そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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アゴヒゲのカンウ・ヒゲ男のチョウヒと義兄弟となったリュウビは思った。

「・・・私もヒゲを生やそう」

こうしてリュウビは口の両脇にヒゲを・・・


かくしてリュウビが、高札を出したリュウエンという長官の元へ行こうとすると

カンウが引き止めた。

「このまま我ら3人で行っても雑兵になるのがオチだ。出世は望めん」

「それもそうだな。だが、我らは一文無しだ・・・。どうしたものか・・・」

「少し考えたい・・・」

そういうとカンウは徐に歩き出した。

「おいおい、どこまで行くんだーウンチョウの兄貴」

「・・・」

どこへ行くわけでもなく街道やら林道を歩き出すカンウ。

やがて小高い丘にたどり着いた。カンウが口を開いた。

「あっちの方角が落陽(ラクヨウ:帝がいる所)だ」

「私は、都へ行ってみたい・・・」

チョウヒはつま先立ちをして覗いている。

「見えねぇなあ」

「はっはっは。つま先立ちをしたとて見えぬわ。遥か遠くだ」

「ちぇ」

「だが、ここから、その遥か遠くまで数え切れぬ者が苦しんでいる」

「・・・」

リュウビは感慨にふけっていた。


そんな時、崖下の街道で馬の足音がする。

目をやると馬具商人が多くの馬を引き連れて歩いていた。

「おお。なんと立派な馬か」

そういったカンウは街道へ降りていった。

「少し見せて頂いていいかな?」

「どうぞどうぞ。この馬もさる豪族に買ってもらう予定でしたが、御館様が黄巾ども追われ

買い手がいなくなってしまい困っていた所です。値段は元値で構いませんよ」

「そうか、だが我らも生憎、一文無しでな・・・」

そう言うと商人はとなりの者と落胆のポーズを取った。

「いやはや駿馬揃いだ。兄者にはその白馬が似合いそうだ」

「俺はこの栗毛がいいなあ」

なんて貧乏兄弟が馬を見ていると、馬の嘶きに紛れ、林の影から出てきた族らしき者たちが

商人達に刃を向けていた。


「我らは黄巾党のものである。この馬は頂いていくぞ。文句を言うと命は無いと思え!」

商人達は震え上がるばかりだった。

それを見るやカンウは馬にまたがり剣を抜き族を切り倒していく。

族が防ぐ剣ごと叩き割っていく。有無を言わせぬ怪力であった。


リュウビとチョウヒも後に続いた。

この時、リュウビは初めて人を切った。

カンウに飲みながら褒められた腕の長さから、相手の剣が胸に届く頃には

リュウビの剣が相手を貫いていた。

族を一掃したと思うとカンウが

「これは天が我らに贈り物をしてくれたぞ」

と、族の連れていた馬を撫でていた。


と文字通り血なまぐさい争いがあったにも関わらず3人は呑気なものだった。

そこへ商人がやってきた。

「天からの贈り物はそれだけではありません」

「?」

「本来、私達は殺され馬も武具も取られていた所をお助け頂いたのです。

私達の荷物も一緒にお受け取り下さい」

チョウヒが

「本当か!やったな兄者!!」

カンウも満面の笑みを浮かべていたがリュウビは首を横に振った。

「いや、それは出来ません。あなた方にも生活があるでしょう。私達は

自分達の命を守っただけに過ぎません。よって頂く訳にはいきません」

商人は絶句していた。同時に、このリュウビという男に惚れこんでしまった。

「ならば、こういうのはどうでしょう。あなた方も馬や馬具が必要なご様子。

これらの品をお貸しします。そして一国一城の主となった際には、倍返しして下さい」

「いや、しかし・・・」

というリュウビをカンウとチョウヒが肘で小突く。

「ほら、お仲間もこうもうされております」

「しかし、我らが討ち死にをした時は全て無に帰してしまいます」

「それを損を申します。我らも商人。先を見る事で利益を生んでいるのです」

「そこまで言うのでしたら・・・」

そういうとリュウビは先ほどの黄巾族の旗に借用書を書き出した。

「なんと律儀なお方か・・・」

商人は感動していた。

馬50頭、武具100式・・・

等など書き終わる頃に商人が口を出した。

