そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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カンウと2人の奥方を連れ、ソウソウ軍に囲まれながら都へと帰っていく大軍団。

途中で一晩の休憩となったが、手違いがあった。

カンウと奥方2人の寝室が同じ部屋になってしまっていた。


テイイクは笑いながら話した。

「実はこれ、手違いではございません。カンウは朴念仁と聞いておりますが、同室にあって

女の色に迷わぬ者はおりますまい」

と、ソウソウに話した。だが、翌日になってテイイクは驚きながら語り出した。

「あのカンウ。一筋縄では参りません。状況を知るや、奥方2人を部屋に居れ、本人は松明を持って

朝まで戸の前で立ち尽くしておりました・・・」

ソウソウは笑った。

「そうであろう。それでこそカンウだ。だからこそワシの右手に欲しいのだ。これはリュウビとの勝負だ。

どうあってもカンウを心から手に入れてみせる」

そう言うソウソウは闘志に燃えていた。


都に着くと、以前リュウビに与えていた屋敷をカンウと奥方に与えた。仕切りを付けてもらっており、

奥に2人を住まわせた。

ソウソウは金銀煌く食器や杯をカンウに贈ったが、それは全て奥の2人にさらに贈られた。

また、カンウ宛に美女や侍女を30人程贈れば、それも全て奥の2人の使用人として流された。

ソウソウは唸っていた。

「どこまでも朴念仁じゃ。何をすれば喜ぶか・・・」


翌日、ソウソウはカンウを呼び出した。

「お主のその格好、よく見ればボロボロだのう。よし、ワシが見立ててやる。付いて参れ」

そう言うとカンウと二人で仕立て屋に行き、ソウソウは恋人にでも着物を贈るかのように、真剣に

カンウに見合った服を仕立てさせた。

出来上がったのは、深緑の生地に金銀の竜がうねり合い天に昇る模様の服で、カンウはこれを喜んだ。

「明日、帝よりお主に官位が授けられる。それを着ていくが良い」と言うと、カンウは、

「ありがとうございます。生涯、大事に致します」と答えた。


翌日、カンウは帝に呼ばれ参内した。

帝はカンウの姿を見て、これが皇叔の弟かと頼もしさを覚えた。だが、リュウビの名前も出せず

カンウのヒゲを見て美髯公とあだ名を付け、官位は扁将軍とした。

扁将軍はリュウビの左将軍とほぼ同列に当たる。ソウソウはこれでカンウとリュウビの主従の関係を

崩そうと画策していたのだった。

式が終わり、ソウソウは疑問に思いカンウを呼んだ。

「お主、それは昨日のワシが贈った服であろう?」

「いかにも」

「その割りには着膨れして見えるのだが・・・」

と、それを聞くと内側に元のボロ服をまとっていた。ソウソウは

「何故、こんな暑い日にそんなことするのか」と聞けば

「これは兄者が徐州を立つ際にワシの前で脱ぎ着させてくれた、いわば兄者の形見じゃ。なので脱ぐわけに

いかず、かといって丞相殿の恩義も捨てられず、あえなく重ね着致しただけの事」

「しかし、ゲントクが死んでいたらどうする!」

「もとより、地下へご一緒する」

「・・・しかし、官位では貴公とゲントクは同列なのだぞ。そうなっては主従の関係も・・・」

「いや、我らは主従の関係では無い。桃園で誓いを立ててはや十数年。茶碗一つの飯を皆で啜り

雨風に一緒に晒されてきた。主従等と、そんなに軽いものではない」

ソウソウは腹立たしさを覚えたが、次に与えたものはカンウも飛び跳ねんばかりに喜んだ。


ソウソウがカンウの屋敷に馬を引いてきた。それをカンウが見るや

「おお、赤ト馬ではないか!」と目をまん丸にした。

「故あって、ワシの元にあったが、ワシの配下では誰一人として乗りこなせなかったのだ。

お主ならきっと乗りこなせるであろう」

「それは・・・弟のチョウヒも勝手に乗ろうとしたが一歩も動かなかったと聞いております故、

分かりませぬが、しばしお預け下され」

と言うと、カンウは赤ト馬の鼻を撫でた。

以降、カンウは毎日赤ト馬の体を洗い鼻を撫でたが乗ろうとはしなかった。

リョフが死んでから、その輝きを失い、走る事もしなくなっていたが、10日程経つと

