そろそろ本気で終わりが見えてきたので少しでも繋がりを大切にしようと願う性騎士のブログです!
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なんとなく、適当な妄想ワールドを広げていると色々と出てくる。

具体的にイメージ出来てるのは↓くらい。

①ルディロス大学付属高等学校2年生カテューン(略称:ルデかつん)
・周囲の人間達はつまらない。というか人生そのものがつまらない。
 平凡に生きてきたカテゥーンはもう高校2年生。
 特別な出会いがあるわけではない。部活にも興味が無い。
 しかし、犬の糞を踏みつけた時、灰色の世界は色を変え
 昼間っから花畑が見えるようになる。さぁ病院へ行こうw

②女王メアの悪魔城
・西暦3000年くらい。増えすぎた人類は資源を食い尽くし
 心は荒み、気候は荒れ果て、地球は滅亡の時を迎えようとしている。
 そんな世界でも人々は空腹に耐え、木を植え、必死に生きている。
 しかし、その人類に対し宣戦布告を放った一人の魔女がいた。
 城を構えて一日千殺を繰り返す魔女に、人類が立ち向かう。

③課長への道
・生まれたときにデゾンと名づけられた子。
 初めて覚えた言葉が課長なので、親はどっかの会社で
 課長になれるようにその子を育ててきた。
 適当に大学を卒業し、何かを販売してる会社に就職したデゾンは
 辛いイジメに耐え、課長の肩書きを手に入れるため奮闘していく。

④レムリンの不思議な魔法
・イダーの湖の近く、桟橋の上に子供が立っていた。
 朝日が昇ると同時に現れ、夜になると消えている。
 その子供は何故そこに立っているのか。
 やがてイダーで人が消える事件が発生した。
 同時に子供の姿を見る事が出来なくなった。
 好奇心いっぱいのレムリンは事件と消えた子供の関連について
 調査を始める。

⑤ラモンタ遺跡~テルミヌの鼓動~
・遺跡発掘家のテルミヌは、今日も地図を眺めている。
 これまでいくつもの遺跡を発掘し、先人達の伝えたかった事を
 現代に蘇えらせてきた。
 その繰り返しの中で、妙にひっかかる単語があった。
 ラモンタと呼ばれる遺跡がどこかにある。
 分かっているのはそれだけだが、存在した事を信じ
 愛刀:祇園を携え、探索へ向かうのであった。

もう、どうすればいいやら。

やっぱ投票かしら?

というか全部混ぜちゃおうかしら。

長編は難しそうなのでやっぱ短くいこうかしら。

というか、大筋考えただけでも満足な気もします。

①~⑤で掘り下げて聞いてみたいのあったら教えてくださいな。

でもなんか、自分にどんびきね。やめとこうかしらwww
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皆さんは、この世界に生を受け、どんな風景を見てきたでしょうか?

目が覚めて、部屋に朝日が入っている風景を見る?

玄関を開けたときにピーカンに降り注ぐ日の光を見る?

友達の顔を見る?

綺麗に雪化粧した山々を見る?

もし、この世に「色」という概念が無かったら、

どんな風に生きていくのでしょうか。

それは視覚の問題であって、そんなに大差ない生活を送るのかな?

でも待って。あなたが見ている色は本当に普通の色なの?

普通の色って何?

太陽光と、細胞・組織・染色体の問題?

何をもって普通の色を探せばいいのでしょうか。

やっぱり気分次第・・・かな?



~カトン~

最近、カーテン越しに入ってくる日の光がうざいと感じる。

ベッドの位置を変えなきゃと思っても、面倒臭いし、親に頼むのも面倒だ。

部屋に入られたくないし。

カトンは起きるなり部屋を見渡して深い溜息をついた。

何も変わらない一日がまた始まったのだ。

「かとん!ご飯よ!!!」

変わらない家族の声。

ドタドタとうるさく階段を下りていく弟の足音。

しばらくしてカトンは立ち上がりドアノブに手をかけた。

つもりだったがドアノブが見つからない。

引き戸だった。


いや、引き戸でもない。

扉がない?

ちょっと怖くなったが考えるのも面倒くさい。

するとドアが開かれた。

母親があけてくれた・・・らしい。

「いつまでボーっとしてんの!遅刻するわよ!!」

返事をするのも面倒くさい。

背を向ける。

カーテン越しに差して来た光が無い。

「まったくもう・・・」

母親が下の階へ向かう。

そういえば腹減ったな・・・

昨日の・・・あれ・・・いつから飯食ってないんだっけ?