「そこにこれも・・・」

と、リュウビから筆を取り 金50 と書き加えた。

「いけません!」

リュウビが商人の方を向くと同時にカンウとチョウヒがリュウビの肩に手をやった。

「それでは、皆様のご武勇を祈っております」

そう言うと商人達は黄色い旗を手に街道を進んでいった。

リュウビは商人の姿が見えなくなるまで土下座をしていた。


やがてカンウが口を開く。

「さて、道具は集まった。あとは兵隊が欲しいな」

チョウヒも

「俺は武器が欲しい。こんな剣では戦いにくいわい」

リュウビはずっと感激し涙に震えていた。

カンウもチョウヒもその様子を見詰め合って笑顔で見ていた。


金50から各自の武器を地元で有名な鍛冶屋に依頼した。

特にチョウヒが依頼したのは1m80cm程もある蛇矛だった。(矛先が蛇のようにうねった矛)

カンウは大薙刀を、リュウビは手の長さを生かすために2本の長剣を依頼した。

およそ打ちあがるまで10日程掛かると言われ、その間に兵隊を集めた。

金を出し、あるいは食料を分け、あるいは勧誘しただけで付いてきてくれる者もいた。


前に合った商人がリュウビ達に救われた事を人に広めてくれていたのである。

そして武器が打ちあがってくるまでカンウは集まった500人に隊列を教えていた。


チョウヒが文句を垂れる。

「何でそんな事をするんだ?兵隊ごっこじゃあるまいし」

「10日あまりで武芸を仕込む等は無理だ。それよりも隊は見栄が重要なのだ」


やがて500人の内、馬に乗れる者を長とし見事な隊列を組める義勇軍になっていた。

10日後、出来上がった武器を抱え、500人の庶民を従えたリュウビ一行は一路

長官、リュウエンのいる幽州へ向うのだった。



リュウビには懐かしい思い出の場所である。コウソンサンと共に文武に明け暮れた

幼き日々。

リュウエンはロショクの元に出来の良い弟子がいる。と聞いていた事もあり

リュウビの事を知っていた。

そして丁重に持て成され、スウセイという者の配下に任命されたのだった。

部隊の登録を終えたリュウビがカンウ達の所へ戻るとカンウが言った。

「兄者、あのスウセイには気をつけた方がいい。兄者がリュウエン公と話している間、

ずっとこちらを睨んでおった」

「あぁ、分かった。迂闊に胸襟を開かぬようにしよう」


その夜、スウセイがリュウビ達の陣に入り込んできた。

「お前ら、出陣だ。黄巾の連中が5000の兵を繰り出してきた。

狙いはタクケンだと思うが、お前らの地元であろう。さっさと行って迎え撃て。

先方はお前ら義勇軍に任せ、後ろからワシが1500人程連れて本体として動くぞ。

敵の大将はテイエンシ・副将はトウモだという。早急に出立せよ」


急ぎ、地図を広げ進路を決めて戦の準備をした。

翌日未明に出立し、リュウビ達500人は明るい内に先回りし、高台に布陣する事が出来た。

義勇軍・本体と合わせて2000人の軍に対し、黄巾党の部隊は5000人。

それでも地の利はリュウビ達にあり、高台に布陣出来た事もあって戦況は五分と見れた。

しかし、いつまで経っても後続の本体が来ないのである。

馬を乗れる者に後方を探しに行かせたが、帰って来て受けた報は

「味方の軍勢は一人として見つけられません」

の一言だった。

カンウが

「やはり、あの男、腹黒だったな」

「おい、それじゃ俺達は取り残されたって事か!」

チョウヒが歯軋りをし怒り出した。

リュウビは自分達はともかく、連れてきた500人の事を案じていた。

それを見てカンウがチョウヒに言った。

「チョウヒ、ワシらであの軍勢を追い払うぞ!」

「2人で5000!?」

「あぁ!そうだ!」

そう言うとカンウは隊に向き直った。

「お前ら、隊列は覚えているな!それから、戦の極意を教える。

肉を切らせて骨を断つ!じゃ!その意気を持って当たれば敵は怯み、こちらは

かすり傷一つ負わんぞ!」

そういうとチョウヒに向って頷き、馬を走らせた。


二人は黄色い軍団の前にやってきた。そしてカンウが大音声で吐き出した。

「やい!副将のトウモ!お前は黄巾の中でも一番の臆病者だと聞く!

ワシの弟のチョウヒが鼻毛の変わりにお前の首を引っこ抜くといっておるぞ!

