そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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南郡4城を制圧し領土を拡大したリュウビ軍は連日祝いの式をあげていた。

だが、そんなめでたい日々も続かなかった。

連日の流浪の日々と大移動の影響を受けリュウビの妻、カンレンが病に倒れた。

阿斗もまだ幼く、姉妹のようであったビケイも死んでしまった為、死ぬわけにはいかない

と気力で生きていたが、生来強い人間では無く、あっけなく息を引き取ってしまった。

2人の妻を失いリュウビの落ち込みも相当なものであったが、それを聞いた同盟国、江南から

使いが来た。同盟といっても、リュウビ軍を敵対視する者も多く、同盟破棄の使者かと諸将は

感じていた。


襄陽に来たのはシュウユの右手であるロシュクという将だった。

他愛も無い挨拶を終え、カンレンの死に対しソンケンからの見舞いの品を受け取ると本題に入った。

「我が江南は先々代の頃から、この荊州(襄陽・江夏の周辺)を欲していました。

だが、リュウヒョウが存命の頃から何度と無く争いましたが、結局は取れず、今は皇叔殿が納めています」

「はぁ」

「また先日の赤壁での合戦により我が方の被害は著しく、シュウユ将軍も手傷を負ってしまいました。

そんな中でシュウユ将軍はせめて襄陽を取りたかったと悪夢に魘されています。先々代・先代から仕える

重臣もそれは同じ気持ちであり、同盟を組んでいるリュウビ軍とは縁を切り、襄陽を取るべきだと

日々勇んでおります。ですが、こちらのコウメイ殿と我らが重臣:ショカツキン殿はご兄弟でもあり

そのよしみを通じて同盟は成り立っております。これはお願いです。襄陽を空けていただけませんかな?」

それにコウメイが答えた。

「確かに、この地は豊かであり軍を北へ進めるのも江南へ向かうのも有利な地です。ですが、

私共にも夢があります。差し上げられる筈もありません。それはロシュク殿も分かっているのでは?」

「はい。決して叶わぬだろうとは思いましたが・・・。ですが、我々がこうして手を組んでいるからこそ

ソウソウは南へ軍を向けないのです。・・・それでも良いのですか?」

「望む所です。今や我が軍は南郡を押さえ兵も10万を優に超えました。天下に名の効いたカンウ・

チョウヒ両将軍も血に飢えて毎日腕を叩いております。こうなれば我が方も全力で戦いましょう」

「・・・」

ロシュクは血の気が退いていた。さらにコウメイは続けた。

「また、我々は荊州を奪ったのではありません。元々、リュウヒョウ殿の遺言ではリュウキ殿が跡を継ぐ

筈でしたので、我々はそれを補佐しているに過ぎません」

ここまで聞いたロシュクはもう退くしかなく、

「今回の事は私一人の戯れでございました」と言うと帰っていった。


だが、付け加えた言葉にコウメイは後悔をした。

確かに凛々しく、中身も詰まったリュウキであるが、体調を崩し寝込んでいるのであった。

もしリュウキが亡くなるような事があれば・・・


ロシュクの報告を聞いたシュウユは笑っていた。

リュウキの体調も既に知る所で、見舞いにも言ったが、明日とも知れぬ病状であったのだ。

「これで荊州に残る事は出来まい。それでも楯突いてくるならば同盟は破棄し、その時こそ荊州を取る!」


そのシュウユの予想は当たり、リュウキは22歳と若くしてこの世を去っていった。

