そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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コウメイは新たなソウソウ軍の将、シバイを懸命に探っていた。

どれほどの人物か。それによって策を代える必要が出てくる。

ただ、シバイ自体は戦場に出る事は無かった。

ソウソウ軍は長安を出た30万の軍をソウジンの10万、チョウコウの10万、カコウトンの10万に分け

安定・街亭・五丈原の3方から漢中へ攻め入った。

対して漢中の守りにチョウヒ・バチョウ・バタイ・コウチュウ・ゲンガン・ギエンを始め多くの

将が集い、兵は10万にやっと届いた。

圧倒的に不利であったが、コウメイは荊州で仕官してきたバショクを呼んだ。

バショクは武芸と政治に関心は無いが、戦術に長けており、それを見抜いたコウメイは、

後継者にしようと決めていたのだった。

ソウソウ軍はリュウビ軍の3倍を揃えており、3つに分けても兵力は互角。

リュウビ軍が全部隊で動けば、挟み撃ちに合い、敗戦は必死だった。

また守りを固めも、やがては平面勝負になるだけであり、それも敗戦に繋がる。


バチョウ・バタイは天水の出身であり、地方の族・侠族とも繋がりがある為、3万の兵で安定に向け

出陣させた。そこで長安から着いたばかりのチョウコウ軍とぶつかった。

チョウコウは一騎打ちには応じず、堅く門を閉じて様子を伺っていた。バチョウも兵数が劣るので

城攻めは避けていたが、バタイを使者に出し侠族の援軍をもらった。

山の上、道も無い所から突如、火矢を浴び安定の城内は大混乱に陥った。

その後も山には怪しげな族が次々と集まってきており、それを不利と悟ったチョウコウは遂に門を開けて

突撃した。

だが、バチョウの軍と侠族の挟み撃ちに合う形となり、すぐに門の中に入ってしまった。

シバイはそれを聞き、天水・西涼の土地の一部を割譲する事で侠族に手を引かせたが、バチョウへの思いは

強く、侠族軍の内3万人程がバチョウ軍に入っていった。

チョウコウは完全な籠城戦の体制をとり、城壁に再び多くの兵を配置した。長安からの補給線もあるため

余裕もあった。バタイがその補給線を断とうと勝手に進軍したが、シバイの伏兵により壊滅。

バタイ一人が陣に帰って来た。

街亭ではチョウヒとギエンが2万の兵で、ソウジン率いる10万の軍勢と互角に戦っていた。

コウメイに何度か敗れているソウジンは簡単には兵を進めなかったが、チョウヒやギエンが陣の前で

挑発していき、それに耐えかねた兵が次々と勝手に出て行き、死体となって帰って来る。

天下のチョウヒが相手といえど、5倍の兵力を持ちながら全く進もうとしないソウジンに嫌気を

さして、兵は散っていってしまった。その散った兵もすぐさまチョウヒ・ギエンに斬られ、あるいは

リュウビ軍に降っていった。

それを見たシバイは偽の投降をさせようとするが、バショクはそれをいち早く見抜き、それを防いだ。

もはや、街亭の大勢は決したかと思うとギエンは1万の兵を連れてバチョウのいる安定に進んだ。

五丈原ではコウチュウ・ゲンガンのジジイコンビが4万の兵でカコウトンに対峙していたが、圧されまくり

漢中付近まで後退した。だが、漢中の五斗米道を積極的に補佐していたリュウビ軍。それを好んだ教徒は

山から岩や大木を転がし、カコウトン軍の足止めをした。岩や木が四方八方から飛んでくるので、教徒の数も

