そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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電線に大量の烏達が並んでいる。

まだ太陽が昇る前、波の音が聞こえてくる。

空は白く、どことなく重い空気が流れているようだ。



男は大きく息を吹いた。

白い煙が中に舞う。

カーテン越しに窓の外を見るが、まだ起きようと思える時間では無い。

そう考えて再び天井を見上げた。

ピンクのハートが敷き詰められた天井。

隣では女が寝息を立てている。

男は再びタバコを銜えて手で灰皿を探す。

金属の冷たい感触。

サラっとした布状の物体。

タバコの箱。

灰皿。


男はタバコの火を消し、温いペットボトルのお茶を飲み、再びベッドへ潜り込む。

隣に目をやると女は目を覚ましていた。

「・・・またタバコ?」

男は気に留める訳でもなく再び天井を見つめる。

女はじゃれついてくる様に腕にしがみついた。

と、間もなく再び寝息が聞こえてきた。


テーブルの上のグラスの氷が落ちる音がする。


段々と心が冷たくなっていくのが分かる。

少なくとも隣にいる女に興味も何も無かった。

天井へ向けた視線も徐所に下がりどこを見ているわけでもなくボンヤリしていた。




次の瞬間、朝日がカーテンを通り越し部屋中を明るく染めている。

女の腕をうまく振り払いつつ体を起こした。

男はタバコを加え火を付けた。


いつのまにか女は啜り泣いている。

あるいは・・・。


一言も発する事無く男はタバコを根本まで吸い尽くした。

お茶を飲もうとしたが既に空で、グラスの中の何かを飲み干した。

男は大きく溜息を付くと再びベッドに入った。

女は泣き止んだ。


女は男の胸の上に掌を置いた。



電車の走る音がする。



女は何かに気付いたように男の腕にしがみついた。



車の音がする。





波の音が聞こえる。


「ねぇ」

女は話し出す。

「生きてる」


電車の音が去っていった。


「ね?」



エアコンの音が聞こえる。


「あぁ。そうだな」



その後二人は何を話す訳でも無くボンヤリとどこかを見ていた。



またテーブルの上のグラスの氷が音を立てた。




カラン




カラン

「ねぇ、お客が来てやったっていうのに何ですぐ来ないの!?」

そう叫ぶと、カズコは怒りながら、店員が出てくるであろう方向を睨み付けていた。

「はいはい、ただいま」

実直そうな男性が出てきた。

「ったく、そんなんだから店が小さいままなのよ!コーヒー!!ホットね!!」

そう言って勝手に奥のBOXの方へズカズカと進んでいった。

小さな喫茶店:北風

駅前の大通沿いにあり、安くて深すぎるコクが売りの小さな喫茶店である。

「あぁもう、なんなの・・・」

カズコはずっと一人でグチグチと言っている。

先ほど、奇跡の如く長く付き合っていた彼に振られたのだった。


整った顔立ちにややスレンダー気味な体系。

薄めの化粧に綺麗な黒髪。

容姿は良いのだが、その内面は・・・。


「お待たせしました」

コーヒーが運ばれてきても、その男性には見向きもせずクリープだけ入れると

グイっと飲み込んだ。

「あつっ・・・」


男性はそれに気付いたがあえて関わろうとは思えなかった。


舌がヒリヒリする。

頭を掻き乱し不貞腐れた顔で外を眺める。



昔は・・・・。

容姿には自信があり、料理も得意である程度勉強も出来て。

中学校からは恋人がいない時なんて殆ど無かったのだ。

だけど、長続きしない。

その理由は、本人曰く「相手が悪い」。

友人に「そこまで続かないのはアンタに原因があるよ」と、諭された時も合ったが、

耳には入っても頭で理解も出来ず

結果、友人も信用出来ず日に日に孤独になっていった。

それでも彼氏がいない、と一言もらせば、その1,2ヶ月後には同棲が始まっていた。

「なんでこう、良い男はいないのだろう・・・」


過去、一番長く付き合ってた人で大学の時の最後の彼氏。

4年のバレンタインから新入社員の研修が終わる夏頃まで。

イケメンな彼氏で、適度に優しく友人も多く、何でも笑ってくれる。

こういう人なら悪くないかなー。



なんて思っていた新社会人2ヶ月目。

いざ社会に出てみると、仕事が出来る人が格好良く見え高所得者。

家に帰ってみれば、違う職場だが新人で毎日疲れて帰ってくる低所得者。

待っていれば、きっと立派に成長するであろうその彼氏の事も信じられず

次第に冷めていき、その年の夏に上司を飲みに誘い泥酔させる→お泊りコース。

ホテルの中から彼氏に荷物持って出て行けメール→アド変・着拒→上司の家に転がり込む。

生活も豊かになり、幸せを感じていた。



ただ、上司も仕事が好きで中々家に帰ってこず、少しずつ不満が溜まっていく。

こうなりゃ公務員でも捕まえるか!と思いきやこの時代それほど収入もらっていない。

ならばどっかの社長を捕まえるか!と思いきやただの上司のバージョンUP。


結局、上司の家を拠点に理想の彼氏探索中。

やがて来る大不況に疲れるを仕事をやめる訳にもいかず、仕事が不満・彼氏が不満。

不満だらけで家事も手につかず笑みは消え、脂の乗っていた全盛期を終え傷みが具合が

気になってきた。



クリスマスが近づいてきた頃。

熱っぽいのを理由に会社を休み、上司を見送ると、電話で昔の友達と男について熱く語っていた。

爆笑し話も盛り上がって来た頃、ふと時計に目をやるカズコ。

時計の下のドアのとこにはケーキでも買ってきたのか袋を提げた彼氏・上司。

心配で見舞いに戻ってきたのだろうか。

静かな部屋で気まずい友達の声が響く。

上司は袋を置いて出て行った。

慌てて電話を切り、カバンを持って追いかけていく。

(今、別れたら生活レベルが落ちちゃうじゃない!)