これを聞きつけたシュウユはすぐにロシュクを送りつけた。


「この度はリュウキ殿の件、お悔やみ申し上げます。さて・・・」

この切り替えしにその場にいるリュウビ軍の将は笑うしか無かった。

「リュウキ殿が亡くなった以上、皇叔殿が荊州に留まる理由は無いはずです。皇叔殿と我が殿の関係も

悪化せぬ内に、荊州を空けて下さらんか」

これにもコウメイが答えた。

「仰る事は最もです。ですが、我らの兵10万は荊州無くしては養う事も出来ず、すぐに明け渡す事は出来ません。

実は、その代わりに狙っている所があります」

それを聞いたロシュクは地図を見てすぐに割って入った。

「益州でござろう!}

「その通りです。この益州は山々に囲まれ地の和・人の和に恵まれておりますので、ここを拠点としたいと

考えているのです。ですが、ソウソウ軍も多大な兵を集めていると聞いていますので10万の守りは必須。

攻める兵が無く、それに悩み、答えが出せずにいるのです」

「そうですか・・・では、益州が取れれば荊州は明け渡すと?」

「もちろん、益州さえ手に入れば荊州など不要です」

それを聞いたロシュクは飛んで帰った。


「本気か?コウメイ殿!」

「はい。ですが半分は冗談です。荊州を失っては天下3分は成りません。ここは私に任せて下さい」


シュウユはロシュクからそれを聞き、すぐに作戦を思いついた。

益州を取るのに協力し、兵を出し、益州を落とす。だが、江南から益州は果てしなく遠い為、荊州で一旦休憩をする。

と、言う事にし、江南から出、荊州で休憩をすると見せかけ、城内から門を空け、荊州を奪う。という作戦を取った。

ロシュクは直ちにこれをコウメイに伝えると、コウメイは喜んで受け入れた。

シュウユは、これでコウメイを出し抜いてやった!と心の底から笑うのだった。


だが、コウメイはそれを見抜いていた。会議の場で

「皆さん、道を借りてグを滅ぼす という言葉を聞いた事があるでしょうか?」

知っている者も多かった。

「今回のロシュク殿の・・・いや、シュウユ殿の作戦はそれに当たります。いや、

益州までいかずに荊州で終焉。つまり片道で済まそうとしています。横着この上ありません。」

そのコウメイの言い方がおかしく全将が大笑いした。

「そこで、江南の軍がやってきたら、チョウヒ殿に追い返してもらいます」

「任せとけ!」

「ですが、打って出る必要はありません」

「なんだあ?」

「また、チョウウン殿は襄陽の左右に5千の兵を持って伏兵を・・・」

「承知しました」

「おいおい、水殿、ワシャ何をするんだ」

「天下のチョウヒ殿の大声だけで、策が破れた事を知り、逃げ帰っていくでしょう。

江南の兵力を削ぐ訳にもいきませんので・・・」

「つまらんのう・・・」


後日、怪我を押してシュウユが総大将となり益州討伐の大群が江南を出発した。

やがて襄陽に着いたが、門は硬く閉ざされていた。

「む、門が閉じているぞ。日を間違えたわけではあるまい?」

等とシュウユとロシュクが話していると、副将のカンネイが前に出た。

「江南の軍が到着致した!ご開門を願いたい!」

だが、門が開く気配は無かった。

「聞いているか!皇叔殿!約束通り兵糧の強力を願いたいのだ!門を開けてくれ!」


その時、城壁の上にチョウヒが出てきた。

「やい!江南の馬鹿共!良く聞け!!道を借りてグを滅ぼす!浅知恵は既にバレているのだ!