赤ト馬の方からカンウへ鼻を擦り付けて来るようになった。

「そうか、ようやくワシをリョフ殿の代わりと思ってくれたか」

そう言うとカンウは赤ト馬に跨った。その光景は美髯公という名に相応しく見ていたソウソウも惚れ惚れ

してしまった。

すると、カンウはムチを打つと城内を高速で駆け回った。やがて笑顔でソウソウの元へ来ると

「おお、とうとう乗りこなしたか、さすがはカンウだ。だが、分からぬ。お主は金やら女やら官位や服まで

授けたのにそこまで喜ぶことは無かった。それが馬一頭でこのはしゃぎ様は・・」

と言えばカンウが答えた。

「これは丞相らしからぬ事を言う。槍一本・馬一頭こそ武門の誉れではないか。またこの足の速さよ・・・。

これなら兄者の行方が分かれば一日で、駆けつけられよう」

それを聞いたソウソウは絶句した。同時にリュウビとの勝負は完敗に終わったと自覚した。

去ったソウソウはテイイクを呼ぶと、

「もうカンウは放っておけ、リュウビの所在が分かれば直ぐに出て行くはずだ。後を追いかけ、まとめて

始末しろ」と命じた。


カンウも毎日、リュウビを探し続けていた。その手足となったのはキョウテイであった。

都に連れてこられてからすぐ、チョウヒとの子を産み、それでも子をカンレンに預け駆け回った。

キョウテイは元々、洛陽・長安と都に住んでおり都の事情は知っていたし、服装を汚し都内をくまなく歩き

周り、リュウビの容姿を尋ねて廻っていた。

だが、リュウビが都に近寄ろうハズも無く、毎日が徒労に終わっていたが、変な話を聞いた。

「俺はここから南の古城からきたのだが、そこで山賊に襲われてな。命もこれまでと観念したが、そこへ熊のような

男に救われた。本人は山賊の将軍だ、等と言っていたが、山賊に将軍なんぞがあるかぃのう」

「どんな将軍なんだ?」

「あぁ、蛇矛という武器を振り回す大男だ。中々見れる武器では無いので覚えている。ヒゲだらけで声の大きな熊男だ」

それを聞いたキョウテイはボルトよりも早く走り、屋敷へ帰りカンウに告げた。

「ウチの亭主の居場所が分かりました」

「おお、ヨクトクは生きていたか・・・。して、どこかな」

「古城のあたりで山賊の将軍として生活しているようです」

「はっはっは。ヨクトクが山賊か!しかも将軍とな!」と喜んでいたが

「だが、兄者は一緒ではあるまい。一緒であれば山賊などさせまいからな」

「はい。なんだか私まで恥ずかしいです」

「そう言うな、生きていればこそだ。ヨクトクの元へ行きたいであろう」

「はい・・・いえ」

カンレンの様子がやはり心配であり、キョウテイは

「リュウビ様の居場所は分かるまでは、カンレン様の側を離れません」と言い切った。

「よく言ってくれた。無事であればいいのだが・・・」


チョウヒは小沛から落ちていき山の中に隠れた。

しばらくすると、山賊達に囲まれていたが、逆にぶちのめし山賊の頭目となった。

古城に隠れ家を用意し、手下にリュウビの捜索をさせ、普段は付近の太守等の戦争の用心棒となった。

チョウヒはカヒでの一件以来、急激に大人へと成長しており、そんなチョウヒへの信頼は厚かった。

勇猛果敢であり、労わりの心を決して忘れない、まさに将軍となっていた。さらに天下無双である。

用心棒の仕事から少しずつ金・兵糧を溜め込み、リュウビを見つけた際の旗揚げに充分な量を蓄えていた。

また兵士も、そんなチョウヒを慕ってあつまり、打ち倒した山賊団を引き入れる等、数は1万を超えていた。

そんな折に、都からカンウの使いがやってきた。

「故無く、奥方二人と共にソウソウへ降る事となった。二人の無事を確保すべく、ソウソウに恩を

返さねばならない。しばらく離れる事になるが、また酒を酌み交わそう」とあったが、

チョウヒは怒鳴り出した。

「ソウソウに仕えるだと!おい、使いよ!カンウは都でどんな暮らしをしているのか!」

と聞けば、声で2m程すっ飛んだ使いは見たままを答えた。

「はい、丞相様より金銀を送られ美女を贈られ官位を授かり赤ト馬を乗り回しております」

「なんだとう!!!」

そう言うと使いはさらに3m程すっ飛んだ。チョウヒはそれに加え

「貴様、都に帰ってあのヒゲ野郎に伝えろ!何がソウソウの恩だ!ふざけるな!兄弟の縁はもう切った!