思い出すのも面倒くさい。

なんでこんな生活してるんだ、俺。

でもとりあえず高校くらいは出とくか。

とりあえずって何だ。

あーもー面倒くさい。

・・・・・・

まずは着替えるか。

制服はどこだろう?

俺の部屋にあるはずなんだけど・・・

ん。俺の机はどこだ?

そもそも机なんかあったっけ?

んん?さっきまで寝ていたベッドはどこだ?



カトンの視界には灰色一色の世界が広がっている。

全てが灰色で物と物の境界が分からない。

漫画のように線で区切られていれば判別出来るが

現実にそんな線は無い。

いつから灰色になったのか、カトンも分からない。



確かこのあたりに制服が、あ、まずはシャツか。

ズボンは・・・

まぁ適当でいいか。


体の感覚で着替え、感覚で1階へ降りていく。

いい匂いがする。卵焼きかな?

何かが視界の中で動いている。

あれが母親で、あの小さいのが弟か。

親父はまだ寝てるのかな。

灰色の家族の動きからダイニングテーブルの位置を把握し

自分の席に着く。

目の前にはいい匂いの卵焼きのような灰色の物。

色々テーブルの上に置いてあるのだろうが、

よくわからない。

何、と分かったところで特に何も感じない。

灰色の物を見ても食べたいと思わない。

でも卵焼きは好物だ。腹も減ったし、箸を手探りで探し

物に箸を伸ばすと、肘で液体の入ったコップを倒したらしい。

右足の指が冷たい。

母親のうるさい声が聞こえる。

弟もカトンを囃し立てる。

なんだか食事なんてどうでもよくなった。

席を立つと玄関のあった灰色の方向に歩き出す。

母親がまだ何か言っている。

玄関の段差で転んだ。

靴箱に体をぶつけて木が割れるような音がした。

見てみると灰色が広がっているだけ。

感覚で玄関の鍵を開け、ノブに手をかける。

玄関を開けると、奥行きのある灰色の世界が広がっている。

今日も変わらない世界だ。

日差しがない。

靴を履いてないが、そんなに慌てる事もないか。

母親がまだ何か言っている。

車の音が聞こえる。

道路の位置は分かっているし歩道もある。

今日も快晴。灰色だ。

まぁ、学校へ行こう。


家から学校までは近い。

大体500歩くらいだ。

灰色の世界を裸足で歩いていく。

信号の場所も覚えている。

なんとなく光のコントラストで赤信号かどうかも分かる。

はて。

赤ってどんな色だろう。

考えるのも面倒くさい。

自転車や車がカトンを追い越していく。


学校が近づいてきた。

どっかの部活が朝練をやっていて、叫ぶ声が聞こえてくる。

音からするとサッカー部か。

野球部の金属バットでボールを打つ音も聞こえる。

朝から大変だなぁ。こいつら。


正門へ着くと、パタっとカトンの歩みが止まった。

灰色一色の世界なのに、人の形の白い物があった。

人か?

髪が風で靡いている。女子か?

なんで白いんだ。

色は白で合ってるのか?

カトンは棒立ちになった。

この何も変わらない灰色の日々の中に白い女子が出てきた。

いや、まず人なのか?

白い物がカトンの方へ近づいてくる。

歩いているようだ。

白い物が言った。

「おはよう」

瞬間、カトンの前方から物凄い風が吹いてきた。

思わず屈んでしまった。

綺麗な声だった。

目を閉じても灰色のまま―――

だったはずのなにうっすらと明るい色が入ってくる。

ん、おかしい。

目を開けると白い世界に変わっていた。

恐ろしく世界が広く感じられる。

でも決して悪い色では無い。

さっきの白い物体は???