さっさと帰ってソウソウの屁でも嗅げ!」

そう言って隣にある大鐘を蛇矛で打ち鳴らした。

そのとんでもない大音声に江南の軍は一歩下がった。

シュウユはその声で傷口が裂けんばかりだったが、

「何のことだ!さっさと門を開けろ!」

と叫び返したが、すぐにチョウヒの大声にかき消された。

「しつこいぞ!クズ共め!益州なんぞワシ一人でも取ってやるわ!さっさと帰らぬと

全員血祭りにあげるぞ!!」

もう一度、蛇矛で大鐘をならすと、江南軍の左右から弓隊が姿を現した。


それを見たシュウユは「ああー」と叫ぶと傷口から大量の血が噴出した。

ロシュクが怒り、軍を進めようとしたがカンネイはそれを止めた。

「今はシュウユ将軍が先だ!退こう!」

そう言って江南の軍は帰っていった。


チョウヒはさらにでかい声で笑っていた。


シュウユは陣に戻ると治療を受けたが、血は止まらず、

「天よ、何故この生涯にコウメイを生まれ合わせたのだ!」と叫ぶと息絶えた。


江南で唯一の知力と胆力を持ち合わせた将軍が死に、これによる打撃は大きかった。

だが、これにより江南との関係は悪化する事は明らかだったので、コウメイは南郡の一部を

割譲する事で、再び関係を修復させた。

これを受けても江南の諸将は怒りが収まらなかったが、このままでは荊州に勝てぬと知っているのは

ソンケン自身であった為、諸将を沈め、時を待った。この沈黙の時は長かった。

ソンケンは桁違いの将が大勢居るリュウビを羨ましく想った。


その江南の様子を悟ったコウメイは益州への進軍を検討していたが、それは予想外な事に

逆に益州のリュウショウから援軍の要請が来ていた。

漢中のチョウロが西涼のバチョウと手を組み、益州を攻めた為、同じリュウ性の同族のよしみを持って

リュウビを頼ってきたのだった。

コウメイが「これは好機です」とリュウビに言ったが、義に拘るリュウビは良い返事をしなかった。

益州を取らねば、リュウビ軍に未来は無い。

だが取る為にはリュウショウを倒す必要が有る。

リュウショウには何の恨みも無いし、むしろ頼ってこられている・・・。

この情と覇の間でリュウビは答えを出す事が出来なかった。


コウメイもこれは予想出来た事であり、この時、コウメイの信頼する軍師を呼び出した。

コウメイ自身も情の人間であったのだ。

呼び出したのはホウトウであった。コウメイはこれで友人を世に出し、義に拘るをリュウビを説得させようと

考えたのだった。


ホウトウはリュウビに言った。

「皇叔殿は尾生の信という言葉を知ってるかな?」

「はい、ロショク先生から教わりました」

「これをどう考えなさるか?」

「まさに私の事を言われてるように思います。決断が出来ません」

「左様、だが私に言わせれば、愚の骨頂であります」

「・・・」

「義には大小があります。小義に拘りなさるな。小義に捕らわれ大義を失っては、それこそ愚の骨頂でありましょう。

これを皇叔殿が取らずにソウソウが取ったらどうなりますか?ワシも兎だったらソウソウよりは皇叔殿に捕まりたい」

「はい・・・ですが・・・」

「やれやれ。コウメイが手を焼くはずだ」

とコウメイもこれを聞いて慌てたが、自分よりもハッキリと物事を言えるホウトウを呼んで安心した。


「まぁよい。まずは益州に行って自身の目で決めなされ。自分で納めるべきか、リュウショウに任せるべきか」

「はい、その通りに致します」

こうしてコウメイはカンウと共に荊州に残り、リュウビ、ホウトウ、チョウヒ、チョウウン、ギエンが益州に発った。