悔しかったら出てきて戦え!」

チョウヒは爆笑していた。

「兄貴の悪口は天下一品だな!」


黄色い軍団はざわめき出したが、やがて一人の将らしき者が単騎で飛び込んできた。

「どれ、蛇矛の切れ味を試してみるか」

そう言うとチョウヒはその将の前に進み、矛を振り回して向っていった。

チョウヒの攻撃に防戦一方のトウモであったが、防ぎきれず首を刎ねられた。


するとカンウが再び前に出た。

「副将は死んだぞ!大将はどこで震えているのだ!さっさと敵を取りにこんか!」


安い挑発に乗ったテイエンシは単騎でカンウの前に馬を進めた。

テイエンシが槍を持ってカンウに襲い掛かるが、カンウはそれを全て防いだ。

わざと馬から落ちようとしたりギリギリで槍を避ける等、チョウヒをドキドキさせたが

やがて攻勢に転じると、あえなくテイエンシの首を刎ねたのだった。

それを見て

「今だー!敵軍は総崩れだぞー!」

そうカンウが偈すると500人の鍬や鋤を持った義勇軍が5000人の軍を追い立てた。

将を失った軍はもはや戦意も無く逃げ回るだけだったが、カンウは途中で追撃をやめさせた。

「ここらへんにしておこう。向こうが本気でこっちに掛かってきたらとても叶わんぞ!」



それをどこで見ていたのか、スウセイがやってきた。

「何故、追わぬ!皆殺しにするのだ!」

それを受けてカンウは

「500人の農民で5000人を相手に出来ると思っているのか馬鹿め!」

そう言うと、転がっていた敵将2人の首をスウセイに投げつけた。

血まみれになったスウセイは血の気が退いて青白くなり言葉を発する事も出来なくなっていた。



こうして500人の義勇軍で10倍の軍勢を退けたリュウビ一行は幽州に帰還したのだった。


次の出陣まで時間をもらったリュウビはかつて、ロショクの元で学んでいた学問所に立ち寄った。

するとかつてお世話になっていた大家さんが子供を追い掛け回して遊んでいた。

「大家さん!」

声を掛けられた大家は

「はて、私を大家と呼ぶのは大分昔の知り合いのようだが・・・」

「リュウビです。大家さんには阿備と言ったほうが分かるかもしれません」

阿とは、幼名に付ける冠詞である。

「おお、まさしく阿備じゃ。こんなにも立派になったのか」

「はい、大家さんにはずいぶんとお世話になりました。腹が減る年頃だったので

大家さんに煮てもらう豆がどれだけ嬉しかったか分かりません」

「ほっほっほ」

懐かしんで学問所を見ていたリュウビに大家が真剣な顔で話しかけた。

「ところでロショク先生の事は知っているか?」

「いえ・・・」

「実は黄巾討伐の最前線に任命され、こちらに来ているのだ」

「えええ!」

リュウビは驚いた。

ロショクは儒学に精通し兵法も学んではいたが、机上のみの話であり、戦とは全く無縁の

人だったのだ。


政権を牛耳る十常侍と真っ向から対立していたロショクを、まさしく死においやる為の

十常侍の作戦だった。


それを聞いたリュウビは大家に挨拶を終えると、急ぎリュウエンの元へ向った。

そして、かつての恩師である事を伝え赴任を願い出た。

リュウエンは寂しそうな顔をしたが、快く認めてくれたのだった。


リュウビは急ぎ、義勇軍にその旨を伝え共にロショクの指揮する場所へと走った。

義勇軍は初の戦で疲れきってはいたが、日ごろから優しくしてもらっているリュウビに

頭を下げられたとあっては断る理由など無かったのだ。


しかし目的地に着く前に護送部隊を発見し、リュウビは驚いたのである。

護送されているのがロショクだったのである。檻に入れられ手かせを付け飯も食わせてもらって

いないようで衰弱しきっていた。


リュウビが檻にすがりつき、それを取り払おうとする衛兵をカンウが銀粒を渡し無理矢理に休憩させた。

話を聞けば十常侍の陰謀によるものだという。

久しぶりに対面した師弟だというのにそれはあまりにもひどい再開だった。

すぐに護送隊の休憩も終わり、再び動き出す。

リュウビは腰の剣に手を当てていた。

チョウヒも話を聞いていて完全に頭に血が上っていた。

しかし、カンウがなだめた。

「気持ちは分かるが、そうやって助けた所で何も変わらぬ」

「・・・」

「むしろ、今よりももっと悪くなるぞ」