呼び止め、追いついたカズコ。

息を整え上司の顔を見ると、それは知ってる上司の顔では無かった。

何かを言われた。

時間が止まったように思えた。

自分だけ止まったように思えた。

駅前の大通りだけあって車の音がウルサイ。

ウルサイのだろうが、気付けなかった。

髪はボサボサで靴もパンプスにサンダルだった。

(落ち着け・・・私・・・)

カズコは目を瞑り深呼吸し、目に入ったちょっとオシャレな喫茶店のドアを開けた。




カラン


カラン


缶ビールを壁に投げつけた。

ダイジロウは途方に暮れていた。

いきなり別れて・・・出て行って、なんて。

確かに、互いに熱は醒めていたのは分かっていたが、こんなに唐突に別れが来るなんて

思ってもいなかったのだ。

初めての彼女だった。

いくら飲んでも酔いが来ない。

酒には弱いはずなのだが・・・。

電話も繋がらないし、メールも返ってこない。

出て行って、と言われても実家は遠いし・・・

仕方無しに荷物をまとめ友人宅を頼ってダイジロウは出て行った。

もともと彼女の部屋だし、荷物も代えのスーツ等服くらいしかない。


友人は親身に話を聞いてくれた。

結論としては、飲め!だけだったが心が和んでいく。

気がつけば朝。

ろくに寝てもいないがそれは友人も一緒だ。

さらにフライパンで焼いた食パンとインスタント味噌汁までご馳走になった。

「今日は6時くらいには戻るよ。盗られる物も無いし鍵は掛けなくていいや。

 あんまりボケっとしてんなよ~」

そういうと友人は仕事に出て行った。


ひどく頭が痛む。2日酔いか・・・

「初めて2日酔いになったわ。はは・・・」

TVで特ダネが始まった。

「うわぁ、時間無いし・・・くそ・・・」

顔を洗い着替えて急いで部屋を出る。

ほんとに鍵掛けなくて大丈夫か?とも思ったが鍵も見当たらないし仕方が無い。


ものすごい未練・・・なのか、怒りなのか分からないが、負の感情が浮き上がってくる。

同時に、真夜中に叩き起こして朝まで飲み付き合わせたと同時に励ましてくれた友人に対し

感謝の気持ちでいっぱいで、電車の中でも泣いていた。


その日、会社で何をしたかは覚えていないが彼女の事は忘れていられた。

と、帰り道、週間で彼女・・・元彼女のアパートに来ていた。

電気は点いていないし、ポストにチラシや新聞が入ったままで中にいる感じはしなかった。

「はは・・なんでこんなとこに・・・」

と、甲高い足音が聞こえてきた。

聞き覚えのある音で、ダイジロウは急ぎその場を去った。



友人のアパートに着くと、友人は既に帰っているようだった。

「悪い、今日も世話になる・・・」

「おう、おつかれー」

鍵なんか掛かっちゃいない玄関を開けた瞬間からいい匂いがする。

「カレーか!」

「当たり!ってか誰でも分かるわな」

「・・・悪いな・・・」

「まぁお互い様だろ、こういう時はさ。あと、風呂も沸いてるぞ。飯が先か?

 それとも・・・・俺?」

「あほう」


ベチャベチャのご飯に水気0のカレーだったが、意外とウマかった。

本人曰く「こ、この絶妙な水分バランスと、隠し調味料によって最高の味を作り上げているのだ」

だ、そうだ。

「隠し調味料って何だよ」

「ラー油だ!」

「このミーハー野郎が」

「うるさい!黙って食うんだ!」


食事中も駄弁ってる時も寝る前も、元カノの事は一切触れてこなかった。

ダイジロウが考えてしまい表情が沈んだときには友人は何か違う話題を振ってくれていた。

「そういえば明日は休みだよな?」

「あぁ」

「俺も休みだから、ちっと買い物付き合えよ」

「あぁ」

「ペアカップでも買いに行こうぜ」

「おやすみ」



そうだ。明日は不動産屋にいかないとな。

って、男2人でか?