やがて益州に着くと、リュウショウが自らリュウビを迎えた。

すぐに地図を広げて、戦況を説明したのは益州の将、チョウヨクだった。

「チョウロ・バチョウ連合軍は漢中を出て破竹の勢いで南下し、フ城まで落とされました。

今は剣閣でレイホウ・ゴハン将軍が3万の兵で守りを固めています。皇叔殿には剣閣へ行ってもらいたい」

「なんだと!オレ達は援軍だぞ!それを最前線に行かせるというのか!」

とチョウヒは怒り出した。そこにチョウヨク将軍が返した。

「出来ればそれはしたくないのだが、フ城防衛の際に我が軍の大半はやられてしまい、残るのは剣閣の3万と

この成都の3万だけなのだ・・・。我らが行けば成都はガラ空きになってしまうのだ。それとも・・・

お主らがこの成都を守るとでもいうのか?それは乗っ取り以外の何者でもなかろう」

「この!」

と怒るチョウヒを制し、リュウビはその進軍を認め、北へ向かった。

だが、リュウビ軍を見送った後の成都の諸将は口々にリュウショウに言った。

「殿、見ましたか!あのリュウビ軍を!まさに成都を乗っ取ろうとしていますよ!」

「あれは領内に虎を招いたようなものだ!」

「今すぐ、追い返すべきだ!」

と言ったが、リュウショウは耳を塞いだ。


北上中にホウトウがぼやいた。

「なんと家臣共の五月蝿い事か・・・」

「え、一番五月蝿いのはヨクトクで、チョウヨク将軍を始めそんなに騒いではいなかったではないですか」

リュウビは不思議に思い答えた。

「あ、いや。家臣の目の叫びじゃ。成都の乗っ取りに恐怖する者。皇叔殿に縋る者」

「なんと、そうでしたか・・・注意が足りませんでした・・・」

と凹んでいたリュウビだが、さらに聞いた

「ホウトウ殿は、その割合をどう見ましたか?」

「ん。乗っ取られるという目が7割。縋る目が3割といった所かのう」

「そんな・・・」

「言ったであろう。小義に拘りなさるなと。あやつらは援軍等とは思っていないぞ」

「・・・」

だが、リュウビは意識を変える事は出来なかった。


剣閣では激しい戦いが行われていた。

レイホウ・ゴハン将軍も必死で耐えていた。だが援軍のリュウビ軍を見ると気色ばんだ。

「おお、皇叔殿、来てくれたか」

「はい、戦況は?」

「押されておる。敵大将のバチョウの弟、バタイが暴れておるのだ。数は2万といったところかな」

やがてホウトウが高台に登り戦況を確かめていたが、降りてきた。

「これは楽勝に押し返せるわい。チョウヒ殿、チョウウン殿、5千ずつ率いて左右から同時に北上しなされ

真ん中からギエン殿に同じく5千を持って押しまくれば退いていくでしょう」

「え」

「敵の兵糧は尽き掛けておりハラペコじゃ。やはりこの地は守るに堅いのう」

と、リュウビの方を笑顔で振り返った。が、リュウビは目を逸らした。

「あやつもバチョウの弟だといきまいているが、器は小さい。死力を尽くしての戦いなどしないであろう。

簡単な事だ。窮地に追い込まれた。と思い込ませるだけで良い」

バタイは、3方から攻め上がったリュウビ軍を見ただけで大群に囲まれたと思い逃げ帰っていった。

兵糧も少なかった事から、その決断も早かった。

「さ、それ!今の内に押しておこう。こっちの冬は積もるぞ皇叔殿!」

「え・・・はい」

そう言うと、全軍をまとめ、北上し簡単にフ城を取り返したのだった。

ホウトウの言った通り、雪が降り始め、降ったかと思えば山のように積もり出した。