分からず、山に兵を向ければジジイ達が突撃してくる。やがてカコウトン自身が落石を受け大怪我をした為、軍は

退いていった。

それを見るや、ジジイ二人は安定での苦戦を聞き、馬を飛ばした。


にらみ合っていたバチョウ軍5万。そこにギエンが1万を持って加わり、さらに長弓のジジイコンビが到着し

かつて漢中を落とした時のように戦局はリュウビ軍に大いに傾き、やがてチョウコウは安定を捨て、逃げていった。

ソウジンも僅かな手兵と長安に帰り、カコウトンも傷だらけで長安に運ばれてきた。

30万もいた軍はほぼ壊滅し、安定・街亭・五丈原のいずれもリュウビ軍の手に渡り、長安まで攻め込まれる

のでは無いか。そういった不穏な空気を感じ取ったソウソウは、自ら20万の兵を持って長安まで渡った。


だが、リュウビ軍では漢中までを納めるのに手一杯であり、安定等の三箇所は手放して、再び漢中まで兵を退いた。

コウメイは漢中でそれぞれの将を労い、特に侠族と五斗米道の教徒に対し手厚いお礼を施し、再びバチョウ達に

漢中を託し、成都へ帰っていった。散々にやられた将兵を見たソウソウは肩を落とし、敗軍の将を罰しても何にもならぬ為、

許昌へと帰って行った。


リュウビがコウメイ達の遠征を労い、大規模な宴会を開いた。

この時、リュウビも50歳を越えていた。だが、リュウビ軍の勢いは留まる事を知らず

このまま天下を取るのではないかと、誰もが考えていた。


宴会も終わり、リュウビとチョウヒ、コウメイが外を眺めていた。

「おお、見ろ兄者!桃が咲いているぞ!」

「見事なものだな。ヨクトクの屋敷の桃とどっちが綺麗かな」

「ううん・・・しかし、あの時、ウンチョウの兄貴と3人で兄弟になって、あれからもう30年か。兄者も年を取ったな」

「それを言うな。しかしまだ2剣を振るい畑を耕す事なら誰にも負けん。あ、キュウさんには負けるがな」

「殿、これからが正念場ですよ」

「あぁ、分かっている。二人とも、今後とも宜しく頼むぞ」

等と語らっている時だった。


文官のヒイが急いで駆け付けて来た。

「皇叔どの!コウメイどの!ソウソウが江南と同盟を組んだとの情報が入りました!」

「なんだと!」

コウメイは持っていた扇子を落とした。

まさかのソウソウの変わり身であった。まさかソンケンと手を組むなど考えようも無かったのである。

それを聞いた3人は瞬時に荊州にいるカンウを案じた。

ソウソウ軍とソンケン軍の間に挟まれているので、確実に、荊州に同時に攻め入ってくる。

だが、再びシバイが兵を集め、西を伺っているとも聞いているので荊州にばかり兵を集めるわけにも

いかない・・・。


これまでソウソウ:ソンケン:リュウビが5:3:2で別れ、リュウビとソンケンの同盟・親善な付き合いにより

5:5を持って対していたが、リュウビ軍は2を持って8に対するようになってしまったのである。


まさに絶対絶命であった。



その報告があってから1ヶ月後。

荊州では16才になったカンコウが襄陽に向かって歩いていた。

ソウソウ軍がウキンを総大将として荊州の領内に足を踏み入れたのだった。

長沙で、子を身ごもっているシュウレイの役に立つようにとカンウからきつく命じられていたが、ソウソウと

ソンケンの同盟により戦となる、と役人から聞いて戦争を見たいが為に勝手に抜け出してきたのである。

「しかし、ワシもああやって母上から生まれて来たのか・・・。ん。待て。どこから出てくるのだ?