次に貴様の顔を見た時は、自慢のヒゲ毎、首を胴体と永遠に離してやるとな!!!!」

それを聞いた使いは一目散に逃げたが、こんなケンカに巻き込まれるのも嫌なので都には戻らなかった。


チョウウンに支えられたビケイはしばらくして目を覚ました。

チョウウンにより洞窟の奥に連れられていたが、チョウウンは洞窟の入り口で立ち尽くしていた。

ビケイに気が付くと挨拶をし、チョウウンが徐州のその後を話すとビケイはうな垂れた。

リュウビの行方が分からぬ今、カンウも奥方と共にソウソウに連れられ、チョウヒの所在も分からなかった。

だが、リュウビは生きていると信じるしか道は無く、かつてリュウビが百姓の話をしていたのを思い出した。

そして、それをチョウウンに伝えるとリュウビに会う目的は一緒だし、護衛をするという名目で一緒に行動した。

目指すはジョナンだった。キョショウとリキュウのいる所である。徐州から落ちるとすれば、そこしか考え

られなかった。

二人の馬を駆ける早さは尋常では無く、すぐにキョショウの屋敷に着いた。

キョショウもリキュウも健在であったが、リュウビの姿は無かった。

キョショウも必ずここへゲントクが来るであろう事を言っていたし、リキュウもリュウビの話を聞きたくて

ビケイに夢中であった。


だが、チョウウンは・・・。

ビケイの胸に触れ、馬から落ちるビケイを支え、その柔らかい感触が頭から離れず、またずっとビケイと共に

居る事でビケイへの想いが募ってしまっていた。

ビケイもそれに気付いていた。だが、指一本すら触れようとせず、距離も空けて色々と尽くしてくれるこの男に

多少の好意は抱いていた。が、リュウビとの関係を黙っているわけにもいかず、それを伝えると、

以降は「姉上」として呼ぶようになり、より一層の距離を置くようになった。


キョショウの屋敷にいても、チョウウンはそこにいる事の辛さから屋敷を出て行ったが、3日と開けずに

リュウビが来ていないかと尋ねてきた。雨が降った日にもチョウウンは外から応答するだけで、軒下にも

近づこうとしなかった。ビケイは姉か妹が居ればすぐにでも嫁がせたいと思った。


キョショウは熱を出し、ビケイはそれを看病していたが、以降、すっかりビケイを気に入りビケイやビケイや、と

子供の様にはしゃいでいた。

ある日、リキュウが外で畑に向っているとチョウウンが尋ねてきた。

リキュウが手を休め、屋敷に入ると「ビケイさん、あまったれ爺さんの子守は終わったかね?」

と言った。

「リキュウさんにいたってはキョショウ先生も形無しですね」と笑った。

「チョウさんが来ているだよ」

そう言うとビケイは表へ廻った。

「先生は・・・」

「いえ、まだ来ていません。ですが、キョショウ先生は星を見ていて、そろそろ来ると言っています」

「そうですか。それはよかった」

「たまには上がってお茶でも飲んで行かれませんか?」

「いや、結構でござる。それから、私は山賊になりました」

「ええ!なんでまた」

「先生を探して歩いておりましたらリュウヘキという山賊の頭に会いましてな、ですがソウソウに恨みがあるといい

すっかり意気投合してしまいました。これから私は山賊の連中を叩きなおし、ゲントク先生が立った時の手土産に

するつもりです」と生き生きと語った。

ビケイはそんなチョウウンを嬉しく思ったが、やはりチョウウンは近づく事もなく去っていった。


ある日、ビケイはキョショウの薬を買いに町に下りたが、その際、山賊に囲まれてしまった。

山賊は10人。持っているクナイは5本であり、クナイを全部当てて武器を奪い、残る5人を切る・・と咄嗟に考えた。