リュウビはホウトウに賛辞を述べたが、気に入らぬ様子だった。

「そんな賛辞より、益州を取ってもらった方が嬉しいわい」

リュウビは何も言えなかった。

後方の剣閣にどうすればよいかと早馬で尋ねれば、兵糧を持っていくから、春までそこにいろ。

との返事だった。

「なめてやがる!兄者!益州のヤツらはオレたちを何だと思ってるんだ!」

「よせ、チョウヒ・・・益州候も先日の大敗で参っているのだ・・・」

「・・・あーあーあー!しかしよく降るのう!チョウウン!ギエン!飲むぞ!」


後日、成都から届いた兵糧を見てリュウビはついに怒った。

ギエンが届いた兵糧を受け取り、兵に配ろうとして袋を開けると腐っていたのだった。

たまたま、だろうと確認をしたが、全て腐った米だったのだ。

これを聞いたリュウビは、ホウトウに

「この辺に兵糧庫は無いですかな」と聞けば既にホウトウは調べていた。

綿竹という所に溜め込んであるらしく雪が積もりきる前にリュウビは進軍した。

「命がけで戦った我らに、しかも最前線の我らにこの仕打ち。リュウショウめ許さん」

チョウヒは初めて見るリュウビの怒りを見て驚いた。またリュウビから攻め取るという言葉を聞いたのも

初めてだった。

道中、ホウトウが

「皇叔殿、攻めるのは良いが、これでは連合軍と成都と、挟み撃ちになりますぞ」

「・・・」

「このまま綿竹で補給し、成都を取らねば、我らは板ばさみにあって全滅です」

「・・・」

「宜しいですな?」

「・・・」

返事は無かったが、それは事実なので馬を返し、それをチョウヒに伝えた。

チョウヒは全軍に号令し成都へ攻める準備をさせた。

リュウビも聞いていたが、止める事はしなかった。


綿竹もまさかのリュウビ軍の襲撃に成す術なく打ち破られた。

そこでレイホウ・ゴハンの両将軍は剣閣から早馬を届けた。

内容は、リュウショウには付き合いきれぬ為、リュウビに付くとの事だった。

これを受けて、リュウビ軍は成都の北、落鳳と呼ばれる林から・レイホウ軍は剣閣から成都を同時攻撃

する事に決めた。

綿竹から出陣する際、ホウトウの馬が突然に暴れ出し、ホウトウは地に落ちた。

「大丈夫ですかホウトウどの!」

「いやいや、我々は机上での戦が殆どでしたので実践になれていないのです」

「出陣の前に馬が暴れるとは不吉です・・・。私の馬を使って下さい。落ち着いた良い馬です」

「おお・・・情けない所をみられましたが、お陰で宝物を手に入れました」

そう言ってテキロをホウトウに渡すと、改めて出陣となった。


が、林の中を駆けて行く中で突如、矢が雨のように飛んできた。

リュウビの反乱を予期していたチョウヨクが伏兵を用意していたのだった。

「兄者!兄者!」

とチョウヒが前に立ち蛇矛を振り回し矢を防いでいたが、矢が止むと四方から大勢の兵に囲まれた。

「もはやこれまでか!皆、落ち延びよ!!」

そう言って、リュウビはホウトウの馬を退き逃げていった。

だが、ホウトウの馬を御す速さは遅く、簡単に追いつかれてしまった。

と、後方ばかり見ていたリュウビが顔を前に向けると大木があり咄嗟に馬毎避けたがホウトウと左右に

別れてしまった。


「いたぞー!あの白い馬がリュウビだー!逃がすなー!!!」

と多くの兵がホウトウ目掛けて駆け抜けて行った。

(しまった・・・馬を代えたばかりに・・・)

リュウビが追いかけようとすると、さらに敵兵がやってきたのでホウトウとは逆の方へ逃げていった。

(みんな、無事であってくれ・・・)