「・・・・・」

「兄者はオウインどのをご存知ないか」

「!」

リュウビははっとした。

ロショクと共に十常侍に対抗しており、帝の恩恵も受けている最重要人物であり、

オウインがいる内は迂闊に手は出せないだろう、というカンウの言葉だった。

リュウビは落ち着きを取り戻したがチョウヒは

「だが、それでもロショク先生がやられたらどうする!!!」

親の存在をあまり知らないチョウヒに取ってはリュウビは掛け替えの無い家族・兄弟となり

リュウビ・カンウに通じる人、ましてや恩師ともなれば黙っている事など出来ないのだ。

「馬鹿者!」

カンウがゆっくりと二人の手を取り静かだが力のある声で言った。

「その時は我ら3人で、宮殿に切り込むのだ。」

「そうだな・・・。今はオウイン殿を信じるとしよう」


リュウビ一行は勢いで行動してきたが、目的を失いその場で野営の準備をしていた。


そこにまた軍勢が訪れた。先頭に立って進軍しているのは覇気に溢れた顔をした将だった。

リュウビと目が合うと、その男は馬を降り挨拶をしてきた。

「リュウビ殿かな」

「はい・・・。」

「やはりそうか。ロショク公の事は残念であったな。だが心配はあるまい。

オウイン殿もいるし、都にはまだまだ反十常侍派が沢山いるのだ。案ずることはない」

何故か、この男は全てを知っていた。

するとその男は笑い出した。

「きつねに摘まれたような顔だな。リュウビ殿、この世は情報が全てだ」

「は、はぁ」

「後ろにいるのがご兄弟かな?」

「はい、カンウとチョウヒです」

「そうか、確かに豪傑のようだ。良い兄弟を持ったな」


「なんだあ、あいつは」

「さぁ」

カンウとチョウヒもぶつぶつと言い出した。


「私はソウ=ソウ=モウトクという。お主と同じ討伐軍だ。また会う事もあろう。さらばだ」

そう言うと、再び進軍していった。


小太りの大男であったが、切れ目の長い目には恐ろしく強い意志が宿っているような感じがした。

だが、悪いものでは無く、また会って話をしてみたい。そう思わせる人物であった。


その夜、義勇軍は泥のように深い眠りに付いた。


翌朝、宛もなく幽州へ引き返していると、黄巾族とそれに追われる官軍を発見した。

「朝廷の部隊だと言うのに、官軍め・・・情けない・・・」

カンウが溜息を吐いていた。

「見過ごすことは出来ぬ」

そう言うとリュウビは剣を抜き黄巾の群れに突進していった。

それを見て義勇軍が全員が続いた。


優勢の族だったが、思わぬ奇襲を受け混乱し、乗じて官軍も反撃に転じ当たりは血の海となった。

やがて族は数えるほどになり撤退し、リュウビは義勇軍の損害を確認していた。

乱戦の中で義勇兵100人程が死んでしまっていたのである。

遺体を集め悲しんでいる所に官軍の将と思える人物が尋ねてきた。

「貴公らのお陰で助かったわい。冠を名乗るが良い、恩賞を出そう」

「はい、私達はタクケンで挙兵した義勇軍でございます」

「なんだとー!」

その男はマスオさんのように驚いた。

「冠も無いなら話をする必要も無いな」

そう言うとその男は引き返していった。

リュウビは呆然としていた。

命を投げ出してまで助けに入り、100人もの死者を出したにも関わらず何の恩賞も

受けられないという。

チョウヒもカンウも激しく憤るリュウビを初めて見て、声を掛けることすら出来なかった。

そこへ、先ほどとは違う実直そうな男が現れた。

「私はこの軍の副将のカクと申します」と、深く頭を下げた。


これに我に返ったリュウビが返事をする。

聞けば、この官軍の大将はトウタクといい、討伐軍が優勢となってきたため、引き上げている途中

だったという。

リュウビが何の恩賞も受けられないと言われた事を告げるとカクは深く悩んだ。

そして都に来てもらえれば必ず恩賞を出そう、と言い、カクの名で手形を渡した。

再び深く頭を下げたカクは去っていった。


リュウビはほっと一息を付いた。

「これで死んでいった者の家族に報いる事が出来る・・・」


都に向う事にしたが、さすがに400人で歩いては目立つのでチョウヒが義勇軍を取りまとめ

タクケンへ引き返し、カンウとリュウビが都:洛陽へ向う事となった。


道中、カンウが身の上話を始めた。