さすがにヤバイだろ。やっぱそういうのは彼女とかと・・・・くそ・・・


色々考えていたが、疲れが溜まっていたのかすぐに意識は無くなっていった。


目を覚ますと、まな板と包丁の織り成す音が聞こえてくる。

コタツから出て見回すと友人が寝ていた所には綺麗に畳まれた布団があった。

「おっす」

「おう」

「お前、いい嫁になれるわ」

「だろ?」

顔を洗って居間に戻ると味噌汁やら昨日の残りのベチャベチャご飯やら目玉焼きやらが並んでいる。

何故か光って見えた。



二人そろって玄関から出ると、隣の女子大生?とバッタリ。



「すっごい綺麗な人じゃないか」

「あぁ。でもたまにアレの時の声が響いて来るんだ。想像すると直視出来ん」



街に出た二人。

取り合えず、不動産屋へ行きあと2,3日で入居出来るという、良さ気なアパートを契約し、

ダイジロウは生活用品を、友人は食材などを買いあさった。

日もすっかり暮れてきた頃、二人はアパートに戻ってきた。

と、またもや玄関の前で隣の女子大生?と出くわした。

ダイジロウは覚えている。奇異を見る目で見られた事を・・・。


友人のお陰で辛い思いをしなかった事を・・・。


ダイジロウはその後は女性恐怖症になっていた。

合コンや女性を紹介されたりもしたが、好きなんて感情は一切生まれてこなかった。

一瞬は好きかも、と思えるがその先を想像し完全に壁を作ってしまったのだ。

すっかり元カノの事も忘れた頃には友人に、いずれまた女を好きになる、とは言われたものの

ダイジロウにはまだ分からなかった。





ただ時が経ち、すっかり仕事も板についてきたダイジロウは、

クリスマスを間近に控え、ふと寂しさを覚えるようになった。


そんな時に思い浮かべるのは友人だ。頼りになり過ぎる友人。親友?

なんて恥ずかしいけど、少なくともダイジロウはそう思っていた。

あの時依頼、友人とは外でたまに飲むくらいだったが、今でもあのアパートにいるという。


懐かしい路地。

「変わってないな」

少しニヤニヤしながら友人の部屋のインターホンを押そうとした際、隣の玄関が開いた。

ダイジロウは反射的にビクっとした。

あの奇異を見る目は忘れられるものじゃない・・・。


ダイジロウは完全に固まってしまった。

が、出てきたのは知らないオジサンだった。

そう、考えてみればあれから5年以上経っている。

(そりゃいなくて当然だ)

ホっと安心し胸を撫で下ろすダイジロウ。

それにオジサンはかなりビビッて慌てて逃げるように去っていった。

(・・・そこまで驚くなっつうの)


インターホンを鳴らし友人が迎えてくれた。

「悪いな、突然」

「いいっていいって、まぁ上がれよ」

相変わらずの綺麗な部屋だ。

「飯は?」

「いや、まだ」

「じゃ、作ってやるよ」

「いや、寿司でも取ろうぜ。どうせカレーだろう」

「ギョ」

殆どあの頃と変わっていない。

「ほんとに変わってないな」

「まぁな。で、話って何だ?」

「いや、その。あの時から俺は女が怖くてさ。ずっと避けてきて」

「ほんっとに!ビビリーキングだ」

「はは。で、お前にも言われてたようにやっぱり・・・変わってさ」

「だろうだろう」

「で、合コンとかはあるんだけど、どうも俺の中の出会いってそんなんじゃなくてさ、なんていうんだ」

「お見合いとか?」

「・・・それは違う気がするな・・・」

「紹介とか?」

「・・・そう、それ!仲良い友達と、その彼女と、その友達で飲む!みたいな」

「大人数が苦手なのは変わらないんだなあ」

「ほっとけ」

「紹介ねぇ・・・」

「で、お前は彼女とか作らなそうだしさ・・・誰かそういう友達を紹介してくれないか!」

「俺じゃ役不足かよ!ひどいなそれ」

「お前に彼女とか・・・想像できん!」

「あのなぁ・・・」

そういうと友人はニヤついた。

「うわ、お前まさか!」

友人はアゴで壁を示した。

その方向に目をやると小さなコルクボード。

「おいおいおいおい」

近づいてみると幸せそうな友人と、その彼女?