とても綺麗な声だった。

見渡してもどこにも白い人?が見えない。

当然だ。白い人だったんだから。

しかしいきなり白い世界になられても困る。

上も下もよく分からないし、本当に奥行きが無限大に感じられる。

思わず手を伸ばしヨタヨタ歩いた。

「どうしたの?」

声がする。

白い物体からちょっと離れてしまったようだ。

「あ、そこ危ない!!」

そう言われた瞬間、右足が何かを踏みつけた。

やわらかい感触。グニャっと何かを踏みつけた。

「あはははは。」

その瞬間、カトンの視界が色を取り戻した。


やっぱりウンコだった。

犬のか?出来立てホヤホヤで素足にはちょっときつかった。

思わず「ヒー」と叫んだ。

瞬間、その白い物体だった女子を見た。

小さな足、細い足、胸がでかい、くびれがない。

綺麗に整った顔立ちの女子だった。

カトンの心にライトニンが走った。

もう惚れていた。一目ぼれというヤツだろうか。

「大丈夫?」

笑いながら声をかけてくれるこの女子。

「ねえ、なんで私服なの?それに裸足で。」

はっと自分を見ると、ズボンは制服の灰色のスラックスだがジャケットは

赤と白のチェックのオシャレシャツだった。

白いYシャツのはずが真っ黒なチョイ悪オヤジの着てそうなシャツ。

「ヒー」

と奇妙な奇声を上げると、女子と目が合った。

不思議で心地良い間が合って今度は二人で笑った。

すると、チャイムが鳴った。

「あ、私いかないと!またね!」

「・・・また・・・」

女子は校舎へ向かって走っていった。

しばらく後姿を見送っていたが、ふと足元を見ると

ありがちだが、ハンカチを落としていったようだ。

【ひもぷり】と名前が書いてある。

ひもぷりっていうんだ、あの子・・・・

犬の糞は踏んづけたままだったが、そんな事に気が向かなかった。

それに素足で寒かったし、なま暖かいこの感じ、悪くない。



しばらくして、カトンはこう言った。

「ヒー」




ともあれ、カトンは色を取り戻した。

青い空、白く映える校舎、木々の緑、コンクリートの灰色。

なんだか、全てがまぶしく見える。

「綺麗だなぁ。」

思わずそんな事を言ってしまった。

綺麗・・・

空を見上げてさっきの女子を思い描いていた。

ところどころにある雲がその女子の顔に見えてきた。

「フフフ・・・」

あやしい薄ら笑いを浮かべるカトン。

まだ犬の糞を踏みつけていた。


気が付けば、登校する生徒の波がやってきた。

時計に目をやると8時10分だった。

ホームルームは8時30分から・・・

急いで着替えに戻ることにした。


久しぶりに走った。

風を切る音がなつかしい。とても心地いい。

スポーツ刈りで正解だった。


家に着くと玄関を開けてはっとした。

靴箱が割れている。

これはさっき転んだ時のやつかな・・・

「何してんのよ!」

母親に見つかった。

「着替えるんだよ!」

急いで自分の部屋に入ると、懐かしい感じがした。昔、

親に買ってもらった車のオモチャや、小学生の時に作った工作物が

やけに懐かしい。

急いで着替えると大変に事に気がついた。

茶色い染みだらけなのだ。

「ぐはああ!」

アレを踏んでいたのを忘れていた。

「さすがは出来立て、新鮮な匂いだぜ!」

急いで風呂場へ向かった。

8時22分。

まだ時間はある。1限には間に合うはず!

久々に色の付いた家を見ていて感動はするが、今は時間がない。

念入りにアレを洗い落としたカトンは靴下を履き玄関へ向かった。

母親が床を拭いている。

「すまねぇかあちゃん!」

今まではどうでもいいと思っていた授業だが、今は早く授業に

出たい、学校にいきたい、友達に会いたい。

ひもぷりに会いたい。会ってハンカチを渡したい。

色の付いた世界がとてもまぶしい。

その世界の中でカトンは高校生として、やるべき事を、

やれる事をやりたいと思った。

灰色時代はきっと今日のようにとんでもない格好で、裸足で、

学校へ行っていた。

異常者じゃないか。

適当に生きてると周りに迷惑をかけるだけだ。

それじゃあダメだ!!