「ワシは以前、こっちのほうで暮らしていたのだ。身よりは無かったが高名な先生に拾われ

息子として育ててもらっていたのだ。その先生にも実の娘がいて、これを権力者が嫁に寄越せと

言ってな。先生は反対し、本人も嫌がっており、ワシはそれを見ていたので、力ずくで権力者が

兵を向けて来た際、ワシが追い返してやった。

ところが、ワシの留守中にも改めて兵が先生の屋敷に攻め入り、先生を始め門下も殺されたのだ。

その娘も、もうそこにはいなかった。呆然としてしまっていたが、事の顛末を聞き、ワシは

単身で権力者の屋敷に押し入り、全てを叩き斬った。そしてその娘と、その祖父を連れて

都を出てきたのだ」

「・・・」

「あのまま宮使えをしていればもしかしたら今頃は大将軍にでもなっていたかもしれん。

はっはっは」

最後の言葉は、まるで本音では無いようだった。

男に生まれ、殆どの男が名を挙げたいと思う中で必死に守るべきものを守ってきたのだ。

リュウビは何を答える訳も無くただ話しを聞いていた。


2人が洛陽へ着く頃、リュウビが気がついた。

「いま、ウンチョウが都へ行けば、以前の追ってにまた見つかるのではないか?」

「その時はその時だ。暴れるだけ暴れて先生の弔い合戦としよう。その時は兄者は逃げてくれ」

「そうはいかん。兄弟の誓いを忘れたか」

カンウは何も言えなかった。

「都には私が一人で行く。よいな」

「・・・分かった。ここより少し先に小さな小屋があるのだ。そこにはワシの知り合いもいてな。

そこで兄者を待つとしよう」

小屋を確認しカンウと別れたリュウビは一人、大きな屋敷を目指して歩いていった。



屋敷に着き、カクの手形を見せ奥に通されると、しばらくして見たことのある男がやってきた。

「恩賞を出せというのは貴様か。冠を名乗れ・・・お前はいつぞやの義勇軍の・・・」

「リュウビでございます」

「お前のようなヤツとは話す価値も無いわ」

そう吐き捨てるとその男は去っていった。


「どうしたことか・・・」

リュウビはその場から動けなかった。

「死んだ100人の家族に・・・」


昼には屋敷に着き早々に奥へと入れたが、恩賞はもらえず、ただただリュウビはじっと座っていた。

そのまま時が過ぎやがて夕日が差し込んできた。

周りの役人達もリュウビを見てはいるが、誰も声を掛けようともしなかった。


ただ、一人の男が声を掛けてきた。

「おや、あなたは」

その声に振り返ると幽州で会ったソウソウという男だった。

「まだいたのか。昼頃そなたを見つけたが、用があったので関せずにいたが、これはどういう仔細か」

リュウビは事の詳細を伝えると、やや沈黙をした後にソウソウが笑い出した。

「この屋敷の主はトウタクといってな、ただの野心家だ。恩賞なぞ出ようはずがない」

「ですが討ち死にをした100人の家族に合わせる顔がありません。私はテコでも動きません」

「顔に似合わず強情なお人だな。だが、そこがお主の良い所かもしれぬ」

ソウソウは話を続けた。

「良いかリュウビどの。こんな時代にトウタクなんぞを頼っていたのでは先は開けぬぞ」

リュウビは驚愕を隠せなかった。

事もあろうに高い身分の人物であろう、この大きな屋敷に住むトウタクの悪口を大声で言っているのだ。

「ソウソウどの、そんな大声では・・」

「なに、ここに連中は小物ばかりだ。わざわざ報告をしてトウタクの怒りを買おう等と言う輩はいない。

小物は小物だ。取るに足らない存在よ」

「はぁ」

「だがリュウビどのは違う。その目の輝きと人柄。私はほとほと気に入ったのだ」

「はぁ」

「私からで良ければ、役人に交渉してみよう。これでも少しは顔が利くのでな」

「なんですと」

「また、リュウエン公の元を離れていてからは、また流浪の身であろう。それではあの暴れん坊のご兄弟は

落ち着いておられまい」

「はい、太い腕をビシビシと叩いています」

「ははは。そうであろう。よし、着いてきてくれ」

そう言うとソウソウは別な館にリュウビを案内した。


都の大将軍、カシンの直属の配下であるコウホスウの元でソウソウは働いていた。

そのコウホスウと同じ立場にいるシュシュンという将軍の元に案内された。

シュシュンはソウソウの推挙という事もあり、死んだ100人へ向けての金銀と

