そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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徐州を預かったリュウビは政務に勤めていた。

カンウもチョウヒも、ビジクもトウケンの配下であった文官武官もよく働いた。

そんなある日、チョウヒが仏頂面でリュウビの部屋に入ってきた。

「門に変な奴がいる」

「ん。不審者なら追い返せばよかろう」

「そうしたい。出来れば叩き殺したい所だが兄者に会いたいと言っている」

「誰かな」

「親殺しの糞野郎だ」

「リョフ殿が!?」

「あぁ」

「なぜそれを早く言わぬ!」

そう言うとリュウビは駆け足で門へ向った。

チョウヒは

「何故、あんな野郎に!」

と訳が分からず怒っていた。

門へ着いたリュウビはリョフの姿を見た。

天下の豪傑だが、埃と傷に塗れていた。

「おお、リョフ殿!」

「すまないリュウビ殿。迷惑を掛けるかと思ったが、ここしか頼る先は無かったのだ」

「何を迷惑に思うものか!さぁこちらへ!」

リョフの目には涙が浮かんでいた。

夜にはリョフを持て成す会を開いたが、チョウヒは益々、訳が分からなかった。

「なんでカカアまで大喜びで迎えるのだ!ちくしょう!」

キョウテイもオウヒツの死にあたってリョフに感謝をしていた。

「ソウソウ殿と戦って敗れたとは聞いていたが無事で何よりであった」

とリュウビは心から安堵した様子であった。

それを受けてリョフは再び涙を流した。

「初めて人の心地に着いた気がする・・・。忝い」

リョフも心から感謝しており、とうとうリュウビに対し

「兄者」と呼ぶようになった。が、チョウヒはそれを聞くと

「こりゃあ!兄者はワシ等だけの兄者だ!お前なんぞが気安く呼ぶんじゃねえ!」

と怒りを露わにした。

「なんだと!親しみを込めて呼んだのに何が悪い!!」

「やる気か!そういえばコロウカンでの決着がまだだったな!表に出ろ!叩き斬ってやる!」

とチョウヒは立ち上がったが、そこをキョウテイに叩かれ、奥に連れて行かれた。

「物事を深く考えずにすぐ怒るのはお前さんの悪いクセです!」

キョウテイの怒鳴り声だけが聞こえた。ややあってリョフが口を開いた。

「やはり、俺はどこに行っても邪魔者のようだ。世話になった」

そう言うとリョフは立ち上がったがリュウビはそれを留めた。

「待ってくれ。誰が悪いように思うものか。チョウヒも皆、いずれ分かる」

「だが・・・」

とリュウビ自身も考えていたが、

「それなら、ここより西に小沛の城がある。そこは今、カンウに守りに着かせているが

ここをリョフ殿が守ってくれ。ソウソウと対する第一線だ。1万の兵も付ける。お主が好きに使ってくれ」

と言うと、リョフの目に滝のように涙が溢れてきた。

「忝い・・・」

小沛までリュウビと二人で歩いていたが、リョフが涙ながらに語った。

「俺は親殺しだ。だがそれには俺なりの理由があるのだ。聞いてくれるか」

「あぁ。何なりと聞こう」

「俺は孤児だったのだ。それをテイゲンが俺を拾った。何故か。

それは俺がデカかったからだ。毎日のようにムチで打たれ武芸を叩き込まれた。ただの番犬だったのだ。

あれが親か・・・。俺には赤ト馬の目の方が優しかった。それだけだったのだ・・・」

リュウビには返す言葉も無かった。

小沛に着き、カンウと諸将に伝達し、異動を命じた。

こうしてカンウと入れ替わりにリョフが小沛を守った。リョフはチンキュウを始め、共に逃げてきた兵を

入れ、鉄壁の守りに勤めた。


都でこれを聞いたソウソウは疑問に思った。

「なぜ正義に拘るリュウビがあの悪名高いリョフを匿うのか・・・」

それを聞いていたテイイクが答えた。