さらに早く風を切り学校へ向かう。

校庭の時計は8時35分を指している。

ホームルームは間に合わなかったが1限には間に合うぞ。

教室へ付きドアを開けると、全員がこっちを見ている。

唖然としてカトンを見ている。

懐かしい友達の顔。担任の顔。担任の隣に・・・

ひもぷりがいた。

「何を遅れて来てボサっと突っ立てるんだ!席に着くんだ!」

担任のイモキンが口を尖らせる。

そそくさと席に着いた。

窓際の一番後ろ・・・から2番目。

中々、いい席だった。

またイモキンの声が聞こえる。

「じゃ改めて、今日からこのクラスで一緒に勉強するひもぷりさんだ。

 みんな、仲良くするんだ!じゃ、ひもぷりさん、挨拶するんだ!」

そう言われてひもぷりが一歩前に出た。

「イダー高校から来ましたひもぷりです。趣味は新しいお茶漬けの
 
 開発です。宜しくお願いします。」

クラス全員がどっと笑った。

「それじゃあひもぷりさんの席は、あの遅刻野郎の後ろだ!
 
 さっさと席に着くんだ!」

そうイモキンに言われたひもぷりはカトンの横を通り、席に着いた。

なんというめぐり合わせか。

カトンは緊張していた。

―やっぱこれ運命かな・・
―めっちゃかわいい・・・
―いい匂いだ・・・
―屁はできねーな・・・
―さっきのウ○コの匂い大丈夫かな・・・
―早くハンカチを渡さないと・・・

その後イモキンは何か言っていたが耳には入ってなかった。

イモキンが教室を出て行く。

とたんに、クラスの大多数がひもぷりの周りに集まってきた。

「ひもぷりさん宜しくね!!」
「イダーのどこに住んでたの!?」
「部活はどこに入るの!?」
「パンツの色は!?」
「お茶漬けって何!?」
「イモキンなんかむかつくでしょ!?」

なんだか可愛そうだが、これも転校生の宿命か。

居心地が悪く、トイレに行くことにした。

ハンカチはいつでも渡せるし、いいや。

トイレではテルミヌやシソ神がタバコを吸っていた。

こいつら朝からなんてやつだ。

と、いいつつ用を済ませると鏡を見て、はっとした。

俺ってこんな顔だったのか。

イイじゃないか・・・

時間を忘れて鏡に向き合うカトン。

自分の笑顔、クールな感じ、横顔を見ていた。

よし、1限終わったら話しかけよう。

教室へ戻るとチャイムがなった。

まだひもぷりの周りにクラスメイト達が群がっている。

すると、中央、一番前の席のボグレが一喝した。

「もう授業始まるぞ!みんな席に着くんだ!!」

ボグレはこのクラスの学級長で生徒会にも1年から属している。

ちょっと知性派な感じだが、とても話しやすいヤツだ。

いわゆるオールラウンドタイプだ。

そのボグレの一声で皆、自分の席に戻った。

ちらっとひもぷりを見ると、どこかに手を振っている。

もう友達が出来たのだろうか。

カトンも席に着くと同時に国語のラッシュ先生が入ってきた。

ラッシュ先生は教科書を殆ど使わない。

いつも何かの本の一部をコピーし、それを配り、漢字や文法を

教えてくれる変わった先生である。それでいて、学ぶポイントが教科書と

リンクしており、いつも驚かされる。

今日のコピーは、日本の四季についてだった。

今までは灰色だったのでさっぱりだったが、

久しぶりに色の付いたコピーを見て灰色になる前と変わっておらず感動した。

しかし、今はそれどころではないのだ。

ひもぷりに何て声をかけようか、屁はしないだろうか、

腹は鳴らないだろうか、ハンカチをいつ渡そうか、

など、ぼけーっと考えてしまった。

窓越しに青い空を見つめる。

やっぱ空って綺麗だよなぁ・・・

ふと、窓に反射で見える前の席の冬時雨の横顔が見えた。

!!

これは、俺もひもぷりに見られているのではないか!!!?

とっさにさっき練習した笑顔を作った。

いや、いかん。授業中だ。クールだ!

すぐさま顔を引き締めた。

これからのスクールライフはバラ色になりそうだ・・・

一生懸命生きて、勉強して、ひもぷりと一緒に登下校・・・

思わず顔がにやけてくる・・・

色の付いたこの素晴らしい世界。

がんばらなくては!!!