「おお、女だぞ」「頭に持って帰ろう、上玉だ」等と言っていると、クナイが山賊の一人の首に刺さった。

次々とクナイが山賊を殺し、ビケイは死体から剣を剥ぎ取ると残る5人に切りかかった。

が、この時は着物を着ていたので身動きが取れず地に伏してしまった。

再び残った山賊に囲まれ、ビケイは覚悟を決めていたが、やがて聞いたことのある大音声が響いた。

「こりゃああ!誰の縄張りで物取りをしているか!貴様ら、もう容赦はせん!!!」

そう言うと、男は一人で駆け抜け一振りで5人の山賊を吹っ飛ばした。

ビケイはその男を見て涙した。

「チョウヒ様!」

「おお、跳ね返り娘!生きていたか。何よりだ」

「チョウヒ様もご無事で嬉しゅうございます」

と、再開を喜び互いに現状を話し合った。

チョウヒはまだ兵や金を集めたいといい、リュウビを迎える準備は出来ていると言い、

古城の場所を伝えると帰っていった。まるで生まれ変わったチョウヒに頼もしさを覚えた。

さらにカンウと奥方の行方を知り、あとはリュウビだけと心を落ち着かせた。


が、しばらくしてその場にリュウヘキが通りかかった。やられたのはリュウヘキの手下であった。

一人だけ生きている者がいて、誰にやられたかと聞けば、山賊将軍だという。すると息を引き取った。

「もう許さんぞ!山賊将軍め!」

その夜、リュウヘキは仲間を集めて会議を開いた。当然チョウウンも呼ばれていた。

「おまえら!山賊将軍は知っているな!突然我らの山に現れ、物取りはするなと威張ったヤツだ。

これが今日、俺達の仲間を殺した。10人もだ。しかも仲間の首にはクナイが刺さっていた。相当の使い手もいるぞ。

だが、もう俺は我慢ならん。明日は山賊将軍を殺し、仲間の怨念を晴らすのだ!」

そう檄すると男臭い歓声があがった。

チョウウンはこれを聞いてはっとした。ビケイはクナイの使い手なのだ。

チョウウンは必死に物事を整理した。ビケイが山でリュウヘキの手下に囲まれ、クナイで応戦し、

そこに通りかかった山賊将軍がリュウヘキの手下を殺した・・・。か・・・。

ビケイを巻き込むわけにもいかず、チョウウンは進言した。

「待てリュウヘキ!貴様、敵は誰だと言った!」

「山賊将軍だ!」

「違う!俺と会った時の話だ!」

「決まっていよう!ソウソウだ!!」

「そこでだ、我らと山賊将軍が争い、喜ぶのは誰だ!!」

「・・・・ソウソウか」

「そうだ!だから仇を討つ事はやめろ!無駄な血を流すな!」

チョウウンはこれで、事を納められたと思った。が、

「確かにそうだ。だがなチョウウン。俺たちは日々の生活を共にしてきた仲間だ。それを・・・

だまって見過ごす事など出来んのだ!」

そう言うと山賊はまた盛り上がった。

「わかった。だが、ただ多くの血を流すのは得策では無いのは分かるな?」

「あぁ、そんな事は承知だ。だが」

というのを遮り、

「なら、ワシが山賊将軍の首を取ってくる。それなら文句はあるまい」

「山賊将軍は強いぞ。勝てなかったらどうする」

「・・・その時はワシの首をくれてやる」

「・・・お前の首か・・・よかろう。いつだ、いつ首を持ってくるのだ」

「明日の夕暮れまでには持ってきてやる。だから無駄な争いはやめるんだ」

それを聞いたリュウヘキは部下に同意を求め、チョウウンに山賊将軍を託した。


チョウウンは山賊将軍の正体がチョウヒだと知らない。知っていたら別な解決方法があったかもしれない。


翌朝、ビケイは古城の場所を確認するため、山に出ていた。

そして古城の門前でチョウヒと語らい、ビケイは去っていった。

これをチョウウンが見ていた。