口か?・・・まさか・・・・尻から!?うわー!」

等と一人でトリップしていると、それにも勝る甲高い声が聞こえた。

カンコウはそれに気がつき、声の方へ駆けていくと、二人の人間が倒れている。

「はて、どうしたんじゃろう」

と近づいていくと、一人の者が杖でカンコウの足を払った。が、それを飛びのいて避けると、その者は

カンコウに対し襲ってきたが、カンコウはその杖をもぎ取った。

「何をするのだ!」

「かえせ!私の杖だ!」

その者は女でしかもカンコウよりも年下のようだった。必死に杖を返せと飛び掛ってきたが、女と分かっては

殴る事も出来ず必死で話しかけた。

「おい!落ち着け雷女め!俺が何をしたというのだ!」

それを聞いて女はすぐに落ち着いた。

「全く、何だと言うのだ」

とカンコウは女に杖を返した。もう一人の方を見ると頭から大量の血を流して死んでいた。

「お前がやったのか?」

「うん。この杖を寄越せをしつこく言われて剣を抜かれたので怖くて振り回したのじゃ」

見れば、杖の頭は鉄で覆われていた。

「そうか。そんな悪い事をする奴はきっとソウソウ軍の奴だ。こいつの仲間に見つかったら大変だぞ。逃げよう」

そう言って女の手を引いて走り続けた。


しばらく走った後、木陰に入り二人は倒れこんだ。

「ここら辺まで逃げれば大丈夫だろう。しかしまた、お前はあんな所で何をしていたのだ?」

「荊州のジジの所に行く途中だった」

「そっか。では長沙あたりから来たのか?」

「え。ジョナンの町から来たの」

「えー!ジョナンから荊州なら、とっくに行き過ぎているぞ」

「えー!」

「道が分からんのか」

「うん」

「なら仕方が無い。俺も荊州に行く途中だったのだ。連れて行ってやる」

「本当か」

「あぁ。俺はカンコウというんだ。お前は?」

「リケイ」

「ジジって誰だ?」

「リキュウという人だって死んだ母が言ってた。母の父じゃ」

「リキュウか・・・知らんな。他に特徴は無いのか」

「百姓の大将軍だと言っておった」

「百姓に大将軍なんてあるもんか。他には?」

「知らん・・・」

「・・・まあいい。とりあえず荊州までは連れてってやる」

そう言うと二人は北へ向かって歩き始めた。

やがて小高い丘で二人は足を止めた。

「お、ここで戦が始まるみたいだぞ。お!あれは俺の兄貴じゃ!」

「えー。あんな偉そうな人が兄様なのか」

「うん。親父はもっと偉いぞ!総大将だ!」

「ひえー」

「始まるぞ!しかし、相手は誰だ?字が読めん・・・」


カンウの陣では、カンウがカンペイに聞いた。

「先方はホウトクだと?」

「はい」

「あの棺はなんじゃ?」

「どうやら父上に対する覚悟の表れで、父上に敗れればあの棺に自分の死体を入れるのだそうです」

「これみよがしに嫌味な奴だの。どれ、望み通り首の無い死体を棺に入れてやるかの」

「いえ、父上が行くまでもありません。私がいって散らして参ります」

「そうか、奴は長刀か、柄の返しに気をつけよ」

「私も同じ得物を使っていますので。それ!」

そう言うとカンペイはホウトクの前に進み出た。

実力は拮抗していたが、50合あまりぶつかった所でカンペイは退いていった。


「どうだ!おもしろいだろう!?」

カンコウはリケイを満面の笑みで振り返った。

「つまらん」

「ちぇ。女というのはどこかオカシイのだ。でも今度は面白くなるぞ!きっと親父が出てくる」


カンコウの読み通り今度はカンウが出てきた。

それを見たホウトクは興奮し、右に左に長刀を振り回し駆け出した。

しかし、カンウの敵では無く、敵わぬと見ると大言もどこへやら逃げ出していった。

それを見たカンペイが号令を掛け、ソウソウ軍を追い立てていった。

カンウの軍勢はどこまでも追い続け、やがてウキンの守るハン城まで追い立てた。