その時、背中をシャーペンか何かで突かれる感触がした。

これまたさっき練習した横顔を見せると

小さな声でひもぷりがささやく。

「着替えてきたんだ。足大丈夫だった??大変だったねえ」

カトンは無言でうなずく。

「席も近いし、これからは宜しくね!」




カトンの視界はピンクになった。


「ひもぷりって呼んでいいからね―


もっとピンクになった。


ふと見ると、ひもぷりの左の薬指には指輪があった。


「君はウンチ君でいいのかな?」





カトンの視界は灰色を取り戻した―――
~遠い未来の適当なお話~

超寿命化が進み人口が増え続け、CO2削減に失敗した人類。

各国が資源の奪い合いを行い、核が世界中を飛び回っていた。

陸地が形を変え続け、世界地図は存在価値がなくなった。


それから300年・・・


やがて空は黒い雲で覆われ、人類は滅亡の時を迎えようとしている。


そんな中でも生き残った人間は木や土を食べ、地球を美化すべく

力を合わせて生きていた。


とある集落。

他に集落があるかは分からない。

もしかしたら最後の生き残りかもしれない。

言葉はあれど石器時代のような生活をしている我々の子孫達。

100人程の人間が集まって暮らしていた。


今日も男達は灰色の森へ、狩りへ出かけていく。

名前も分からない動物を捕らえ、皮を剥ぎ・肉を切り集落へ持って帰る。

女達はそれらを加工し、衣類や食料として使った。

頻繁に食中毒を起こすが、抗う術はなかった。

それでも必死で生きるしかないのだった。


とある日、女王を名乗る女の声が世界中に響いた。

良い声だった。

あwwいやいやw

恐ろしい事を言っていた。


~もう希望は捨てて無に帰ろう。辛い思いはしなくていい。

 毎日、息をしてる人を殺していきます。私は女王メアです~


良い声だった。

あwwいやいやw

とんでもない事を言っている。


集落の連中は特に気にしていなかった。



翌日、集落のリーダー格であるカイエンが死んでいた。

胴にぽっかりと穴を開けて倒れていたのだ。手には剣を持っている。

集落の人々は落胆した。


本当に女王メアがやったのだろうか。

だが、集落で一番の剣の腕を持つカイエンである。

人間ではまずカイエンを殺すことは不可能である。

質素ながらカイエンの葬儀の準備をするも、

良い声の・・・甲高い笑い声と共に雷が落ち

カイエンの亡骸を燃やした。

集落は静まり返っていった。


翌日、朝から集落は騒がしかった。

集落の入り口にある見張り台から、城が見えるという。

話を聞きつけたタマ(22歳オス)は、見張り台へ登った。

ピンクな感じのゴージャスな感じの悪趣味な城が建っていた。

昨日、タマは見張り役だった。

1km程先の高台は、その裏からうっすらと見える太陽を出し

その太陽を見るのが、タマは好きだった。

昨日も高台を見てうっとりしていたのだ。

なのに、今は高台の上に変な城が建っている。

「なんなんだ?」

集落の人々は口々に騒いでいた。

しかし騒いだところで何も分からない。


タマはずっと城を見ていた。

すると、城から何かの影が飛び出した。

と、一瞬でタマの隣を横切った。

振り返ると、集落が火の海になっていた。

黒い影を目で追ったがもう見えなかった。

一体なんだったんだ・・・

しばらく呆然としていたが、それどころではない。

タマは慌てて消火活動に参加した。




人が沢山燃えた。

マギばあさんや、スローボのおっさんも燃えた。

異様な臭いと光景に生き残った数十人は身を寄せ合って

ただただ震えた。



翌朝、タマは数人の仲間と近くの湖に浸かっていた。

体に染み付いた臭いを消したかった。

集落へ帰る途中、タマは昨日の城から出てきた影を思い出していた。

あの影は女王メアなのではないか・・・

カイエンを殺したのも女王メアではないだろうか・・・



集落へ着いた時、タマは特に親しい仲間を隠れ家に集めて話しを始めた。

洞穴に10畳程の布を敷いただけの粗末な隠れ家だが、

狩りのない時は、タマ達はここに集まって夢などを語った。