「なんと・・・山賊将軍はチョウヒ先生の事であったか・・・」

と、チョウウンはうな垂れた。気が付くとキョショウの屋敷に着ており、ビケイに話した。

「実は、山賊の頭であるリュウヘキと約束をしました。先日、姉上のクナイが倒したのがリュウヘキの手下であり

その手下を壊滅させたのが山賊将軍。つまりチョウヒ先生でした。ワシはこれを知らずリュウヘキに山賊将軍の

首を持っていくと約束しました。ですが、先生に刃を向けるなんてできず、向けた所で敵いません。

リュウヘキには己の首を代わりに差し出すと約束してしまい、進退窮しました」と笑顔を見せた。さらに

「ただ、ゲントク先生に会えなかったのが心残りですが、これをゲントク先生にお渡し下さい」と

ビケイに手紙を渡した。ビケイは事態を飲み込んだ頃にはチョウウンの姿はもう無かった。

「私の身代わりに、なんてことを!」

そう言うとビケイは古城へと馬を駆けた。

それを聞いたチョウヒは、

「なんだと!チョウウンがワシの首の代わりだと!!弟子のクセに生意気な!」

それを聞いたチョウヒは大声で合図をかけた。

「今日は戦じゃ!リュウヘキ共を皆殺しにする!」と言うと

「跳ね返り殿は畑の先生の所へ戻っていてくれ」と言い、出陣した。

「畑の先生ではありません」と突っ込みたかったがそれどころでは無かった。

確かにキョショウからも、そろそろゲントクが来ると言われていたので全ては天に任せて屋敷に戻った。

キョショウの屋敷に着くと、そこにチョウウンがいた。

「チョウウン様!」

「あぁ、姉上。やはりゲントク先生には直接会って話したいと思い、期限は今日の夕暮れまで。待ちたいと思い

戻ってきてしまいました」

「あんな山賊との約束なんて、破棄してくださいませ!」と縋ったが

「いや、約束を破る事は出来ない。それくらいなら死んだ方がマシです。いやどちらにしても、死ぬのですが」

と笑った。

やがて山では戦の音が聞こえ出したが、夕方になってもリュウビは現れなかった。

それしてチョウウンは引き止めるビケイの腕を振り払い山へとかけていった。

その直後、リュウビとビジクが屋敷に訪れた。

「おや、やはりビケイでしたな」

「おお、催促であったか・・・。だが隣の男は一体・・・」

と、ビケイはリュウビの姿を見て泣き崩れた。再開を喜ぶのではなく、チョウウンについての話をした。

「なんと!あのチョウウンが来ているのか!」

ややあって、

「ビケイ、チョウウンを追うぞ」

そう言うと、3人はチョウウンの後を追った。


リュウヘキの所へ来たのは夕暮れも過ぎ夜になろうとしているところであった。

「こないかと思ったぞチョウウン」

「すまない、人を待っていたのだが、とうとうこれまで来なかった。もう思い残すことも無い」

「そうか、あのリュウ・・・なんとかってやつか」

「リュウ皇叔だ。何度も言わすな」

「別にどうだっていい。さて、山賊将軍の首はどうなった?」

「実は、山賊将軍は私の師匠であった。名はチョウヒという」

「まさか、あのチョウヒヨクトクか」

「あぁ。師に剣は向けられず、向けたとてワシでは敵わん。だから約束通りの俺の首をやる」

「そうであったか。では」

そう言うとリュウヘキは剣を投げ出した。

「自分でやってくれ。俺たちは誰もお前を憎んでいない。誰もお前を斬れんのだ」

「ふ、いいだろう」

そう言うとチョウウンは剣を逆手に構えた。

「さらば」

と言った直後に大音声が響き渡った。

誰が聞いても分かるこの大声。山賊将軍、チョウヒだった。

「やい、チョウウン!聞いているなら出て来い。リュウヘキよ!もしチョウウンの首が飛んでみろ!