残りの400人の者を都の兵士として使うと言ってくれた。


リュウビはソウソウに何度も感謝をし、カンウやチョウヒに早く知らせ、都へ呼ぶ為に

その場を去った。


リュウビが、カンウがいるであろう小屋に向かい戸を叩いたが、留守のようだった。

だが、カンウの上着が干してあったので、小屋の側で腰を下ろし待つ事にした。


すると小屋の裏から藁を持った女性が出てきた。

その女性は身を隠そうとしたが、今更遅いという動きをし動揺していたが

リュウビが声を掛けた。

「この小屋の方かな」

「・・・はい」

「こちらにカンウは来ているかな」

「・・・・・はい」

「なら良かった。カンウに吉報を届けたくて飛んで参りました。リュウビと申します」

「聞いております」

「カンウはお出かけかな」

「はい、祖父の薬を買いに隣町へ行っています」

「そうか、なら少し待たせてもらうとしよう」

女性は藁を片付け小屋の中に入ったかと思うとすぐに出てきた。

「リュウビ様はカンウ様の兄だと聞いております」

「そうですが」

「私はカンウ様と一緒に住んでおりました」

リュウビはカンウから聞いた話、その娘がこの女性なのだと悟った。

「はい、カンウから聞いております」

すると女性はリュウビにすがるように話しかけた。

「私はずっとカンウ様と結ばれるものと思っていました。カンウ様が私を救い出して

くれてからずっとここで暮らしていたのですが、私に指一本触れようともしません。

それは・・・・それは私が穢れているからでしょうか」


リュウビは驚いた。会ったばかりであるというのにここまで女性が話しをするものか。と。

また、同時にそれだけカンウを思っての事だと納得した。

「いや、それは違う」

リュウビは女性に向き直り一言加えた。

「それはあなたを大事に思うからこそ、カンウなりの愛情表現なのだ。私にはそれが分かる」

「・・・そうなのですか」

「あぁ。だが、我々は照れくさくてこういった話はしなかったのだが、私は今、知った。

これより我々は官軍となり、黄巾討伐の任務に付くが、落ち着いたら頃合を見て

私がカンウの兄として、あなたを必ず向かえにきます。もうしばらくお待ち下さい」

それを聞いた女性は頬を赤らめ、高ぶる感情を抑えきれない様子であった。


そこへカンウが馬を飛ばしやってきた。

「おお、おお・・・兄者・・・」

カンウはバツが悪そうにしていたが、落ち着きを取り戻しリュウビに聞いた。

「で、兄者どうであったか」

リュウビが都での経緯を話すとカンウは喜んだ。

「ワシが官軍か。だが、これでもう追っ手に追われる事もあるまい。

そうなれば、ワシがチョウヒと400人を呼んでこよう。これ、ヨウキョウ、ワシの荷物を持て」

どうやらこの女性はヨウキョウというらしい。

程なくしてヨウキョウがカンウの大薙刀や荷物を重そうに抱え持ってくると、干してあった

上着を着て荷を取り馬にまたがった。

「でわ、兄者、すぐに戻ってくる」

そういうとヨウキョウの事など一度も見る事なく、カンウは馬を走らせた。

日も暮れてきたのでリュウビは都のシュシュンの元へ向う事にした。


「あのヨウキョウどのの嬉しそうな顔。カンウの照れた顔」

そんな事を考えていると、ふとオウヒツの事を思い出していた。

その夜にはシュシュンから歓迎の宴を受け、出席してくれたソウソウとも大いに語り合った。

シュシュンは、

「ワシとコウホスウは項を競い合っているが、お主ら二人の競争も見物だわい」

と大いに喜んでいた。


やがてカンウとチョウヒ、タクケンからの400人と合流し、官軍入りの手続きを済ませると

リュウビは軍会議に呼ばれた。


黄巾党の討伐は終焉に近づいているという。

黄巾の拠点も残り僅かとなり、リュウビ隊は5000の兵を預かり宛城という拠点に攻め入る事となった。


軍を進めて3日程して、ジョナンと呼ばれる地を通っていた夜の事。

戦争があったのだろう、血生臭い風が漂う高原に出た。

黄色い服をまとった死体が累々と横たわり、何よりも驚いたのは全ての死体に首が無かった事だった。

物事には動じないカンウでさえ、唸っていた。

「ここまでやるとは・・・よほどの将が指揮した官軍なのだろうな」