城から出てきた影について話すと、レーメン(24歳オス)が言った。

「城に行ってみよう!」

不安はあったが、確かに調べる価値はありそうだった。

他の仲間も同意してくれた。

最年長のボボが「道具を用意してくるよ」と、

駆け足で去っていった。

ちょっと悔しいんだけど、ボボが歩くと鈴の音がする。

やがて鈴の音は聞こえなくなった。

代々、武器や防具を作ってきた職人家系なのだ。



しかし、ボボは帰ってこなかった。



夕暮れになり、洞窟内も暗くなり、腹を空かせた皆を見かねて

何か食べれる物でも取ってこようと洞穴を出たチェリー(?歳メス)が悲鳴を上げた。

タマ達が慌てて外へ出ると、ボボが血まみれで立っていた。

ボボの足元には武具が散乱していた。

よく見るとボボの胴体に穴が開いていて、後ろの景色が見えた。

「ボボ!」

タマが声を掛けると、血まみれのボボの口元が動いた・・気がした。

同時にボボは倒れた。

血まみれでありながらボボだと分かった証拠に、

腕に緑の布が巻いてあった。





昔、ボボが「チェリーにもらったんだ!」とタマに自慢していた。

4隅に鈴の付いた綺麗な緑色の布だった。


「ボボ・・・」


チェリーが呟いた。







風も吹かないのに鈴が鳴った―――








テヌルー(24?歳オス)は散乱した武具を拾い集めていた。

「ほら、皆も手伝えよ。せっかくボボが持ってきてくれたんだ」

声は震えていた。


絶対に許せない・・・

タマはいかにも重そうな大鎌を拾い上げた。

ボボの血で赤く染まった大鎌。



誰も、何も言う事無く、タマ達は城へと向かった。




高台の手前まで来たタマ達は立ちすくんだ。

タマはいつも高台を見ていたが、いざ目の前にしてみると300m

くらいの高さがあった。とても登れそうにない。

周り込んでもみたが、確実に人の足では登れそうになかった。

やがて夜も更け、不気味な静けさがタマ達を襲った。

皆は力付き座り込んでいたが、ボボの事を思い出す内に眠っていた。


「メェエエエン!」



突然、レーメンの叫び声が聞こえた。うるさかった。

皆が目を覚ますと、辺りは黒い影に包まれていた。

「なんだこれ・・・」

テヌルーが影を剣で突くと、剣が突いた先から腐りだした。

「うおお」

慌てて剣を放し、倒れこんだ。

その光景を見ていた皆はただ影を見つめていた。


すると、影の一部が桃色に変わった。

そこから人が出てきた。女だ。

年は20代くらいだろうか、長い髪は逆立ち、目つきが鋭い。

何故か左の頬が腫れている。親知らずでも抜いたのだろうか。

「私は女王メア。何をしにきた?ビチグソども」

ビックリして誰も口を利けない・・・

「喋れ!」

さらに目つきが鋭くなった。

ますます声が出なくなっていた。


「・・・・・・チーン」

そう言うと女王メアは右手を振りかざした。

瞬間、レーメンの体が炎に包まれた。

「ウァァァ、焼きレーメンンンン・・・」

女王メアはニヤニヤと笑っている。

チェリーは燃えるレーメンを助けようと、手でレーメンの体を叩くが

消せなかった。

テヌルーは背中の大剣を構え、女王メアに向かっていった。

女王メアもテヌルーに向きなおすが、テヌルーは速かった。

横に一閃、大剣が女王メアの胴体を2つに割った。

次の瞬間、黒い霧は晴れ、レーメンを包んでいた炎も消えた。



「レーメン!」

タマがレーメンに駆け寄ったが、虫の息だった。

「やっ・・・た・・の・・か?・・・・」

レーメンが言うとテヌルーは「おう!」と返事をする。

またテヌルーの声は震えている。

皆はレーメンの所に集まった。

「ごめん・・・ちょっと・・・・・・・眠るわ・・・・・」

レーメンは必死に言葉を出した。

最後に・・・黒い雲で覆われた空を眺めるレーメン。

すると、レーメンが空の一点を睨んだ。

皆が見上げると、女王メアが浮いている。


「慈悲、消えたじゃない!!!!!!!」

怒りを顕にする眼光、黄色いオーラが出ている。

女王メアは両手を振り上げ、何かを叫んでいる。

刹那、空から赤く燃える岩が高速で降ってきた!