貴様らの首も全て飛ぶ事になるぞ!」

同時に、物凄い数であろう兵の勝鬨が上がった。チョウウンは、

「はは、師匠にまで迷惑をかけてしまった。益々生きているわけにはいかん」そう言うと再び剣を構えたが

リュウヘキはその剣を蹴り飛ばした。

「お前が死んだら、まとまる話もまとまらなくなるわ!」と言い放った。

リュウヘキが自ら洞窟の表に出ると、そこにはリュウビ・ビジク・ビケイ・チョウヒが揃い

後ろには1万あまりの兵が武器を煌かせていた。

「ふふ。これでは勝負にすらならんわ」というと、チョウウンをただ、前方に投げ飛ばした。

チョウウンはよろめきながら全身し、やがて転んだ。目の前にはチョウヒとリュウビが立っていた。

「久しぶりだなチョウウン!だが、ワシの身代わりなんぞ、出すぎたマネをするな!」と一括し

チョウウンは「はは」と平伏した。

10数年振りの師弟の再開であった。


やがて、リュウヘキが口を開いた。

「山賊将軍、いや、チョウヒ将軍。それからリュウ・・・・なんだっけ。リュウ殿。話がある」

と、リュウヘキは一人で皆の前に座り込んだ。

リュウビとチョウヒが前に出て同じく座るとリュウヘキは語り出した。

「俺たちはただの山賊だ。と、これは既にチョウヒ殿から聞いていよう。リュウ殿はソウソウに敵対したと

聞いた。俺達もソウソウ達に追われた。俺達は盗人だが、ソウソウはそれを盗む大盗人だ。仲間も何人も殺された。

また、こうして対峙して分かったわ。俺たちはチョウヒ将軍には勝てぬ。そこでだ。

俺達をやとってくれないか。ここに居る物は皆、落ちぶれているわけではない。年貢が払えずに仕方なく山賊になった

ヤツもいれば、やはり好き好んでなったやつもいる。だが、皆、心は同じ、ソウソウに恨みをもった連中なのだ。

こうして山賊同士で戦うのも、そこのチョウウンに反対され、その意味もようやく分かった。それに・・・

どうせこんな稼業は長くは続かん。やがて山に死体を作るのが落ちだ。だったら、恨みのあるソウソウに敵対し

兵隊となって戦ったほうがどれだけ楽か分からん。今、多くの者はワシと同じ考えであろう。リュウ殿。チョウヒ殿。

いかがであろうか」


リュウビは全てを黙って聞いていた。チョウヒを振り返れば、兄者に任せるとばかりに空を見ていた。

「分かった。リュウヘキ殿。そなたの語る目に偽りはあるまい。皆を迎えたいと思う」

するとリュウヘキの洞窟から出てきた者達も「おおー」と歓声を挙げた。

「だが・・・」リュウビは続けた。

「如何せん、私もこの体たらくだ。皆を養える領地も持っていない。しばらくここで待っていてくれ。

かならず皆を迎えに来る」

それを聞くとリュウヘキは涙した。

「分かった。待とう。しばらくはあちこちの洞窟で待ち、吉報を待つとしよう。隠れ家はそこの・・・

チョウヒ殿が知っておろうからの。では御免!」

と、言うとリュウヘキ達山賊は散り散りに去っていった。

それも見送るとチョウヒが古城に案内した。

リュウビを囲み、チョウヒ、ビジク、ビケイ、チョウウンが座り久しぶりに多いに笑いあった。

とりわけ、兵隊がいないと分かるとチョウヒはリュウビに抱きついて喜んだ。

ビケイはこれを見て男同士を羨ましく思っていた。


と、ふとした折にリュウビがチョウウンに尋ねた。

「チョウウンはコウソンサンの元にいるのでは無かったのか?」と聞くと

「は・・・いや・・・武者修行に出されたのです」と答えた。

ビケイはそれを嘘だと感じ取り、つい、言葉に出してしまった。

「それは偽りでございます。私が都を出る際、チョウウン様をお見かけしましたのは落ち武者の姿でした」

チョウウンはそれを聞き、目を瞑っていた。

「チョウウン、私に隠し事をしているのか?」と聞けば、涙ながらに口を開いた。

「はい、我が主、コウソンサンは連合軍から帰還すると直ちに兵をまとめ、キ州へと出陣しました」

「やはりか・・・」

「そこでエンショウ軍と組み、ほどなくキ州は奪えたのですが、直後にエンショウ軍は刃を返し

我が軍に迫ってまいりました」

「なんと・・・」

「我が軍は疲れきっており、成す術もなく後退を余儀なくされ、北平に篭城する事となりました。

それからは長い事、お互いに競り合いをしていましたが、ついぞ昨年、我が主は部下の裏切りに合い

深手を追いました。命令も出せず、これまでと悟った主は、奥方を殺し、子を殺し、そして私を呼んで

こういいました。ゲントクに伝えてくれ。ワシが間違っていた。またあの世で、共に学ぼう・・と」


「あぁ。ハクゲン・・・・・」

「その為に、私はこれまで生きてきましたが、もう役目も終わりました」

そう言うと出て行こうとしたがリュウビは引き止めた。