「え・・・これ!」

「なははははは」

友人の顔は緩みっぱなしだ。

そこに移っていたのは幸せいっぱいに気持ち悪く笑う友人と、

忘れもしない・・・・・・・・・・・・・・・・・・







紐で吊るしてあったコルクボードが落ちた。





カラン




テーブルの上のグラスの氷が音を立てた。


二人は相変わらず黙っていた。

男は腕から、女は掌で互いの鼓動を確認しているだけだった。


だいぶ時間が経った気がする。

1時間か、2時間か・・・5時間か・・・

あるいはまだ30分くらいだろうか。


ふと、男は手を動かす。

何かをしている男に女は気がつく。

「また・・・タバコ?」

返事も無い。

男の手はタバコを見つけられないでいる。

女が男の腕に爪を立て強くしがみ付いた。

「つっ・・・」

だがそれすら気にしないようにと、男は捜し続けやがて一本を加え枕の隣のライターを手に取る。

寝たまま火をつけタバコの先端に火が近づく瞬間、女の手が伸びて火の上から押さえつけライターを止めた。

その手からは血が垂れてくる。

その瞬間、男は女を振り払いベッドの上から嘔吐した。

女は笑い出した。

緑の胃液を出し終え、息を整えた男はタバコを投げ捨て横たわる女を見た。

笑い続けて息が持っていない。なのに笑い続けている。

目の焦点も合っていない。口からは唾液が垂れている。

男は女を抱きしめた。


抱きしめられた女は静かになった。

醜い顔だが、静かになった。



また静かな時間が動き出した。




カズコはじっと外を睨み付けている。

彼氏である上司を裏切ったのだ。

仕事もやりにくくなるだろう。



むしろ、職場は嫌いだったし次の男もすぐ見つかるだろうし・・・

カズコの頭の中ではその答えを正当化する理由を懸命に探していた。


大体、自分に見合う男がいないのが悪い。


結局そこに辿り着いた。

そうだ。

まだ諦めるもんか。


立ち上がるとカズコは金も払わずに出て行った。

オジサンはそれに気付いたが、あまりにも自然に出て行く様子と

これから始まる会社帰りの人を迎える準備に忙しく、変人のタダ飲みを見逃した。



あそこから出て行こう。

思い入れの一つも無い上司のアパートに帰ると真っ先に風呂に入る。

出るときにはシャンプーも石鹸も何もかも散らかした。

もう怒りしか浮かんでこない。


濡れたまま服を着て自分の物だけ大きなカバンに詰めると、再び部屋の中へ戻り

テレビを割り冷蔵庫を倒し本棚を倒し、とりあえず目に映るものは全て薙ぎ倒した。

自分の荷物を拾い上げ玄関を開けると、知らない女性がこちらを見てドギマギしている。

血走った目で睨み付けながらアパートを後にする。


思い荷物を抱えたまま、宛もなく歩き続ける。


やがて体力の限界が来て歩道に座り込んだ。

「私は・・・何をしてるんだ・・・」

友人に連絡してみようと携帯を出すが、昼間の長電話のせいか電池が切れている。

「最悪だ・・・」


「なんでこんなになっちゃったんだろう」



その場でうずくまったままカズコは寝てしまった。



恋人と別れるなんて、何度も経験してきた。

どいつもこいつも、つまんない男ばっかりで。

金も無いし時間も無いし。

私は完璧なのに。

何で私に見合う男が現れないのか。


世界は狂っている。


なんであの男と別れたくらいで、こんなになっちゃってるのか。

そう、世界が狂ってるから。


・・・


今までだって何十人とも別れてきたのにな・・・

振ってやってきたんだ。


あぁ。今回は私が振られたんだ。

私が?

あんな男に?


ありえないし。


じゃあ何で私は泣いているんだ?


こんな世の中はありえないよ。


と、カズコは目を覚ました。

辺りはすっかり真っ暗だった。

周囲には人ごみが出来ていたが特に声を掛けてくる人もいなかった。

「何なんだよウザイな!!」

そう言って立ち上がり荷物を・・・探したが見当たらない。

「わたしの!・・・・」

声が出てこない。

この状況をみっともないと感じた。

完璧な私が。ありえない。

何より、この見物客の目。

暗がりでハッキリとは分からないが、バカにしたような、哀れむような目。

耐えられないカズコは見物客を掻き分けて走り出した。


と、ヒールが音を立てて折れ、真正面から倒れこんだ。

ありえない。

ほんとにこの世界は狂ってる。

見物客はきっと、着いて来ている。

笑いながら、哀れみながら。


カズコは発狂した。


その時、年配の男性がカズコにそっと毛布を掛けワザとらしく大声で言った。

「こんなとこにいたのか。ダメじゃないか、勝手に~」

そういうとカズコを抱きかかえどこかへ連れて行った。


なに、このジジイ。誘拐?

ていうか、お姫様抱っことか、マジでありえないし。

もう、どうでもいいわ。



カラン


カズコは部屋に連れて来られた。

「すまないな、無理矢理で。大変だったな。」

なんだか香ばしい匂いがする。

「おい、大丈夫か?」

「どこよここ。ていうかアンタ何?」

「昼間にアンタがコーヒー飲みに来た店だよ。

 余計なお世話だったかな。助けてやったつもりなんだが」

「は?ほんとウザイし」


そう言うと靴を両手に持ち店から出ていった。


とりあえず歩いた。


すれ違う人全てに笑われてる気がした。

歯を食いしばり、脹脛もパンパンになっていたがそれでも歩き続けた。

狂ってる狂ってる。

狂ってる狂ってる狂ってる・・・。


人にぶつかりながら、スーツ着た人、女子高生の集団にぶつかりながらも

呪文のように・・・言いながら歩き続けた。

「マジ痛かったんだけどー」

「何かキモくない?」

「裸足だし」

「ねぇ、今日はアイツにしない?」

「えぇ、裸足だよ?持ってるかな」

「服とか良いの着てるじゃん。持ってるって」

「じゃあ決定ー」


狂ってる狂ってる狂ってる・・・。


髪の毛を引っ張られた。

「っ痛!」

「ちょっとこっち来なよ、ババア」

「アンタ、そこ見張っといて」

「はいは~い」

そういって4,5人の女子高生は路地裏へとカズコを引っ張っていった。

「なんかまだブツブツ言ってるし、マジキモイんですけど」

「なんか抵抗しないからサイフ探そう」

皆で探すがサイフは見つからなかった。

「コイツ、持ってないしー」

「ありえなくね?」

「持ってねぇからオシオキじゃね」

「いえーぃ」

すると、カズコの衣類を剥がし、暴行を加えた。

殴る・蹴るだけでなく、一人がタバコを顔に押し付けてきた。



狂ってる狂ってる・・・。



「あぁ、誰だよ服投げたのー。汚れたしー」

「貰い物なんだしガマンしなよ」

「うけるー」


気息奄々とするカズコを他所に女子高生達は去っていった。


立ち上がろうにも立ち上がれない。

ただ狂ってると言うしか出来なかった。

3時間後にはゴミ捨てに来たどこかの店員に発見され、救急車を呼んでもらえた。


「狂ってる・・・」

救急隊員は、

「そうだねぇ。狂ってるよねぇ」

と鼻で笑い片手で携帯をいじりながら返事を返してくれた。

カズコの携帯だ。

その様子に激昂しながら・・・。





激しく激昂しながら・・・・





ダイジロウはコルクボードを拾い上げた。

そう、忘れもしない、奇異の目で見られたあの女子大生?だ。

「貴様ーーー!」

相変わらずの緩んだ笑顔の友人に対し首を締めた。

「どうなってるんだー!お前に彼女とかー!どうやって付き合ったー!

