと進め続けている。

コウメイは再びバショク・キョウイに対策を振ったが、コウメイもキョウイと同意見であった。

そこで、バショクに2万を持って街亭に布陣、両翼にはチョウホウ・カンコウに5千を付けて、祈山のギエン2万と連携。

残りの3万で漢中の防衛に当たろうとした。

コウメイがそれをバショクに伝えると、

「お断りします」とバショクが断った。

「街亭には10万が攻め込んでくるのです!2万では抗しようもありません!」

「バショクよ、もう軍議で決まった事なのだ。必ず先に街亭に着く。低地に陣を置きすぐに罠をしかけ、シバイの5万を迎え撃て!」

「お断りします」

「・・・バショクよ!これを断るとあらば軍令違反にてお主を誅さねばならん」

「・・・は、お受けします」

バショクの返事に全く力が無かった。が、それでもバショクの知略とチョウホウ・カンコウの働きを持ってすれば

何とかなる、と考えていた。


やがて、両軍はぶつかりあった。


しばらくして、コウメイのいる南安にカンコウが単騎、報告に来た。

それを聞いたコウメイは聞き返した。

「カンコウ殿、夢でも見ているのですか?私はバショクに低地に陣を敷けと・・・」

「はい、私もかつて叔父上(リュウビ)と共に高地に布陣し、リクソンに干された経験があり、これを非難しましたが、

10万に対抗するには捨て身の体当たりしかない、高地から一気に駆け抜けシバイを討つ。それは竹を裂くが如く!と、

取り合ってもらえず、それでも講義すると、軍令違反として斬ると言われました」

「・・・・・」

「シバイもそれを見て、遠くに陣を置き、我らの水路を断ちました。バショク殿は相手が遠いのでどこに竹を裂いて良いか分からず

動揺している内に火攻めを受け、散々に打ちのめされ、血路を開いて報告にあがりました」

そう言うカンコウの鎧は返り血で真っ赤であった。

「それで・・・・皆はどうなったのか」

「バショク殿は近衛兵に連れられ脱出しましたが、チョウホウはそれを守る為に陣を捨て出て行きました。

また祈山の様子も心配であり、指示を仰ごうと参上致しました」


コウメイは天を仰いでいた。

「ギエン殿はまだ祈山で奮闘中であろう・・・チョウホウも祈山に向かっている筈だ・・・。カンコウ殿、

もう一度死地に行ってくれるかな・・・」

「はい、どこへなりと」

「では、祈山へ向け出てくれ。そこでギエン・チョウホウ両将軍と合流し、祈山を捨て・・・ここまで下がると良い。

ただ、もしここ(南安)も落ちていたら・・・漢中まで・・・下がるのだ」


バショクは自分がコウメイの後継者たる!と意気込んでいた。だがそこにキョウイが現れ、自分よりも器が上だと

何度も思った。キョウイもその空気を感じ取ってか、コウメイの隣にいてカンコウの話を聞いたが何も言わなかった。


カンコウは単騎で祈山に着いたが、既に大軍に囲まれていた。

だが怯む事は無く、敵兵を薙ぎ倒し、ギエンの元へ駆け抜けた。

「全く!何だというのだ!街亭へ行ってる筈の敵までが祈山へ来るとは!このままやられて魏に降れというのか!」

ギエンは怒っていたが、カンコウはギエンに言った。

「コウメイ殿より、チョウホウの軍と合流し、ギエン殿共々下がれとの事です」

「何だと!ここまで来てか!それにこの囲みは安々とは破れんぞ!」

「はい・・・ですが、チョウホウの5千とギエン将軍の2万があれば、一点集中で進めば破れるかと」

「チョウホウの5千!?そんなもんはとっくにシバイの軍とぶつかって全滅しとるわ!」

「え!」

「バショクを助けると言って出て行きおった!俺の所も1万もおらん!ええい!ままよ!」

「チョウホウは!?」

「知るか!そんなこと!」


その後ギエンは囲みを破り南へ下がっていった。

カンコウはギエン兵の胸倉をつかまんばかりにチョウホウの行方を聞いたが、西の方へ追われていったとしか分からなかった。


そのままカンコウ自身も囲いを破って西へ向かって単騎、チョウホウを探しに行った。


ギエン軍は漢中に付き、コウメイ本体と合流したが、会話も無くギエンは成都へ帰っていった。

バショクも傷だらけで漢中まで帰ってきた。ゴハンもヨウギもリョウカも無事であったが、チョウホウとカンコウはいなかった。


シバイの軍も南安まで攻め入ったが、コウメイの空城の計を受け、天水まで下がっていった。


やがてゴハンを始め、突き上げがあった。

「此度の敗戦はバショクの奴が軍令違反にて敗戦を煽ったというでは無いか!このままで済ます気か!?」

「いえ・・・軍令違反であれば罰するに価しますが、それの確かな証拠がありませぬ故、会議は開けぬ所存です」

「そのバショクにしたって、あれから部屋にこもりっきりじゃ!兵も噂しとるぞ!バショクのせいだ!