「恐らく、殿を恐れての事でしょう。ですがリョフはリョフ。リュウビに利が無いと分かれば

リュウビに食いつくはずです」

「そうやもしれん・・・。が、そうでないかもしれん」

「そんなに、心配なら一つ、手を打ってみましょう」

そう言うテイイクは笑っていた。

「リュウビは徐州を預かっているだけに過ぎず、本人もそう言っています。そこで、

リョフの首と交換条件に徐州の太守と認めるのです」

「ふん、そううまくいくかな」


テイイクは早速使いを出し、その詔はリュウビの手元に届いた。

リュウビはそれに目を通し、困惑した。

カンウとチョウヒもいたが、カンウは「確かに、これは難題だ」と一笑したが、チョウヒは

「簡単じゃないか!俺が首を取ってきてやる!」と言い、鼻息を荒く噴出したが、

リュウビはそれを止めた。

そこへ、リョフがやってきた。

「リュウビ殿!勅使がやってきたと聞いたぞ!お祝いに参った!」

と言うと、チョウヒが剣を抜き斬りかかったがリョフはそれを咄嗟にかわした。

「やめんか!」というリュウビの声にチョウヒは剣を閉まった。

そしてリョフは落ちている詔を拾うと、手が震えたが、やがて笑みに変わった。

「リュウビ殿。どうぞこの首を持っていってくれ。何の未練も無い」

そう言うと剣を抜き首に構えたが、その剣をリュウビは素手で押さえた。

「いや、すでに返事は決まっていたのだ」

そう言うと、リョフには人には言えぬ恩があるため、斬れぬ、と返事を認めた。

「何のこったい!」とチョウヒは出て行った。カンウも真意は読み取れぬまでも

何も言う事はなく出て行った。リョフはまた新たに涙を流した。


ソウソウの元へ返事が届くと、「相変わらず青臭い奴だ」と、ソウソウは笑い出した。


そこへテイイクがやってくると策の失敗を嘆いたが、すぐに次の策を提案した。

「今、帝の持つべき玉ジ(偉い人の判子w)をエンジュツが持っています。

これはエンジュツが帝に成り代わろうとしている為、討伐が必要です。これをリュウビにやらせましょう。

こうすればどちらが倒れても殿の優位は揺るがなくなるでしょう」

確かに、リョフを得たリュウビも怖いが、抜群の兵力を誇るエンショウ・エンジュツ兄弟も恐れていた。


これを承諾すると、テイイクはすぐに準備に取り掛かった。


リュウビは、しつこい勅使にウンザリしていたが、勅命とあれば反抗は出来ず会議を開いた。

が、エンジュツに対しては恨みも何も無いので形だけの戦をすると決めた。

「ですが、リュウビ殿、エンジュツ殿が形だけと分からなければ本当の戦になってしまいますぞ」

と、ビジクが言ったが、すぐに付け加えた。

「ならばこうしましょう。私が、妹のビケイと共にエンジュツ殿に対して人質となりましょう。

カンウ様やチョウヒ様は名が知れすぎておりこの役は務まりません。また、ビケイを第2婦人として

言えばエンジュツ殿も信用なさるでしょう」

「だが、万が一エンジュツ殿が・・・」

とリュウビが心配をすれば、

「ビケイもリュウビ殿の婦人として死ねれば本望でしょう。それがしもこの大役が務まれば本望です」

そう言うビジクの目は真剣であり、他に良い案も浮かばなかったので、これを実行した。


極秘にビジク兄妹が出発し、リュウビはカンウを連れて1万の兵を連れて出陣した。

チョウヒは酒癖が悪く城を預けるのに心配だったが、本人の自信溢れる禁酒宣言もあったので留守は安心だった。


こうして、広大な平原でエンジュツ軍と対峙したが、互いに攻める事はしなかった。

ソウソウの使いから、「どうした!早く攻めよ!」と急かされていたが、

「相手は我が軍の3倍はおります故、どう攻めれば良いかを思案しております。お上には

リュウビは無能と、お伝え下され」

と言って追い返した。


この報告を聞いたソウソウは