 いつからー!?何でだー!!」

「やめろっての・・!話すってば!・・」

「・・ふー!!!!」

「実はな・・・・」


時折思い出したように、友人は天井でも壁でもなく、本人にだけは見えているであろう

ハートを追いかけながら、話始めた。

ゴキブリ退治を頼まれた事。

酔っ払って間違って部屋に入ってきた事。

鍋を貸した事。

隣で男女の大喧嘩してるのを聞いた事。

そこに付け入ってしまった事。

もう、2,3年になるという事。


「こんにゃろうーー!」

再び首を絞めるダイジロウ。

いつも自分の幸せな事は、話してこない。

しかも厭らしくない。

ダイジロウはなんて良い親友を持ったのだと。改めて感動していた。

同時に、ダイジロウと友人・奇異の子とその友人で遊べるんじゃないか!?

と、期待が膨らんでいった。

「というわけでさ、俺だって紹介出来るんだぜー!」

「おお・・・おぉ・・・」

生唾を飲み込むダイジロウ。

「で、いつ頃が都合良いんだ?お前は」

「ちょちょちょっと待ってくれ!そんな急に」

「はは。まぁこれでお前も女嫌いが直れば言う事ねぇなぁ」


ダイジロウはコタツに蹲り、必死にスケジュールを思い出していた・・・。

同時にいつだってヒマだった事を思い出していた。

「いつでもいいぜ!来週とか!」

「だと思ったよ。セッティングはしてやるから、鼻伸ばして待ってな!」

「うはーーーー」


と、再びコタツに潜り込む。


と、ダイジロウはハっとした。

「てことは、彼女と同棲してんのか?」

「まぁ~そんなもんだな」

「くはーー!」

「隣同士だしさ。まぁほぼ毎日一緒に寝てるから」

「こんにゃろうーー!」

また首を絞めてやろうと重いコタツから這い出た。


「と・・・・・」

「ん?」

「隣同士って・・・?どういうことだ?」

「あ?忘れたのかよ。お前も見た事あるだろ?隣からそいつ出てきたの」

「あぁ。そうだけど・・・でも、さっきここ入る前に俺が見たのは変なオヤジだぞ?」

「あぁ?こっちだぞ?」

と、顎で壁を指した。

「あぁ・・・」

と、アパート全体の間取りを考えて、記憶を辿る。

「いや、やっぱりそこからオヤジ出てきたって!」

「まさか・・・オヤジさんが来てるのかな。でも聞いてないぞ、そんな事・・・」

「まぁ、それくらいは言わなくてもな・・・・」

「そうだよ。変な事言うなよな~。マジでビビルじゃないか」

「わりいわりい」

「最近、ここらで多いんだよ。強盗がさ。しかも女の一人暮らしばっか狙った強盗」

「ほ~。怖いな・・・」

「まぁウチに来たら逆にボコボコにしてやるけどな」

「はっはは」

笑いながらもダイジロウは変なオヤジを思い返していた。

深々とニット帽を被っていたし、暗がりだったし・・・

・・・・

緑っぽいコートに・・・・

ピンクのカバン・・・

ピンク?60近いオヤジが?何で俺を見てびびった?