だが何故、丞相はバショクを斬らぬ!と!」

「・・・・はい」

「このままでは士気もだだ下がりで、シバイがまた来たら漢中も落ちるぞ!早々にこの問題に決着を付けてくれ!」

「・・・分かりました」


確かに、軍令違反であれば処罰する。だが、先にシバイの軍が来てやむなく高地に布陣していたとしたら、それは

ただの敗戦であり、罰する事はない。ただ、これを知っているバショク・チョウホウ・カンコウの軍は壊滅。バショクに

聞いても意味は無く、2人の若武者も行方知れず。処罰の会議も開けない。それよりも2人の身が心配だった。


その頃、カンコウはただ一騎、山中を捜索していた。

祈山から突破してひたすらに西に向かって走り続けたが、それらしい軍の姿は見えなかった。

3日も飲まず食わずで探していたが、朦朧とする意識の中、チョウホウの無事を祈って気力で駆け回っていた。

「お前がこんな所で死ぬ筈が無い。お前は図太い奴なんだ。死ぬもんか!」

そう口にして自身を奮い立たせ、弱気な考えを払拭する。


そうして進んでいると、カラスの群れを発見した。

「頼む、こんな所にはいないでくれよ!」

群れの中にいたのは蜀の兵だった。

「チョウホウ、お前はこんな所にいてくれるなよ!」

そう願って死体を確認していくが、チョウホウの姿は無かった。

と、水の音が聞こえ、馬にやらねばと水の音の方へ歩いていったが、それは水では無く、血の川だった。

山中の谷で、大きな岩が不自然に転がっており、投岩による攻撃と伺え、その血の川は果てしなく続いていた。

その死臭の元へたどり着くと、大量の蜀兵の死体が転がっていた。

「チョウホウ!いるなよ!ここにいるなよ!」

必死で願いながら死体を見ていくと

「あっ!!」

とカンコウは力無く膝から倒れた。巨大な岩に頭から胸にかけて押し潰されている死体が一つ。

その白い鎧はチョウホウのお気に入りである。

その手の巨大な蛇矛は亡きチョウヒの形見である。

その腰に着けた銀の鈴はチョウホウの宝であった。

・・・リケイに貰ったんだと、カンコウに自慢していた・・・


カンコウは急ぎ立ち上がり岩を押しのけようとするが、ビクともせず、諦めた。


その手から蛇矛と銀の鈴を取ると、手を合わせ馬に跨った。

「蜀に帰ったらリケイを俺と競うのではなかったのか!!!!!」

その叫び声にカラス達は鳴くのを止め、森の静寂が一瞬出来上がった。



鈴の音が響き渡った。
コメント
この記事へのコメント
ついに出ました!天水の麒麟児:姜維伯約!!
俺こいつかなり好きだわぁw
孔明の弟子という立場で、経験こそ浅い物の孔明に、潜在能力は自分をも凌ぐと言わしめ、老いたとは言え天下の五虎将趙雲と切りあって引き分けた男!
総合力においては三国志中一番(だと俺は思ってる)!
キョウイがいたから孔明亡き後も蜀は続いたんだ!
まぁ、結局は師馬に裏をかかれ、ドラ息子のおかげで蜀は滅亡しちゃったけど、本当に最後の最後まで蜀の為に奮闘した義にあつい男だよ。

今回の話は有名な泣いて馬謖を切るの場面だね。
何気に、孔明って頭は良いけど人を見る目がないよねw
2011/04/27(水) 22:57 | URL | 冷麺 #-[ 編集]
>めん

キョウイねぇ。いいこよねぇ・・・。

確かに文武そろった奴は少ないものね。

カンウが最初・・・かな?w
2011/04/28(木) 01:28 | URL | まる #-[ 編集]
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