「リュウビめ、少しは大人になったか」と笑っていたが、やがて

「双方、和解し兵を引くように」と使いを出した。


これを受けたリュウビは直接、カンウと二人だけで馬を進めると

それを見たエンジュツ軍からもエンジュツとビジク兄妹がやってきた。

「いやはやリュウビ殿、長旅ご苦労であった。わははは!連合軍以来かな!」

等と上機嫌であった。

「此度はソウソウの策略だろうが、そうはいかん。なぁ?わははは!最近は江南のソンサクも

元気が良い!だがワシには勝てぬだろう!わははは!」

「はぁ、ははは・・・」

リュウビはこれまでに多くの将と出会い、それぞれ覇気や信念を感じ取ってきたが、

エンジュツからは何も感じ取れなかった。


エンジュツの五月蝿い独り言も早々にリュウビ軍は引き上げていった。

が、徐州城にある筈の「劉」の旗が無く、「呂(リョフのリョ)」の旗が立っていた。

「これは一体・・・」と一同は同様したが、すぐに城門は開かれリョフが出てきた。カンウが先に立ち

「これはどういう事だ!事次第では許さんぞ!」と言うと、リョフは馬を降り兵に合図をすると

縄に縛られたチョウヒが出てきた。縄を掴んでいるのはキョウテイだった。

リョフとキョウテイが話すには・・・


リュウビ達が出陣してからチョウヒはしばらく酒も我慢し、警備を勤めていたが

やがて、禁を破り、兵と酒盛りをしていたという。そして酔ったチョウヒはリョフが来た事を面白いと

思わず、小沛の城へ見回りに行くと言い出し、勝手に城門を抜け赤ト馬を引きずり回していたという。

これに激怒したリョフがチョウヒをぶちのめし縄を着け、小沛はチンキュウに預けリョフが徐州城を

守っていたという。


この話を聞き終える頃には、城の旗がいつの間にか「劉」に戻っていた。

続けてキョウテイが、

「我が夫には、姉の如く厳しく接していた事が此度の原因だったと思います。これからは母の様に

優しく接し、きっと更正させて見せます」

と涙ながらに語った。

リョフは「それでは御免」と言うと赤ト馬に跨ったが、リュウビが留めた。

「リョフ殿には感謝を言っても言い切れぬ。近頃、江南のソンサクが勢力を伸ばしていると聞いた。

どうか、カヒ城の守備に付いて江南に睨みを利かして下さらんか」

と土下座をしていた。

リョフはすぐさま馬から飛び降りリュウビの手を取った。

「そこまで俺の事を・・・」と再び熱い涙を流し、「カヒ城は任せてくれ!」と言うと

手兵を連れて去っていった。


チョウヒは縄を解かれてもずっと黙っていたが、隙を見てリュウビの剣を奪い喉元に立てた。

「兄貴達!御免よ!」と今にも突き刺さんばかりだった。カンウやリュウビが全く反応出来ない中、

ビケイが髪飾りを外し素早く投げると、チョウヒの手に刺さり剣は飛んで行った。

その後、カンウにボコボコにされリュウビにも泣きながら説教されると大人しくなった。


こうしてソウソウの策に対抗しつつ、徐州はより豊かに、強くなっていくのだが、

とうとう、あからさまに罠であろう勅使が徐州にやってきた。


「リュウビを徐州の太守とし、左将軍に任命する。よって許昌へ出向き奉公されたし」

との事だった。

左将軍ともなれば都にしばらくは留まらなければならなかった。

徐州の会議でも、行かぬ方が良いと諸将は言ったが、リュウビは帝の命だ。と聞かなかった。

こうなったらテコでも動かぬのがリュウビであり、それを知っているビジクは進言した。

「でしたら、妹のビケイを侍女として連れて行って下され。ソウソウ殿にも顔は知られておらず、

武芸もあり、また女であれば警戒も薄いでしょう」と言った。

確かに、カンウやチョウヒを連れて行ったのでは必ず争いになるだろうし、リュウビはこれを

受け入れた。

ビケイも荷物にクナイを忍ばせ、二人は都へと向っていった。