「おい!行くぞ」

「は?」

俺の慌てた様子に呆気に取られながらも付いてきているようだった。


玄関はしまっており、電気は点いていない。

「開けるぞ」

「開かねーよ。アイツはいつも鍵掛けまくるからな・・・。普通だけど」


ダイジロウが取手に手をやると普通に開いてしまった。

「え・・・」

二人は顔を合わせた。

瞬間、友人は急ぎ部屋へ入っていった。


中の構造は友人の部屋と一緒だった。良い香りがする・・・気がした。


電気が点く。


友人は震えだした。

肩越しに覗くと、奇異な目は閉じられていて黄色いパジャマであろう服には

赤黒い模様が多数付いていた。動いている気配は全く無かった。


ダイジロウは体全体が震えだしたのが分かった。

友人は固まったままでいる。

友人を見たとき、不思議と冷静になれた。


「と、とにかく救急車だ!」

慌ててポケットを探すが無い。友人の部屋だ。

裸足のまま友人の部屋へ行き携帯を取り119に掛ける。


中々出ない。1時間くらい待たされてるような気がした。

「はい、こちら・・・・・・」


テレビでは芸人が大笑いしていた。


住所も知っていたし近くには大きなスーパーもあり場所も詳しく話せた。

急いで隣の部屋へ行くと友人は奇異の・・・友人の彼女を揺さぶって何かを叫んでいた。


目の奥が熱くなってきたのが分かったが、そこには居てはいけないような気がして

裸足のままで外へ飛び出した。


友人の叫び声に反応して近隣の人がゾロゾロと出てくる。


「やめろ。見るな。出てこないでくれ・・・・」

言葉にはなっていなかった。


「嘘だろ・・・」


震えが止まらなくなっていた。

吐き気がする。

幻聴も聞こえる。

頭を抱え座り込んでしまった。


やがて赤い光が偉そうにやってきて白い人間達が何かを喋っている。

タンカを持って人だかりの中へ入っていった。


ボンヤリとその光景を見ていた。


「意識が無い!」

「急げ!」

「タンカだタンカ!もう一つ!!」

「早く呼べ!!!」


ダイジロウには何も感じる事が出来なかった。

ただ、地面が冷たくて尻が冷たい。赤い光。それだけだった。



聞き取りづらいマイクで叫ぶ声。五月蝿いサイレン。

赤い光は遠ざかっていった。


どれだけ道端に座っていたのだろうか。


気がついたときには警官に何かを聞かれていた。

多分、ちゃんと会話は出来てただろうし、歩くことは出来ていた。


奇異の目の子の部屋に連れてこられた。

だいぶ過激な部屋の模様だな。


友人はどこにいるんだ・・・。


思い出そうとしても、よく分からない。

自分は、ダイジロウは警官に何かに答えているが、

俺は何を言ってるか分からない。

友人の首を絞めた事と奇異の目で見られた事だけは鮮明に覚えているのに。


呆然としたまま、パトカーに乗りどこかへ連れていかれた。

夜とはいえ見覚えのある景色。

そりゃそうだ。

さっき歩いてここを通ったんだ。


病院へ着いた時には歩けなくなっていた。

警官に肩を担がれ、ソファに座らされた。


視線がずっと動かなかった。




どれくらい時間が経っただろうか。

外が明るくなってきている。

誰かが外から入ってきている。大勢だ。


その中の一人に殴られた気がした。


オバサンの匂いだ。

殴られた所が熱くなってくる。


ずっと視線は動かなかった。

地面に佇む、誰かの髪の毛をずっと見ていた。



段々と賑やかになってきて病院の業務が始まった。


警官に何かを言われたり、看護士に何かを言われたりしたが全く体に力が入らなかった。


人が移動する際に、地面の髪の毛は揺れ動いたが、上手い事ずっと視界に入れられる範囲に

留まっていた。


再び人の声が少なくなっていく。


ダイジロウはソファの上に倒れこんでしまった。




名前も分からん虫の鳴く声がする。



泣きたいのはこっちだ・・・。




「・・さーん。・・さーん」

酷い頭痛だ。目も痛い。

ダイジロウはベッドの上にいた。


「自分の名前は言えますかー?」


「あぁ・・はい」


「言ってみて下さーい」


「ダイジロウ・・・」


「うん。大丈夫ですねー。先生呼んできますのでちょっと待ってて下さいねー」


「なんだかウザイ看護士だな・・・」

ベッドに倒れこんで明るい窓を見た。

視界が開けてくる。

「何してるんだ俺は!!」

体を起こして当たりを見回す。

ベッドの上の年寄りたちがアタフタした様子でコチラを見ている。

軽く会釈をして自分の携帯に気付く。

開いてみると着信有り13件。メールの印も付いている。

着信履歴を見てみると全部会社からだった。

「やっべぇ。遅刻じゃないか・・・」

時計は11時を過ぎている。

電話を掛けようと靴を履き立とうとするとさっきのウザイ看護士が現れた。

後ろには胡散臭い医者がいる。

「あぁ~。いいから座って座って」

胡散臭いヤツに両腕で押さえつけられてベッドに座り込んだ。

やけに小さい声で話しかけられ、目に光を当てられた。

「うん。問題ないでしょう。じゃ後は宜しく」

そういうと胡散臭いのは去っていった。

「じゃアナタを待っている人がいるのでコチラへー」

「はぁ」

部屋の外にいたのは友人と奇異の目の女。


では無く、警官ぽい人だった。

段々と意識が沈んでいくのが分かった。

色々と思い出してきた。


友人の笑顔。奇異の目。冷たい地面。髪の毛。

病院内の使われてなさそうな会議室なる部屋に連れて行かれ、

アレコレ聞かされた。


今朝に、奇異の目のカードを使ったらしく犯人はもう逮捕された事。

奇異の目はこの世には居ないこと。

そして友人も自身で喉を裂き、一緒に行ったこと。


他にも色々聞かれたりしたが、もうそれ以外は頭に入らなかった。

友人の気持ち悪い笑顔が目に浮かぶ。

奇異の目で見られた事を思い出す。

二人の写真は幸せそうだったなと、思い出す。

ダイジロウはまた頭を抱え込んで机に蹲ってしまった。


警官ぽい人に肩を叩かれ、そいつは出て行った。


また視界が動かなくなりそうだった。


しかし、本当にこれは現実か?