夜になり、名も知らぬ光をまとった鳥が空へ羽ばたいていった。


リュウビは林を抜けたが、どことも分からずに彷徨っていた。

馬にも水をやれていない為、水を探していたがやがて一軒の民家を見つけた。

そこに敵がいるかもしれないが、馬が走れなければいずれ死ぬ・・・。そう覚悟して

恐る恐る民家の戸を叩いた。

中には30の半ばを過ぎたあたりの女性が一人でおり、本を読んでいた。

「すまぬが、馬に水をやりたいのだが、宜しいかな」

「あぁ。はいはい。どうぞ」

そういうと外へ出て桶に水を汲んでくれた。

「忝い」

馬に水を飲ませていると中から女性に招かれた。

「今日は冷えますからね」

「はぁ。助かります」

「もしかして荊州の将軍さんかしら」

「は、いえ、、はい。そうです」

「正直な人。兄が、荊州から皇叔殿が来てくれる事になったと大喜びしていたのですよ」

「そうですか」

「皇叔様ってどんな人なのですか?」

「はぁ・・・ずっと惚けた男です。益州に入ってからも成都の将に疎まれています」

「あら。そうでしょうか。皇叔様が来て兄をはじめ、大いに喜んでいると聞きましたが」

「そうですか・・・」

「ここの太守のリュウショウ様も決して悪い人では無いのだけど、ぱっとしないので益州の人々は

みんな荊州から皇叔様に攻め取って頂くのを待っているのですよ」

「・・・兄上とは?」

「あぁ、ゴイです。確か今は成都に勤めているはずですがお会いになってませんか?」

「はい・・・恐らく」

「私は妹のゴケイです。ここでこうして本を読んでいるだけの女ですけどね。おかしいでしょ。女が・・・」

「いえ、私も昔、女性を相手に学問を説いた事があります。男女7歳にして・・・とありますので

冬でも戸を開け放って、互いに学びました」

「なんと立派な・・・」

「いえいえ。ですが学ぶ事に男女も年齢も関係無い事と思います。かのロショク先生から王道を教わり

その中にも似たような言葉がありました」

「・・・あなたは皇叔様では?」

「は・・・いえ・・・決して違います」

「嘘が下手な人なのですね」

「あ・・・いや・・・恐れ入ります。リュウゲントクと申します」

「なるほど、益州の人々の気持ちも分かります。話すだけでこれだけ落ち着いた気分になれるなんて」

「はぁ」

「こんな所へどうされたのですか?まさか迷子に?」

と、笑われたが、これまでの経緯を話した。

「そうですか・・・。ですが、レイホウ様と同じように皇叔様に付きたいと願う将は多い事だと思います。

もし落ち延びるのであれば、このまま東へ向かい、巴西という城へ行くと良いでしょう。そこのゲンガン様は

益州候を嫌っており、それを気にしたリュウショウ様が遠く、東へと追いやりました。きっと力になって

くれるでしょう」

「はぁ・・・ですが同族であるリュウショウどのを・・・」

「それは小義ではないですか?」

「あ・・・いや・・・失礼する」

と言って立ち上がり表に出た。

「私はこうして本を読み、女ですが学問の先生をしています。良かったらその様子を見に来て下さいね。

また、今度は王道についてお話を聞かせて下さい」

それは益州奪取を望んでいるような口ぶりであり、リュウビは困惑したが、

「ではこれにて。ご厚志、忝い」

と言うと、東に向かって馬を駆けた。


やがてゴケイの言っていた巴西城に着いた時、驚くことに「劉」の旗が立っていた。

と、門の前ではチョウウンとチョウヒが待っていた。

「おお、兄者!」

「無事であったか、何よりだ。ホウトウ殿は来ていないか?」

「いや、まだ来ておらん。ギエンなら中に居るぞ」

「そうか、それにしてもあの旗は?」

「あぁ、ワシがあの林から落ちていくと、そこの林道で偶然ゲンガンというジジイに会ってな。

それでココを案内されたのだ。あのジジイも剣閣のヤツらと同じようにリュウショウの糞ったれに嫌気がさしていて

この城を明け渡してくれたのだ」

「そうであったか・・・」

「まぁ時期にホウトウ軍師もここに来るだろう。まずは兄者、中に入って兵達に無事な所を見せてやってくれ」

「あぁ。わかった」

「私はホウトウ殿を探してまいります」

とチョウウンは単騎で西へ向かっていった。

リュウビが巴西に入り、ゲンガンの功を労い、ゲンガンも含めて今後に付いて話し合った。

成都の兵は剣閣と合わせて5万前後、リュウビ軍は2万弱。圧倒的に兵数は不利であった。

どうするかを話し合っていたが、いい策は見つからず、時間だけが過ぎていった。

日が変わった頃、チョウウンが戻ってきた。

「ホウトウ殿は綿竹の林の中で矢を全身に浴びて馬もろとも行き途絶えておりました・・・」

「あぁぁ!ホウトウどの!」

そう、リュウビが嘆いている所へ、荊州からコウメイが兵を連れてやってきた。

「コウメイ殿!なぜここへ」

「はい、星を見ておりましたら、西の空に敗軍の将ありと出ていましたので、火急の事と思い

はせ参じました。なお、以前、皇叔殿が私の屋敷を訪れたおり、各地を旅して廻ったのですが

益州探索の時にお世話になったのが、このゲンガン殿であり、それを頼ってここに来ました」

「そうであったか・・・。実はホウトウ軍師が・・・」