カンウ軍は、それを遠目で見れる位置に陣を敷いた。

「此度は、稀に見る大勝でしたね、父上」

「あぁ。だが、ゆっくりとはしてられん。江南からも兵が出てこようからな」

「このハン城を落としたら、すぐに戻りませんと。成都に援軍を求めては如何ですか?」

「いや、兄者も心配して何度も早馬を寄越すが、成都も必死だろうからの。断っておいたわ」

「はぁ」

「そう浮かぬ顔をするな。ワシにはお主もいれば、フシジン・ビホウ・モウタツ・バリョウと

将は揃っている。それに江南に向けた罠もそう簡単には破られまいからの」

「はい」

だが、カンペイはどこか拭い切れない不安があった。が、それが何かは分からなかった。

「さて、カンペイ。ハン城はどうやって攻めたものかのう」

と、そこにイセキが進言した。元リュウヒョウの臣下でその後はリュウキと共に江夏にいた将である。

「ハン城周辺は大変豊かな土地です。その為に開墾を中心に栄えてきました。ですが、過去

大雨の振った時に、水の堰が切れ、城もろとも水に沈みました。今では堰は頑丈に作られましたので

その心配は無いですが、最近のこの天気・・・。この堰をなんとか切れば、再びここら一体は水に沈みましょう。」

「水攻めか。面白い!それで行こう。兵も無駄に出来んしな」

「父上、それは良いのですが、一言・・・」

「ん」

「父上はリキュウ殿をご存知でしょうか」

「ん・・・あぁ、兄者がキュウさんキュウさんと慕っていた百姓の事か」

「はい。今ではこの辺一体で開墾を取り仕切る人物となっており、百姓の大将軍と慕われています。

そのリキュウ殿の毎日の汗の賜物が水に沈むのが忍びなく、一言申し上げました」

「むう・・・。リキュウ殿はいくつになるか」

「我が主よりももっと上。60に手が届くのでないでしょうか」

「であれば、成都の兄者に送ってやって隠居されても良い頃であろう。作戦は変えられん」

「はい。では、私が責任を持って、この地の方々に作戦を伝えて参ります」


カンコウはリケイを連れて城下町を歩いていた。

「一体何なんだ!何で人がいないのだ!」

リケイも、その人のいない町の様子を見て怖がっていた。

「何なのだ・・・犬一匹もいないなんて・・・こんな事があるか」

「カンコウさん、あっちに人がいる」

「ん。おお、聞いてみよう」

その男は一人、畑を耕していた。

「なぁ。この辺にリキュウさんという人はいないか?」

「ん。ワシもリキュウだが・・・」

「じゃ、おじさんが百姓の大将軍か?」

「む。いや、まぁそう呼ばれた事もあるが・・・ゲントクという人が勝手につけたのじゃ」

そういうリキュウの目がこっちを見ていない事に気がついた。

「おじさんは目が見えんのか?」

「いや・・・見えとるよ。お主は大人では無かろう、だが子供でもなかろう」

「じゃ、この子は見えるか?リケイと言うんだ」

「ん。どこの娘さんかな」

「おじじ!」

そう言うとリケイは涙を流してリキュウに飛びついた。

「リケイ・・・はて」

「私のおっかはリセンという」

「なんだと」

リセンはリキュウの第3子だった。だが、当時は年貢が払えず、子を売り妻を売り、最後には自身を売るしかなかった。

そのリキュウを買い取ったのがキョショウであった。

「リセンは・・・リセンはどうした」

「死んだ」

「・・・おばばはどうした」

「死んだ」

「今までどうしていたのだ」

「おっかと一緒にジョナンの親方様の屋敷で働いておった。毎日毎日ムチでぶたれてたんじゃ」

「・・・可愛そうに」

そう言うリキュウもリセンも大粒の涙を流していた。

カンコウは昔、漢中で大泣きをした事があった。母が餓死した時である。

だがそれ以来、決して泣く事はなく、幸せに暢気に生きてきた。カンウの血筋を持ち非常に豪胆だったのだ。

だが、その暢気者をして言葉を失う程に二人の様子は可哀想に思えた。