「もはやハクゲンがそなたを寄越したのはただの伝達ではあるまい。どうかハクゲンの代わりとなり

私の手助けをしてくれぬか」

と言ったが、「いや・・・・御免」と言うとそのまま座り込み何も語る事は無かった。

「まさか死ぬつもりではあるまいな!」と言うリュウビの言葉にも反応しなかった。



しばらく沈黙が続いたが、ビケイが、カンウが奥方を連れ、都にいると話すと、チョウヒが怒り出した。

「ああ!あれはいかん!あんなヤツは叩き斬ってやる!」

リュウビは「何があったのだ・・・」と聞いたが、チョウヒは何も答えずに去っていってしまった。


だが、ビケイは言葉を続けた。

「こうなれば、カンウ様に一刻も早くこの事を伝え、奥方様と共にこちらへ呼びましょう」

と言ったが、「誰がそれを勤めるか・・・。」

一同は悩んだが、さらにビケイは続けた。

「たった一人だけおります。カンウ様を知り、都を知り、丞相様に知られていないお方が」

それを聞くとチョウウンは来た!と感じた。

このビケイの頭の回転、思いやり・・・。益々ビケイに惹かれてしまうのであった。


それを聞いたリュウビはチョウウンの横に座り、その手を取った。

「聞いていたかな。チョウウン。もはやこれはお主にしか頼めぬのだ。どうかこの私の力になってくれ」

そう言われたチョウウンは吹っ切れた様子で、重く「はい」と返事を返した。


翌朝、都は大騒ぎだった。

カンウが奥方と共に消えていたのだった。監視の兵もどこへやら跡形も無かった。

これを聞いたソウソウは慌てる風も無く、カンウのいた屋敷へと向った。

「二度と戻ってこないであろう、住処の様子を見れば人物の器が分かるものよ」

と言って屋敷を見た。

ソウソウが贈った食器等は全て綺麗に重ねられ、目録が付いていた。

横には侍女達30人が整列し平伏していた。

そして、1つの手紙だけが置いてあった。

そこには、許しを請う事なく出て行く事の非礼を詫びる事、赤ト馬はありがたく頂戴するとの事が

記してあった。

「失った者は・・・山よりも大きかったな・・・」とソウソウは悔しがった。

が、既にカンウの後を忍に追跡させていた。

「ふん。わざわざゲントクが生きているとワシに知らせおったわ!」と吐き捨て屋敷を去った。


カンウは許昌を出て古城とは反対側の、洛陽の方向へ馬を進めた。

そこで、元、ヨウキョウの住んでいた所で休憩し、カンウは赤ト馬で空の馬車を引き北へ向かい、

チョウウンは来るであろう追っ手をかわした後に、奥方を連れ古城(南)へ向うという作戦だった。

が、ヨウキョウの居た小屋は廃墟になっているはずだが、誰かが住んでいるようだった。

「これは一体・・・」とカンウが様子を見に行ったが、人影は無く、ヨウキョウが溺れ死んだであろう

川をただ眺めていた。

すると、カンウの足元に背後から近づく者の影が伸びた。

カンウはその影を見て当たらぬように薙刀を振り回し、影の方向でピタリと止めた。

だが、影は微動だにしなかった。振り返ると20を超えたあたりの青年が立っていた。

「お主、斬られると思わなかったのか」

「はい、間合いから見て、届かぬものと確信しておりました」

「お主がここに住んでいるのか?」

「はい。私の遠園にあたる親戚の家です」

「はて、ヨウキョウ殿の・・・」

「ヨウキョウ殿は私の叔母でございます」

「そうであったか・・・名は?」

「関平(カンペイ)と申します。字はまだありません」

「はて・・・この当たりで関性を名乗る者がいるとは・・・」

「いえ、出身は河東郡です」

「ワシも河東郡の出身だ。もしかしたらワシとも親戚かもしれんのう」

「はい。関羽(カンウ)様ですよね。母からは甥に当たると聞いています」

カンウにはその青年が嘘を言っているようには思えなかった。

「その肝っ玉、本当にそうかもしれぬ」と言って笑い出した。


「実はカンウ様・・・いや皇叔様に仕えるべく河東郡を出ましたが、行方も分からず叔母の家で時を

無駄に過ごしておりました」

「そうであったか・・・。これもヨウキョウの引き合わせかもしれん。こっちへ来い」

そう言って小屋に入り2人の奥方とチョウウンに引き合わせると、奥方達の世話役を

カンペイに任命した。カンペイはいきなりの大任務に驚いたが精一杯の心を尽くしカンウを安心させた。


半日程休むとカンウは洛陽に向って赤ト馬で空馬を引いて出た。

チョウウンは小屋から少し離れた所で昼寝をし、あるいは草笛を吹いて遊んでいた。

が、それは追っ手を見極めるためだった。

と、チョウウンの上の木と木の間を駆け抜けていった。

「風のような奴らだな・・・」

そうして見ていると2組、3組目が通り過ぎていった。

それからしばらくしても次の組は来なかった。