「!」

「私はもう益州候を許せない。コウメイ殿、力を貸してくれ」

コウメイは天を仰いでいたが、リュウビの心変わりを見て、友人の死も無駄では無かったと

自身に言い聞かせた。

コウメイが連れて来た兵は3万で数の上では拮抗した。

そこでゲンガンが口を開いた。

「実はなリョウどの(コウメイの名)益州には主を見限っている将がワシ以外にも大勢いるのだ。

これを説き伏せてまいるので、しばらく時間をくれぬか」

「そうでしたか。それは頼もしい」

「半日もあれば全員に伝えられよう。それまで長旅の疲れを癒しておいてくれ」

そう言うとゲンガンは西へ向かっていった。

剣閣は忠義に固まったチョウヨクが居たので素通りし、成都に入った。

成都では謀反を行ったレイホウ・ゴハンが拷問を受けていた。

だが、そのムチを打つ役を追っているのがゴイであり、ゲンガンはそこでゴイを説き伏せ、

レイホウ・ゴハンと共に手兵3千ずつを連れて逃げさせた。

また文官のヒイ・トウシにも話かけ、武具を隠させた。


こうして何食わぬ顔でゲンガンは巴西に戻ってきた。

そこで内容を伝え、チョウウンは1万の兵を持って剣閣に登りチョウヨクを抑えさせ

チョウヒを先方に4万の兵で巴西を捨て成都に攻め上った。


やがてリュウビ軍の侵攻を聞いたリュウショウが慌て出した。

9千もの兵が突如消えており、武具も倉庫に無いという。

リュウショウは

「こ、皇叔は徳のあるお方だと聞くが・・・私は降ったらどうなるのか?」

と聞けば、側近は、「まず打ち首でしょう。最後まで諦めずに戦うのです!」と励ました。

が、混乱した益州軍は士気も無く、チョウヒ率いる軍勢が成都の領内に入ったとの知らせを

聞いた。

これにさらに恐れを成したリュウショウを見ていて、さすがにヒイも気の毒になった。

そこでリュウショウに耳打ちで、リュウショウの命を助けてもらい成都を明け渡すと交渉をする

と言えば、リュウショウは震えながら首を何度も縦に振った。


やがてチョウヒが城門を突破すると、そこにはヒイが白旗を揚げており、リュウビの陣に向かっていった。

リュウビは話を聞いて、リュウショウとその一族全員の無事を保障するが、南郡の方で隠居してもらう。

また、領民は慰撫する。この2点の条件を付けてヒイを返した。

リュウショウはそれを聞いて大喜びし、走ってリュウビの前に跪いた。

剣閣で戦っていたチョウヨクも、その知らせをチョウウンから聞くと槍を投げリュウビに降った。


こうしてホウトウの死という悲報はあったが、リュウビは天下3分の基盤を作った。

これを知った益州の人々は外にお香を炊いて、これを祝った。だが、

あくまでソウソウ・ソンケンに対して土地の大きさで拮抗しただけであって兵数は全く及ばない状態であり

まだ、漢中のチョウロ・西涼のバチョウ連合軍の脅威は去っていなかった。


これに対するべく、チョウヒ・コウメイが3万の兵を持って続けざまに北上しようとすると、

何故かリュウビも着いて行く事になった。リュウビ自身の願いであった。

成都の守りをチョウウンに任せ、元益州の諸将を中心に富国強兵に勤めさせた。


江南は相変わらず沈黙を守っていた。

だが、これを聞いたソウソウは愕然とし、義に拘る為に軽視していたリュウビの飛翔を憎んだ。

だが、同時に盟友としては嬉しくもあり、複雑な心境であった。

益州を手にしたリュウビを恐れたソウソウはこれにより西にも目を向けるようになる。

この頃にはシバイという知臣も加わり、いよいよソウソウ軍も動き出そうとしていた。

コメント
この記事へのコメント
鳳雛、落鳳破に散るの場面だね。
三国志は有能な人材程早世するのが物語りを面白くしてるね。
蜀のホウトウ、呉の孫策、魏の典葦や郭嘉など、早世した英傑がもし死んでなかったら歴史も大分変わってたろうねw

ホウトウは、孔明が有名過ぎて世間的には孔明には及ばないみたいなイメージだけど、実は孔明とは得意とする分野が違った。
今でいう外交に当たる部分を孔明が担当して、内政をホウトウが担当していた為、ホウトウは三国志の中でも超一流の能力を持ちながら表舞台にはあまり出てこなかったんだね。
勿論、水鏡先生の教えを受けてたから恐らく外交をやっても孔明と同じくらいの能力は発揮できたんだろうね。
そういう意味では、俺的には孔明よりも優れていた、と勝手に解釈しています。実際はそんな記述はないのであしからずw
余談だけど、孔明が病で倒れたのはホウトウのせいだった、という意見もある。
ホウトウが倒れたため、外交内政を孔明が一人でやらなきゃいけなくなったため、激務で休む暇もなくなった、という見解もあるらしい。
2011/04/23(土) 01:39 | URL | 冷麺 #-[ 編集]
>めん

確かにこれじゃ、ガリョウ・ホウスウと並べて言われてたのに可哀想だよね。。。

あと、コウメイは倒れたときの事情は、俺の知ってるのだとまた違うんだ・・・

それは楽しみに!
2011/04/23(土) 06:36 | URL | まる #-[ 編集]
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