やがて落ち着いたリキュウが家に勧めた。目が見えていなかろうに、その足取りは速かった。

「しかし、おじさん、どうしてこの町には人がいないのだ?」

「あぁ。実はカンペイ将軍が来て、水攻めを行なう為に、避難してくれと言っていたのだ」

「水攻め!」

「あぁ。だから人はいない」

「おじさんは逃げぬのか?」

「はっはっは。ワシは土に対して生きてきた。それが出来ぬとあらば生きていても仕方あるまい。土と一緒に沈むかな」

それを聞いて厨にいたリケイが飛んで来た。

「いやじゃ!おじじが死ぬなら私も死ぬ!」

「・・・冗談だとも。ワシは百姓しかしてこなかったが、ゲンさんやコウメイさんと一緒にいたから、戦の事も多少は

知っている。水攻めというのは雨が降らねば起こらぬのじゃ」

「しかし最近は天気が悪く、もう降って来るぞ」

「・・・そうかそうか・・・。さて良い匂いがしてきたな。リケイの食事が楽しみじゃ」

カンコウはそのリキュウの心底を見抜いていたが、あえて言う事はしなかった。

夜になり、食事も終わり、リキュウの身の回りの世話を二人がしていると、雨が降ってきてやがて大雨となった。

「じいさん!これでは堰が切られるぞ!早く逃げんと大変だぞ!」

「・・・カンコウさん!このリケイを連れて逃げてくれ!ワシはここで死ぬと決めたのだ!」

「いやじゃいやじゃ!」

リケイはリキュウにしがみつき、離そうとしない。

雨は次第に強さを増してきた。

「おい!いい加減にしろ!おじさん!リケイまで一緒に殺す気か!」

それにリキュウは答えなかったが、やがて口を開いた。

「ワシが間違っていたな。ほれ、この縄でそれぞれ自分を縛るんじゃ!きつくな!カンコウさん!先導してくれ!」

「分かった!」

3人が腰に縄を巻き戸を空けると、低地ではもう膝くらいまでの水が流れていた。

カンコウはリケイの手を引っ張り、決して転ばぬようにと力強くあるいていたが、リケイが叫んだ。

「オジジがいない!!」

「なんだと!・・・そうか。おじさんは闇に慣れているから一人で帰ったのか・・・」

と言ってる内にリケイが転びながら戻りだした。カンコウも慌ててリケイの前に立ち道を戻るとリキュウは

家の外で立っていた。

「おじじ!」

その言葉を聞いたリキュウは涙を流した。

リケイはリキュウに再びしがみついた。リキュウは

「カンコウさん!もう戻ってくるな!リケイを頼むぞ」と言う。

だが、カンコウにはリケイのしがみ付く腕を取り払う事が出来なかった。

いや、カンコウの力ならば簡単にリケイを引き離す事は出来たが、ようやく会えた家族を前にどうして離す事が出来ようか。

カンコウは覚悟を決めた。リキュウとリケイをまとめて持ち上げて逃げようとしたのだった。


程なくして大量の水がリキュウの家を飲み込んで行った。



「第一船隊準備完了!」「第2船隊・・・」

カンウの陣では水攻めの仕上げに取り掛かっていた。

「どれ、ハン城で縮み上がっているウキンの首を持ってこようかの」

ハン城の9割方を水が飲み込み、残るソウソウ軍の兵は数える程だけで殆どが飲み込まれていった。

カンウとカンペイが船に乗り込み、ハン城へと出ると、カンペイが水面から波が立つのを見た。

「父上、何者かがこちらへ向かってきます」

「む、用心せよ」

「・・・父上!コウ(カンコウ)のようでございます!」

「なんじゃああ?」

さすがのカンウも驚いた。長沙にいて義娘の面倒を見ている筈の息子が敵陣にいるのである。

「しかも女子連れのようでございます・・・」

「二の句が告げぬわ・・・」

兵士に引き上げられたが、リケイはぐったりと倒れたままだったが、心得のある兵が

「気を失っているだけのようです。活を入れれば目を覚ますかと」

「いや、そのままにしておけ。目を覚ましたら地獄を見ねばならん。ところでコウ!