この時リュウビは38歳。ビケイは娘盛りを向かえ、リュウビは少しラヴズッキュンだった。


徐州城はカンウが2万の兵で守った。城にはリュウビ・チョウヒの妻がおり、ここを落とす罪は

死を持ってしても償いきれない。

小沛はチョウヒが1万の兵を連れていた。都から最も近く最前線となる城だった。

カヒにはリョフとチンキュウが5千の兵を連れていた。リョフがいると知られてからは

付近に海賊が出る事すら無くなった。


兵力は低いが、天下に誇る豪傑を揃えたリュウビ軍は、竜が天にも昇る勢いだった。


リュウビが都に着くと番兵に、リュウビの屋敷だ、と案内された。

中には手伝いの女が十数人いた。ビケイはリュウビに近寄り

「話が全てソウソウ様の耳に入るでありましょう」と言い、リュウビはビケイの思慮に敬服した。

程なくリュウビは丞相府(ソウソウのいる所)に呼ばれた。


「久しぶりだな。ゲントク」

そう言う言葉には、恨みは全く無く、心から昔の友としての愛が籠もっていた。

「お主には何度か楯突かれたが、会えば憎めぬ。不思議な奴だ」

「はぁ・・・」

「官の式は明日の朝からだ。それまでに都の仕来たり等を知っておくがいい」

と言うと、ソウソウは許昌の中を案内した。

やがて、立派な建物の中に連れて行かれると一つの立派な絵を見つけた。

「これが何だか分かるかな?」

「確か、リュウホウ様・・・かと」

「その通り、高祖である」

(ここは適当ですw確か、この漢の国を作った人達の事w多分w)

「その両隣にいるのがチョウリョウとショウカである」

「存じております」

「この方達は、元から身分の高い者ではなかった。お主も下はゴザ職人であろう」

「はい」

「ワシもゴザ職人では無いが決して身分は高くなかった」

「・・・」

「だが、今はどうだ!天下の万民がワシにひれ伏している!」

「・・・」

「ゲントクよ、今、ワシが描いている、この絵に変わる3人は誰か分かるかな?」

リュウビは真剣に悩んでいた。

「まぁよい。ワシの意見を聞かせよう。真ん中に立つのはこのワシだ!覇権を握り天下に号令を掛ける

のは、このワシだ」

「・・・」

「そして右にいるのが、ゴザ職人から身を立て、全ての民に好かれる政治を行う人徳の人物、お主だ」

「・・・!」

「そして左にいるのは流浪の身から主に献身を捧げ天下に武勇を誇るカンウである」

「・・・」

「これがワシの描く、この漢を統べる3人だ」

「・・・」

「これがワシの夢なのじゃ。これが無ければお主らの首はとっくに刎ねているぞ」

そう言うとソウソウは笑い出した。

この気迫、この信念。この時リュウビはキョショウから、ソウソウこそ乱世の奸雄だ。

と言った言葉を思い出していた。


翌日、リュウビの官位の式が行われた。

リュウビは帝の顔を見るのは始めてであった。呼ばれて帝の顔を見た時、リュウビは思わず

「あっ」と声を上げてしまった。

この時、帝は18歳。幼くしてトウタク・リカク・カクシに振り回される激動の中で必死に耐えてきた

その顔。色白の肌にくっきりとした顔、赤い唇。男と女の違いはあれど、亡きオウヒツとそっくりだった。

その帝から声を掛けられる。

「お主は朕と同じ劉性を名乗っているが、朕の同族か?」

「かつて、皇族としておられた方の遠縁にあたるとは聞いたことはありますが、証拠も無く、詐称を恐れ

口にした事はございません」

「そうか。実は、朕も気になって調べてみたのだ」

と、帝は一つの書類を紐解いた。

漢に使えた劉の性の付く者が次々と読まれていたが、やがてリュウビの祖父の名前が出てきた。

出てきたかと思えば、リュウビの父の名前も出てきて、その父は出処せず、リュウビを生む。

そう記されていた。

(リュウビの父はリュウビが生まれてすぐに死んでいた)