そう疑うしか無かった。

気持ちを押し殺すように、会社に連絡しとくか。

と、会議室を出て初めて見るであろう病棟を歩き出した。

病室はどこも満室のようだ。

これだけ病人がいれば、人が死ぬなんて、そんなに大事じゃないんだ・・・

そう自分に言い聞かせるようにした。


病室の様子や分かるはずもない患者の名前の入ったプレートを見ながら

階段を探している内に妙に馴染んだ名前が目に入った。

(○○ カズコ)


「・・・あいつが?・・・まさかね」


と、言いつつ室内を覗くと紛れも無いカズコだった。

窓の外を眺めるその綺麗な横顔は・・・

忘れもしない。

初めて付き合った相手。

初めての相手。

ダイジロウを振った相手。


ダイジロウは見入っていた。

具体的な理由も告げずに別れを言われた・・・。

怒りと。

見たことも無い沈んだ表情と・・・。


ダイジロウはカズコの元へ歩いていた。

と、手前の患者の相手をしていた看護師に止められた。

「ちょっと。もしかして○○さんのお知り合いですか?」

「・・・はい」

「良かったぁ。あの子入院してきてから誰とも話そうとしないのよ。お友達が来てくれたら

 喜んでくれるかもね。ちょっと○○さん!○○さん!」

名前を呼ばれても振り向こうともしない。

「はぁ」

溜息をついてダイジロウを見ながら手で誘導した。



カズコに見えるように視界を塞いだ。

カズコの目はダイジロウの顔を見るわけでもなくずっと腹のあたりを見ている。


ダイジロウは腰を落として目線を合わせた。


カズコの目は見る見る見開いていきダイジロウの顔全体を見回した。

ダイジロウもカズコの顔を見ていた。顔半分は包帯だらけだ。

(まるでミイラ男。女か。)