貴様は何でここにいるのかを説明しろ。但し、出陣前だ。手短にな」

と言うとカンコウは敬礼をして言った。

「戦が見たくて家出しました!!おじさんは沈んだけど、孫を助けました! はっ!」

「・・・何が何だかさっぱりじゃが、まあよい。これでその子を守ってやれ」

そう言うとカンウは鉄の肘当を外してリケイに被せ、号令を掛けた。

「準備はいいか!これから啄木鳥の戦法で行く!各隊、ワシが飛び移ったら半数ずつ着いて来い!」

そう言って10隻の船が進んだ。


頭だけ出ているハン城でも矢を射て来たが数は少なく、逆にカンウ隊は大量の矢の雨を降らし、下は激流で隠れる所も

少なく、次々と死ぬか流れていった。

「今じゃああ!」

カンウを始め、次々と城に飛び移りカンウは一気にウキンの元へ行き、首を刎ねた。

が、そこに弓を構えた者が撃つと、矢はカンウの肘に刺さった。が、次の瞬間にはカンペイがその首を刎ねていた。

矢を討ったのはホウトクであった。

「父上、大事ありませんか?」

「何、口だけ野郎の矢など効かぬわ。それよりも勝鬨をあげさせよ」

そうしてハン城の降った敵兵を逃がすと、対岸の襄陽側に船で戻った。


「もう起こしてやってもいいだろう」

とカンウに言われ、兵士がリケイに活を入れるとリケイは飛び起きた。と、同時に無骨な将兵を見て

カンコウに縋り付いた。

「リキュウ殿の、孫娘とな?」

「はい・・・私が説いた時は、喜んで土地を空けると言っていましたが、やはり心では城でしたな・・・。ところでコウ。

この子を成都の皇叔の所に連れてってあげなさい。リキュウ殿の孫と言えば喜んで面倒を見るだろう」

「ところで、コウ、シュウレイにはちゃんと言ってきたのか?」

「いえ、置手紙はしてきました」

「今後、シュウレイに迷惑をかけるんじゃないぞ」

「はい!」

「ちなみに、腹はどうなっておった?」

「はぁ。こうなっておりました」

と、カンコウは腹を突き出して手で表現した。

「おおお。これでワシも名実共にジジじゃの!」

とカンウが笑った所でカンコウがカンウの肘に気付いた。

「父上、肘が紫色に腫れております!」

「む・・・」

「毒かもしれません」

そう言って陣中の医者に見せると、

「これは・・・鳥兜の猛毒です」と言い放った。

「棺野郎のやりそうな事だな」

「これを治療するには、私では出来ません・・・。今、新野に名医:カダが来ております。医療も広まったとはいえ

これを治療出切るのは彼しかおりません。放っておけば骨までただれ全身に広がり、命を奪います」

これを聞いたカンコウは急ぎ新野へ向かった。

自分とリケイを守るため、肘当を外した為に、この結果になったのだと自責の念を持っていた。

陣の医者にもらった地図を見ながら家に行くと、幸いに在宅であり、カンウの大事と聞いて、すぐに着てくれた。


カンウは痛みに耐え、軍の士気を下げないようにバリョウと碁を打っていた。

バリョウもバショクと同じく、知性に溢れる者であり、痛みを紛らわすには格好の相手だった。

カダはカンウの肘を見て言った。

「まだ時間も経っていないと見えて、毒も回っていません。治療すれば命は助かります。ですが、

この治療は、・・・体を柱に縄で縛り、肉を切り、骨を削る必要がございます」

と、それを聞いたカンウは、

「なるほど。大変な治療じゃ。だが、ワシも武門の端くれ。縄目は簡便して頂きたい」

「・・・名のある方は皆そう言います。ですが、途中で七転八倒。治療になりません。こればかりは

人間の耐えられる痛みを大きく越えています」