そうしてチョウウンは悠々と南へ向けて馬車を進めた。まさか5組もの忍が付いているとは

思わなかったのだ。


2日後にはチョウウンは古城へと帰還した。

カンレイはリュウビを見て泣いてすがり、キョウテイもチョウヒを見ると泣きついた。

チョウヒはそこで初めて我が子を見て、泣いて喜んだ。名を包(ホウ)とした。

チョウウンがカンペイの事を伝えるとチョウヒは面白くも無いような顔をしたが、

表情は笑っており、気持ち悪かった。

やがてその気持ち悪い顔は怒りに変わった。

見れば古城を取り囲んで青い旗があり「曹」の字が書かれていた。数は5万は超えていた。

チョウウンはそれを知ると「これはワシの責任です」と言い剣を自身に構えるとチョウヒが殴り倒した。

「貴様は何かと死ねば良いと思っているのか!そんなヒマがあるなら敵兵をやってこい!」

そう言われるとチョウウンはうな垂れて出て行った。

リュウビは会議を開いたが、古城の兵は1万。数の差は歴然であり、篭城と決まった。

カンペイは始めての戦であり、劣勢にも関わらず心は躍っていた。

と、篭城と決まったにも関わらずチョウウンは単騎で敵勢に駆けていった。

「本当に行きおったわ!あの馬鹿弟子が!」

そう言うと騎馬隊500に命じチョウヒもその後を追っていった。その中にカンペイも混ざっていた。


チョウウンは鬼のように戦い、やがてチョウヒ隊が合流すると退いていった。

だが、カンペイは単騎大将旗を目指して駆け抜けた。

「あれが、大将だな!一番手柄だ!」

そうして「典」の字の元へたどり着くとテンイが現れた。

「なんじゃあ、あの若造は。どれいたぶってやるか」

と両手に斧を持ち馬を進めた。カンペイは槍を駆け抜け様に突いたが軽がると避けられ、振り返り様に

横に薙いだが往なされた。するとテンイの斧はカンペイの乗っていた馬の首を刎ねた。

カンペイは転げ落ちたが地面から槍を発てた。それも避けられテンイは斧で槍を割った。

こうなるとカンペイは避けるだけになってしまった。

間合いを読み取る天性の才能だけで生きながらえた。

が、カンペイの体力も底を着き、テンイが止めと言わんばかりに両腕を振り上げたその時、

赤い閃光が閃きテンイの胴体が宙へ舞った。

カンウだった。洛陽まで着くと空の馬車を投げ捨て、赤ト馬の全力疾走によりあっという間に古城へと

辿り着いた。

「はっはっは。ソウソウ軍がいなければワシはこんな城は見つけられなかったぞ」と大笑いした。

その時、ソウソウ軍に異変が起こった。

数で圧倒的に有利だというのに突如混乱した。

それは総大将のテンイが斬られたのもあるが、リュウヘキが兵を動かし、包囲するソウソウ軍を外側から

包囲したのだった。

古城の兵もリュウヘキの兵も古城周辺の地理を知り尽くしていたので、岩を転がし木を倒しソウソウ軍を

圧倒した。

これを受けてリュウビが全軍の突撃を命じた。

こうしてソウソウ軍は散々に打ちのめされ僅かな兵だけで都へと引き返していった。

リュウビが「ウンチョウ!」と大声で叫びカンウを抱きしめると、チョウヒも先ほどまでの怒りはどこへやら

「ウンチョウの兄貴ー」と泣いて抱きついた。


戦後の処理をしていると、チョウウンが一人やってきてリュウビを呼んだ。

着いていくと、リュウヘキは深手を負っており、瀕死の状態だった。

まわりにはリュウヘキの部下達がすがるような目でリュウビを見ていた。

「おお、リュウ殿。情けない姿を見せてしまったな」

「何を言うリュウヘキ殿。そなたの援軍が無ければ我らは今頃死んでいた」

「ふ・・・リュウ殿、皆を頼むぞ」

そう言うと息を引き取った。

リュウビは改めて言い放った。

「リュウヘキ殿の死は決して無駄にしない。必ずそなた達を迎えに来る。だから、それまでは

我慢してくれ。この通りだ」と、リュウビは頭を下げた。

するとリュウヘキの部下達は涙ながらに勝鬨を挙げた。


ソウソウはこの報告を聞いて怒りまくった。

右手とも言えるテンイを殺されたどころか5万の兵も行方知れずになった為だった。

そしてソウソウ自ら10万を率いて古城へ攻め入ると言ったが諸将はそれに大反対した。

エンショウが官渡まで攻め入ってきたのであった。


ソウソウは諸将に宥められ、部屋を出て行った。


一方、古城では、リュウヘキの死という悲報はあったが、3兄弟の再会を祝してささやかに宴会が開かれた。

また、江南ではソンサクが君主となって2年目だというのに死に、弟のソンケン(孫権)が継いだ。


中央ではソウソウとエンショウがぶつかり合い、天下分け目の戦いが今、始まろうとしていた。
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