「これで分かったのだ。お主は朕の叔父にあたる。劉勝様の末裔にあたるのだ」

そう言うと、周囲の諸官が歓喜のどよめきを見せた。

「これからは、このリュウビを皇叔(コウシュク)として敬うように!」

と帝が告げた。

諸官が拍手で万歳を唱える中、ソウソウだけは青ざめて震えていた。


帝はソウソウの猛々しい威勢の中で震えるだけであったが、叔父であるリュウビが近くにいる事は

非常に嬉しく、頼もしく思っていた。

またリュウビも亡きオウヒツを思わせるその容姿と、頼ってくれている感じに愛着を覚えた。


帝は用事が無くともリュウビを呼び「皇叔、皇叔」と縋る様に話しかけた。

だが、帝の周囲の者も全てソウソウの手の者である為、悩みを打ち明ける事は出来なかった。

またリュウビもそれを承知していた為、他愛も無い会話をするだけであったが、帝のすがるような瞳が

日に日に色濃くなっていき、息苦しさを覚えるのだった。

それを察知したソウソウも3日と空けずにリュウビを丞相府に呼び出した。

「ゴザ職人の皇叔よ」

かなりの皮肉を言っていたがリュウビは気にも止めなかった。

「そういえば徐州は安泰かな?」

と、唐突に話を出してきた。

「はい、何の連絡もありませんが、私の兄弟も歴戦の勇士となり、

天下豪傑のリョフ殿もおります。しばらくは安泰かと・・・」

「ふむ。だが、カヒの城は危ないぞ。この時期、水攻めに合えば一溜まりもあるまい」

「・・・攻めるおつもりですか!?」

「いや何、助言をしたまでよ。気にするな戯言だ」

と不気味な笑いを浮かべていた。

それからはリュウビは毎日、丞相府に呼ばれ、用意された屋敷に戻る事も出来なかった。

ソウソウの言い方からして、徐州を攻めるのは明白であったが、それを伝える手段が無かった。

リュウビは焦りを感じ始めていた。


そんな夜。丞相府内のリュウビの部屋の隣の廊下から絹ズレの音がした。

入ってきたのはビケイであった。娼婦の格好であったのだ。

リュウビは何と大胆な事をする女だ!と驚いたが、もはや徐州の状態を知るにはこれしかなかった。

ビケイはリュウビの耳元で

「すぐそこに衛兵がおります」と言うと、リュウビは立ち上がり衛兵に告げた。

「済まぬが・・・これから・・・その・・・おっぱじめるのだ。声を聞かれるのは恥ずかしい」

それを聞くと衛兵に笑われもしたが、さすがに言う事を聞き門の方まで下がってくれた。

部屋に戻るとビケイはひれ伏し、「はしたない事を致しました」と謝った。

だがリュウビは手を取り、これしか方法は無かった、と感謝をした。

「リュウビ様が何かに焦っておられる様子だったので、何かを手伝えるかと思い参上しました」

「ありがたい。さすがはビジク殿の妹だ。実は、ソウソウ殿が徐州攻めをするという話をしていた」

「なんてこと・・・」

「そこで何とかカンウやチョウヒに知らせたいのだが、この警備。私は一歩も出られそうに無い」

「それでしたら、私が馬を駆けましょう。ぼろ布をまとい、顔に泥を塗り、頭巾を被れば書生のように見える筈。

ここからなら3日もあれば戻ってこれます」

「おお、行ってくれるか。宜しく頼んだぞ。今日はゆっくり休んでくれ。下がってよい」

そう言ったが、ビケイは下がらなかった。

「どうしたのだ。下がってよいぞ」

するとビケイは恥らいながら、

「こんなに早く出て行ったのでは怪しまれます」

と言った。「それもそうだ」とリュウビは納得したが、ビケイを見ている内に正気も保てなくなった。

ビケイは白い肌を仰け反らせ、リュウビは感謝し、顔○(自主規制)した。


翌日、ソウソウは都を用事で出ると言い、リュウビには都を出るな!と命令し出て行った。

それでもリュウビの周りにいる監視が減る事は無かった。


3日後、ビケイが戻ってくると前回と同じように衛兵を払い、詳細を聞いた。

「丞相様は恐ろしい方でございます。カヒ城の水攻めは既に始まっておりました」

「なんだと!」

「チョウヒ様もカンウ様もカヒ城が攻められているのは承知で、