その死体の数は10000を超えていた。


リュウビがその光景に驚いていると、物陰から年配の男が姿を現した。

「よくここまでやるものよのう。ヤツこそ乱世の奸雄じゃ」

「ここでの戦を見ていたのですか」

「あぁ、見たとも。兵法に叶った布陣、一分の隙も無い行軍、一切の容赦無い信念」

「それほどの将が官軍に・・・」

「あぁ、お主と年もそこまで離れてはおるまい」

「その将の名前はご存知ですか」

「知っておるとも。ソウソウモウトク。恐るべき男じゃ」


リュウビは愕然とした。

出合ったばかりのリュウビの為に動き、恩賞を出してもらった他、身の上まで世話をしてくれた

優しい人物がこのような所業をするとは到底思えなかったのである。


男は改めて話かけてきた。

「わしはここいらで百姓をしているが、人物鑑定なんぞもしておる。

キョショウというものじゃ。見たところお主も只者では無さそうだ。

進むべき道に迷ったら尋ねてくるといい」

そう言い残すと暗闇に消えていった。


カンウはキョショウを知ってるようで、かなり名の知れた人物鑑定師だという。


リュウビ隊が宛城に着いたのはそれから3日後の事だった。

族は城内に立て籠もり篭城(ひきこもりな戦法)の構えを見せていた。

一度は無理矢理に城門を空けようと突撃したが、城の上から岩やら矢が降ってきてリュウビ軍は

大きな犠牲を出した。兵力も僅か3000となり攻めようが無くなっていた。

ただ、城から出てきた間者をチョウヒが捕まえてきた。

カンウが城内の様子を吐かせると以外な事に、既に兵糧は尽きており兵の士気は下がり続け

数も5000を切り、投降しようとする者がいると斬って捨てられるという。

この間者も、命からがら逃げてきた投降兵だった。

「今、攻め入れば勝てるぞ兄者!」

とカンウもチョウヒも声を張るが、リュウビは認めなかった。

「無駄な血は流させたくない。城内で反乱が起こり将の身柄を出してくれればよいのだが」

と、リュウビらしいといえばリュウビらしくそのまま、見詰め合うだけの戦が続いた。

「チェ」

と言ってカンウとチョウヒは酒を飲んでは寝、起きては酒を飲んで時間だけが過ぎていった。


するとシュシュンの軍が1万の軍を連れて援軍に駆けつけてきた。

報告を聞いたシュシュンは怒り出した。

「そんな事でどうするか!お主を推挙したソウソウは2万の族を討ち、敵の総大将である

チョウカクの弟を討ち、死体を切り刻んで我が方の勝利はもう目前なのだ!それに比べて・・・

もうよい!わしの隊が城を落とす!!」

シュシュンは突撃を号令し、攻め込んだ。

チョウヒは

「あの横取り野郎が!!!」

といきり立ったが、リュウビはそれを制した。

「これでよいのだ。私達の軍の血が流れずに済んだのだ」

「チェエエ!兄者は甘いぜ!!」

というとまた酒を飲みに戻った。


もはやこれまでと悟った宛城の族は、城門を開けて迎え撃ち両軍が大激突した。

族は皆殺しとなったが、シュシュンの軍も2000の兵を失った。


その後、黄巾の頭領であるチョウカクも病に倒れ、その一族も殺され指揮系統が取れなくなった族は

散々に討たれ、降伏する者も多く、事実上、黄巾党は壊滅となった。


討伐隊が都に呼ばれ、各将が新しい地位や名誉を授かった。

リュウビも官軍に参加してからは功という功は挙げていないが、

一気に大出世したソウソウの一声と、ロショク・オウインの推薦もあって、リュウビにも官が授けられた。


アンキ県という、小さな村だがそこを納める役を賜ったのある。

ソウソウとは権力の上ではこの上なく離されてしまったが、リュウビは初めて行う政治であり

胸が躍っていた。

チョウヒも

「俺が役所の番兵かぁ」

なんて言っていたが、しぶしぶ着いて来た。

カンウにはリュウビの右腕として、また小さな軍ではあるが兵の訓練を任せた。


リュウビの行う政治は公平であり、役人のワイロなどは絶対に許さず、ケンカの仲裁まで

直接関わり、事を納めていった。

村の人々も

「今回の役人さんは稀に見る、徳のある人だ」

などと言い、外からアンキ県に流れてくる者もいた。


兄弟の契りを交わしてから、戦場ばかりを駆けてきたが、それに比べると

長閑な日々であった。