「でしたら、鬼となって耐えましょう。それに、今は碁の途中なのです」

「はぁ・・・」

こう言ってカンウは碁を打ちながら、左腕をカダに投げ出していた。

ヒジ周囲の肉を切り開き、骨を削った。

だが、カンウは顔色一つ変えなかった。むしろその周囲の者が顔を覆うばかりであった。

バリョウもその光景が嫌でも目に入ってしまい、手が止まり、その度にカンウに早く打てと急かされた。

やがて治療も終わり、カダは脱帽した。

「ここまで耐えるとは御見それしました。さすがは天下のカンウ殿です。医者の間でも語り草になるでしょう」

「はっはっは」

「ですが、カンウ殿、これから100日は腕を動かさぬようにお願いします。医者の言葉は天の言葉です」

「はぁ、分かり申した。忝のうござった」

そう言うと、カダは帰り際にカンコウに言った。

「父上には薙刀を持たせぬようにな。しばらくは指揮だけにするように。伝えてくだされ」

「はぁ。でも父上は言う事を聴かないと思うので兄に言っておきます」

「それではな」

そう言ってカダは一人、帰って行った。


そうしてカンウ軍は襄陽に引き上げ、カンコウとリケイは成都に向かって歩いて行った。

だが、リケイは途中で足を止めた。

「ん、どうしたんだ?」

「やっぱり私は荊州にいる」

「なんでだ?」

「おじじが出てくるのを待つ」

「・・・分かった。正直に話そう。あの時、オレはおまえと爺さんを連れて逃げようと思った。だけど、爺さんを抱えようとしたら

体と柱が縄でくっついているのが分かったのだ。だからオレはお前だけを抱えたのだ。そこにあの波だ。もう助からん」

それを聞くとリケイは泣き出した。

「また泣くのか・・・。女というのはほんとに分からん。だけど安心しろ成都には面白い奴が沢山いるし、オレの兄弟のような

チョウホウもいるんだ。それに爺さんと仲の良かったという叔父上もいる。だから安心しろ」

「うん・・・」



その頃江南では、ロシュクの跡を継いだリョモウが総大将となり、頼りない副将を連れて襄陽を目指し、進軍していた。

コメント
この記事へのコメント
ついに劉備三兄弟の運命を大きく揺るがすハンジョウの戦いが来たね。
ここで起きた大事件が引き金で蜀は大きく崩れていくね。
そして地味に登場した呂蒙。
軍師と戦人とはっきり別れていたこの時代で両方共こなせたのは呂蒙と後で出てくると思われる通称:天水の麒麟児くらいじゃないかな。他にもいたらすまそww
この呂蒙君、昔は武だけの人間だったけど、孫権(ちょっとあいまいw)に、「お前の武は確かに凄いけど、人間頭も良くなきゃいかんぞ」と言われて勉強して頭も良くなったという話だね。勉強する前は阿蒙と呼ばれていたとか(阿とは日本でいう~ちゃんという子供を呼ぶ名称、以前の説明であったかな?w)。
そして、恐らくここでちょろっと出てきた副将ってのは陸孫かなw

最後に一言
そう言うとカンペイはホウトウの前に進み出た。<死んだ人間でてきてんぞww
2011/04/25(月) 03:56 | URL | 冷麺 #-[ 編集]
>めん

気付いたらハンジョウじゃなかったんだけど・・・でも書いてて泣けてきた・・・

それから・・・

激しいツッコミしてんじゃねー!!!!

たまにはあるだろこんなもん!それにウって何となくクに見えるだろうが!!

一応・・・治しておくけど・・・

この治すも違うな・・・

ほっとけ!
2011/04/25(月) 18:48 | URL | まる #-[ 編集]
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