援軍を送りたいとリュウビ様に早馬を出していたのですが、全て遮られていたそうです。

やがてカヒは水に沈み、残る僅かな兵とリョフ様は戦ったのですが、城内に間者が忍び込み、方転戟と赤ト馬を隠され

あえなく捕らえられました」

「なんてことを・・・」

「すると、丞相様は自身で首を刎ねるべく、都を発ったようにございます」

「それだけの為に・・・リョフどの・・・・!」

リュウビは大粒の涙を流した。ビケイもその日は薄絹を着ておらず内側に喪服を着ていた。

その晩は二人で静かにリョフの冥福を祈った。


その翌日、ソウソウが戻ってきた。

だが、リュウビを丞相府に閉じ込める事はもうやめたらしく、毎日のように呼ばれる事もなかった。



この頃、帝はある決心を固めていた。リュウビが都にいる内にと思いを書状に書き留めていた。

次の日もリュウビは帝に呼ばれ参内すると、帝の手に包帯が巻かれてあるのに気付いた。

「そのお怪我は?」

「あぁ、実は昨晩、桃を剥こうとしてな、手を滑らせて切ってしまったのだ。慣れない事はしない方がよいな」

と笑っていた。

「そうそう、皇叔どの。気付けば朕はそなたに贈り物をしていなかった。左将軍ともなったのに晴れ着の一つも

送らねばと、仕立てておいたぞ」

そう言うと高価な緑の生地に金の竜が描かれた晴れ着を差し出した。

「皇叔どのは大柄だと聞いていたので少し大きめに作らせたのだ。着てみて長かったらすぐに丈を詰めてくれ」


ありがたく頂戴し、屋敷に帰ると早速着てみた。が、やはり大きかった。

「3寸も詰めれば良いかと思います」

ビケイはそう言うと、生地を切り始めた。その時、切った内側から紙が落ちた。血が滲んでおりビケイはハッとしたが

何食わぬ顔でその紙を懐にしまい、詰めの作業を終えた。

「お似合いです。まるで高祖様がこの世に生まれ治ったような・・・」

「ははは。まるで中身は足りないがな・・・」


その晩、ビケイと二人になると、ビケイは紙を差し出した。

リュウビはそれを広げると震えだした。

帝からの血判状だった。

ソウソウの圧制に耐えられず、毎日が針の筵のよう。だが、リュウビが来た事で大船に乗った気持ちになり

それも落ち着いた。今、願うのはただ一つ。ソウソウを倒すべく立ち上がってくれ。

それが血文字で綴られていた。


これにリュウビは心の奥底から震え上がり、決意を新たにするのだった。

これには徐州だけの力では足りない。今こそ反ソウソウ連合軍を立てなければ!

そう思うのだが、この都からどう諸国に伝え、都からどう離れたものか。

それを悩んでいるとビケイが、

「宮廷の奥にはトウシュウ様がおります」と一言告げた。

ずっと昔から帝に使え、忠臣と呼ぶに相応しい人物で帝の信頼も厚く、ソウソウも手を出せずにいる将軍だった。

「そうだな、トウシュウ殿に頼るしかあるまい」それを聞いたビケイが

「でしたら私を宮廷に奉公に遣わせ下さい。トウ王妃より必ずやトウシュウ様にお伝えします」

リュウビも考えていたがもはや、それしか道は残されていなかった。何よりもビケイのこの機転の速さに

さらなる愛おしさを覚えた。

「ビケイ、絹と筆を持て」

そう言うリュウビの瞳に輝きを見て、ビケイはようやく愛する人が立つ時が来たのだと、心から震え上がり

同時に、失敗は許されないビケイ自身をきつく戒めるのであった。

リュウビは絹に20名程が書き連ねられる用に連判状を書き、帝を甚振る逆賊ソウソウを討つとの内容を

認め、指を噛み血で印を押した。ビケイはその指を握ると、二人はそのまま倒れこみ一夜を明かした。


翌朝、ビケイは盗んできた侍女用の服を纏い、リュウビの書を持って屋敷を出て行った。

リュウビはどうにかして徐州へ戻る口実を考えていた。が、ソウソウに呼ばれた為、丞相府へと向った。


暗雲立ち込める夏の日の事であった。
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