ある晴れた日に、カンウがリュウビに言った。

「そろそろ嫁をもらってはどうか。早くしてもらわんと後が仕える」

リュウビはすぐに答えた。

「それはヨウキョウどのの事を言っているのか」

「あ・・・・いや・・・これは叶わん・・・」

と、カンウは赤くなりうろたえた。

リュウビもオウヒツの事を思い出していた。

「しかし・・・お互い無一文ではなぁ・・・」


そんな折に、役所に村の若者が駆け込んできた。村の財政を任せている頼れる若者であった。

「大変です。リュウビさん。都から巡察が来るみたいですよ!!!」

「そうですか。丁重に御持て成しをしてあげて下さい」

「はい、それはまぁ、やれるだけの事はやりますが・・・」

「何か?」

「去勢をしている方ですから女は要りませんが、その分、山のように金銀を積みませんと」

「この村にそんな余裕は無いでしょう」

「ですから、こういう時は領民から金を搾り取って・・・」

「いや、それはいかん!絶対に許さない!」

「あぁ・・・どうなる事やら・・・・」


やがて来るではあろう、腐敗した朝廷の使いが来るという。

だが、無いものは無いのだから仕方が無いだろう。というリュウビの硬い決意を聞いた若者は

走って逃げ出していた。


翌日、巡察に来た者をリュウビが村の外から迎えたが馬上から見下ろすだけで挨拶も返して

くれなかった。

そして、予想していた事だが、村の長老が巡察官に呼ばれていた。

リュウビがワイロの要求を拒んだ為に、偽の書状を書けという・・・・

つまり、リュウビが悪政を行っている為、役人を変えてほしいと懇願する旨の書状だった。

だが、今回の役人は素晴らしく、長老は一切書くことは無いと断固反対し、その長老は村の広場で裸にされ

ムチで討たれる事となった。


それをチョウヒが聞きつけ、鬼のような形相で巡察官を捕らえ引きずりまわし、太い木に吊るし上げたのだ。

そして枝を折っては巡察官を打ち、折れては次の枝を折って巡察官を懲らしめた。

やがて駆けつけたカンウも、その様子を見ていたが、長老の労しい姿を見て、

カンウまで拍手をする始末だった。


遅れて来たリュウビはその光景に唖然としていたが、やがてチョウヒの手を掴んだ。

「もうよい」

「だってよう・・・」

巡察官は気息奄々としていたが、リュウビに告げた。

「これは反乱だ!朝廷に対する反乱であるぞ!はやくこの縄を解け!

さもなくば逆賊ぞ!!!」

しばらくしてリュウビは前に進み出た。

縄を解くものとチョウヒもカンウも・・・村の人々も様子を見ていたがそうではなかった。

「お主のような者を裁くのが逆賊なら、喜んで逆賊と呼ばれよう」

そう言うと、首にかけていた役人の印を巡察官に掛け、リュウビが怒鳴り散らした。

「もし、これが原因でロショク先生やオウイン殿に危害があるような事になってみよ!

このチョウヒに代わって、私が貴様を斬る!」

それを聞いた巡察官は小便を垂れ流し、口からは泡を吹いていた。

そして村の人々に別れを告げ、カンウ・チョウヒと共に野に下ったのである。

村人は姿が見えなくなっても別れの言葉や声援を送っていた。



朝廷から追っ手の掛かるであろう逃避行である。



桃の木のあるチョウヒの館で義兄弟の契りを交わして戦場を駆け巡り、

官職を得る事1年。

気付けば、現状は元の3人のまま、何も変わらなかった。


だが、3人の、リュウビの胸には新たな決意が生まれていた。


こうして3騎は行く着く宛も無い旅路を力強く走り出すのであった。
コメント
この記事へのコメント
第二回目にて黄巾の乱の一旦の終焉か・・・どこまでやるのか知らんけど、これだと夏頃までかかるんじゃないか?w
あとさぁ、無い漢字があるし、面倒だからカタカナなんだろうけど、同じ読みで違う人物出てきたらどうすんだ?
2011/04/16(土) 02:20 | URL | 冷麺 #-[ 編集]
>冷麺w

ね・・・そこまで集中力持たないので・・・恐るべき簡略化を計るよw

同じ名前の人物は・・・出さないw!
2011/04/16(土) 03:28 | URL | まる #-[ 編集]
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