患者衣から出ている手の甲や指も包帯だらけだった。

「どうしたんだ?」

ダイジロウが聞くと、カズコはぐっと涙を堪えているように見えた。

ボソっと何かを呟いたカズコだったが次の瞬間にはシーツに隠れるように伏せた。


不思議な顔で看護士を見ると、病室の外へと手で誘導された。



再び会議室的な部屋へ戻ってきた。


そこで、カズコが運ばれてきた経緯と怪我の具合。

精神的にもダメージを追っている可能性が非常に高いと聞かされた。

また、ダイジロウが来るまでは一切、表情が変わることも無かった事と、

カズコの家族に一切連絡が取れない事を伝えられた。


なんだか死人と同じじゃないか・・・。


ダイジロウが言ったのか看護士が言ったのか。

恐らくダイジロウが言ったのだろうが、友人や奇異の目の子を考えると

カズコの病状なんて何でも無いじゃないか。そう思えた。


そう結論を出すと、ダイジロウは何を考える風も無く会議室を出て病院を出て

タクシーを拾い自宅へと向った。


友人のアパートと同じくらい古いアパートの自室の前に来て愕然とした。

鍵が無いのだ。


・・・辿りたくない記憶を思い浮かべると友人の部屋。コタツの横。汚いソファの隣・・・

部屋の隅。俺専用の荷物置き場になっていた所に鍵・・・カバンを置いたのを思い出した。



戻れるわけが無い。


携帯も電池が残り1つ。会社のバカ共が・・・。

アパートの合鍵は実家に預けてある。


ダイジロウは実家へ電話した。


「はい。○○です」

「あぁ、俺だけど・・・」

「なんだ、ダイか。どうした」

「俺のアパ」

音が切れた。

画面を見るとクリリンがカワイくGOODBAYと手を振っている。


「はぁ」

サイフを見ると1万3千円と50円。カードもあるが蓄えなんか無い。

あったとしても、2,3千円程度だろう。



玄関を背に蹲り途方に暮れた。

大家さんでも来てくれれば・・・・とは思ったが大家がアパート見に来るなんて記憶が無い。

誰かに電話を借りるか・・・そして実家から鍵を持ってきてもらおう。


もう休みたい。グッスリ休みたい。


そう考え、立ち上がった。

気が付けばもう日が暮れてきている。



名前も分からん虫の鳴き声がする。



だから泣きたいのは・・・・




ふと、友人の顔が浮かんだ。不細工な笑顔で笑っている。

奇異の目もその横に浮かんでいる。

さらにカズコの痛々しい姿も同時に浮かんだ。


「は。俺だけグッスリ休むってか。そうはいかねぇよなぁ」

「カズコもまだ死んでないってな・・・。でも家族に連絡も付かず精神的にも・・・」


「みんな死んだんだな」


「俺も行くよ・・・」


虚ろな目でダイジロウは歩き出す。

「いつもお前に助けてもらってたもんなぁ」

「アンタのその目は人を殺せるよ」

「なんで俺を振ったんだか、そこんとこよーく聞かせてもらおうじゃないか」

「ははは・・・」


街ではクリスマスソングが溢れ煌びやかなネオンが目に痛かった。


「クリスマスだな~」

「お前らも楽しみにしてたんだろうなぁ」


周りはカップルだらけ。あるいは同性のグループ。

一人で歩いてる奴なんて数えるくらいしかいなかった。


「あっはははーうけるー」

「ねぇ次はもっと持ってそうな奴にしようよー」

「さんせーぃ」


女子高生グループも大はしゃぎだ。


「ちょーありがとう!」

宝石店から出てきたカップル。

「私、こんなに嬉しいクリスマスなら死んでもいいよ!」

「はっはははー」



トナカイのきぐるみを来た奴にすれ違い様に肩を叩かれた。

「めりーくりすまーーーす!」




ダイジロウは人ごみを避けるように歩みを変えた。


妙に冷え込んでくる。

雪でも降るんじゃないだろうか・・・。



どれくらい歩いたのだろうか。

ダイジロウが足を止めたのは病院の中。カズコのいたベッドの前だった。

そっとカーテンをめくると、カズコはまた外を見ていた。

傷の少ない右側の目の周りがヒクヒクしている。


痛々しい姿に半笑いしながらカズコの顔の目の前にダイジロウは立った。

今度はカズコの目線はダイジロウの顔へと辿り着いた。


「外へ行こう」

そう手を出した。

カズコの手は簡単にダイジロウの手の上に乗っかった。


手を繋いだまま、病院を抜け出す。

幸い誰にも見つからなかった。

クリスマスだし、看護士だって浮かれるよな。


「さて、どうするか」




「・・・どこか行きたいトコあるか?」


「狂ってる」


「そうか。そうだな」


適当に手を引いて歩き出す。



「寒いな・・・」


「狂ってる」


「お前、それしか言えないのか?」


「狂ってる」


「あぁ、俺が悪かったよ」


「・・・狂ってる」



ダイジロウは片手でタバコを取り出し火を付けた。

一吸いして思い出したように

「お前、タバコ嫌いだったっけな」

と聞くと、何も答えなかった。

「まぁいいか」


「そういえば、何で俺は振られたんだ?」

「狂ってる」

「そうですか・・・」

「・・・・」



雪が降ってきた。


「お、ホワイトクリスマスってヤツだな」

「狂ってる」


寒さで手が悴んできた。


「もうダメだな。手が冷てぇ」

「・・狂ってる」



「死ぬと、人間はどうなるのかな・・・」

「・・・狂ってる」

「お前は正常に戻るかもな」

「・・・狂ってる」

「そうか」


「ん」


「お前、手が震えてるじゃないか」

「・・・・」

カズコの顔色は青く変色していた。


「そりゃそうか。患者衣一枚だもんな」

「・・・・」


ダイジロウはタバコを手前に落とし、足で火を消した。

すると、視界から手のひらが迫ってきた。

「狂ってる」


「ってぇ・・・」



ダイジロウはそのままジャケットを脱ぎカズコにかけた。

「狂ってる」


「はいはい」

再び手を引いて二人は歩き出す。




「こりゃ、寒いな・・・。ごめんな」

「・・・狂ってる」



「なぁ、死ぬって何だろうな」

「狂ってる」

「じゃ生きるって何だろうな」

「・・・」


「お」

カズコは俯いてそのまま顔を上げなかった。

「寒いもんなぁ」


「生きる」


「ん?」


「生きる」


「あぁ。いい言葉だよな。生きたいと思ってる内はさ・・・」


「・・・狂ってる」




「生きてる内に温まろうか」


ダイジロウは手を引いたままカズコと共に建物の中へ入っていった。



幸い部屋は一つだけ空いていた。

「クリスマスなのにねぇ。不景気っていやだねぇー」

「狂ってる」


部屋はとても暖かかった。

「ふえーあったけぇなー・・・」

「暖かい」


「お」

とカズコの顔を見ると鼻水が垂れている。


ダイジロウは笑いを堪えながらティッシュを持って拭き取った。

カズコは自分の足でベッドまで歩き出した。


ダイジロウはカーテンを開けた。

「うおお。マジか。海が見えるよ。どこまで歩いてきたんだ俺達は・・・」


振り返るとカズコは横になっていた。


具合でも悪いのだろうか・・・。

「大丈夫か?・・・いや・・・でも・・・いいか」


ダイジロウは服を脱ぎ風呂場へ向った。

(※サービスショット無し)


「ぷはー」


シャワーを浴びながら目を閉じていると、そのまま寝てしまいそうだった。


極楽・・・ではあったがカズコが気になったダイジロウはすぐにシャワーを止めた。



「まだ迷ってるのか・・・俺は・・・」


ベッドの横で立ち尽くす。




すると、ダイジロウに気付いたカズコは、両手を差し出した。


ダイジロウはカズコの中へ入っていった。


「お前、精神異常とか・・・無いんじゃ・・・ないか!?」

「暖かい」

「・・・・」

「生きてるの」


「そうだな」

途中で顔に巻かれていた包帯が解けた。



所々皮膚が剥がれ目の下には明らかにタバコだと分かる火傷があった。



・・・言葉も出なかった。


傷という傷を全て嘗め回し、心からカズコを抱きしめた。




目を閉じれば友人と奇異の顔が浮かんでくる。

開ければ・・・。








メリー・クリスマス



ごめんなさいな。

結局会社では終わらず家に持ち帰ってww

しかも、終わってみれば長いや長いwwwww


一応、かっこつけてシーンとか時系列とかバラバラにしながら・・・

しかも取って付けた様なアドリブONLYな作品w

あと、フィクションです。よ。。。


でわwメリークスマス♪
コメント
この記事へのコメント
オイオイオイ・・・w
私が絵本の翻訳家志望なの知ってたっけか?w

勉強のためと言うか、文章を上手く書く勉強の一つとして携帯小説など書いちゃったりしてるのだが・・・

何で私より上手なんだよwww

やはり現役引退の私には無理なのかにぃ・・w

2010/12/27(月) 09:12 | URL | るなぴょん #iL.3UmOo[ 編集]
>るナ

コルム復帰は程ほどにw
というか私は殆どINしておりませんので悪しからず!

携帯にはアッチの名前のほうを平仮名で登録してたのでスルーされていた模様w

翻訳家志望なのは聞いた気もするけど、どうだろw

と、これを上手というのはありがたく受け止めておきましょう!!

あと人間の華は咲かそうと思えばいつでも咲くものかと!諦めなければずっと咲いてるのよ!
2010/12/29(水) 06:02 | URL | まるきら #-[ 編集]
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