女王メアの体をすり抜けたその岩はテヌルーの胴体に直撃した。

同時に凄まじい爆炎と衝撃が皆を襲った。

女王メアの声だろうか・・・

高らかに笑いを浮かべている。


煙が全て消え去った頃、女王メアは地上に降りた。


何も無い。

テヌルーの立っていたであろう位置から半径50m程・・

何も無かった。

「メアに歯向かうからそうなるのよ!」

また女王メアは笑いだした。

直後、メアの真後ろにタマが現れた。


真っ赤な血で染まった大鎌を両腕で振り下ろす。

鎌が風を切る音で女王メアは気付くが、振り向いた瞬間

またしても女王メアは2つに割られた。

「なんで・・・・・・・」

タマは何も言わなかった。

・・・言えなかった。

タマは泣いていた。





燃える岩がテヌリーに直撃する瞬間、

チェリーはとっさに隣にいたタマを庇っていた。

爆炎と爆風でチェリーの体が次々と壊れていく中で

タマは消えていく3人を見ていた。

煙の中、タマの肩にチェリーの手の感触だけが残っていた。

笑い声が聞こえた・・・

タマの仲間は消えてしまった。

笑い声が降りてくる。

タマは仲間の元へ消えていきたいと願った。

笑い声が地上へ降り立った。

タマの体は消えていた。







タマは泣いていた。

女王メアの二方向からの目がこちらを見ている。

「時間慈悲にしとけば・・・良かった・・・・・」

また、わけの分からないことを言っている。

「・・・・うう・・・でもいいや・・・」

「マタネー・・・キットネー・・・」

そういうと女王メアの体は消えていった。

タマは真っ赤な鎌を持ち、突っ立っていた。




真っ黒い雲に覆われた世界。

なんで、こんな世界に・・・・


明日から誰と生きていけばいいのか。


タマはまた泣いた。





翌日、城から黒い影が飛び出しタマの元へ向かった。



湖の淵に、タマの腕と真っ赤に染まった大鎌だけが落ちていた。




遠く離れた所・・・

クインメーは小さな教会で祈り続けていた。

黒い影が教会の十字架とクインメーに絡み付いている。

「世界に平和がやってきますように」


「あと!もう怖い夢を見ませんように!!」







今、あなたが嘲笑う環境問題に取り組む心。

自分は何もしなくてもいいやと思っている黒い心の影。




今日、クインメーの見る夢は誰を消すのでしょうか・・・・




綺麗な笑い声が聞こえる。

~遠い未来の適当なお話~

超寿命化が進み人口が増え続け、CO2削減に失敗した人類。

各国が資源の奪い合いを行い、核が世界中を飛び回っていた。

陸地が形を変え続け、世界地図は存在価値がなくなった。


それから290年・・・


やがて空は黒い雲で覆われ、人類は滅亡の時を迎えようとしている。


そんな中でも生き残った人間は木や土を食べ、地球を美化すべく

力を合わせて生きていた。


とある集落。

他に集落があるかは分からない。

もしかしたら最後の生き残りかもしれない。

言葉はあれど石器時代のような生活をしている我々の子孫達。

100人程の人間が集まって暮らしていた。



その集落より200km程離れた断崖絶壁の崖の上に小さな教会があった。


一人の神父と、小さな娘が暮らしていた。

この二人は親子ではない。だが、絆は普通の親子よりも深かった。


神父は名をシェパニャーといい、娘はクインメーという。



遠く離れた集落や村からでも人々は、この教会に足を運んでいる。

シェパニャーは神父ながら人なつこく、犬だ犬だ!とよく言われていた。

教会の地下にある書物庫でよく本を読み、そのままヨダレを垂らしながら

寝ていた。

こんな時代だからこそ人々は信仰を深め祈りを捧げていたのだろう。

人間だけの力ではもう切り開けないこの世界は絶望に満ちていた。

そんな彼らを導くのが、このシェパニャーだった。

朝は太陽がうっすらと見える前に目覚め、畑を作り

太陽が昇り、暗くなるまで神父を務め、その後も畑を耕し

夜はクインメーに愛情を注いだ。

作物は殆ど育たないが、収穫は0ではない。

その少しの恵みでさえ祈りに来た人々に分け与えてしまう。


いつもシェパニャーはクインメーに言っていた。

もうしわけない。すまない。分かってくれ。


娘は分かっていた。

誰よりも働き、誰よりも祈り、誰よりも自分を愛してくれるのがシェパニャーだと。

クインメーも朝は弱いが、いや、本当に朝に弱いが、うん。

本当に本当に朝に弱いが、起きた後は畑に行って水をやった。

幼きに空腹は耐えがたかったが、我慢は覚えた。


また、シェパニャーは自分が食わずとも僅かな食料を与えてくれていた。

それも分かっていた。


クインメーは、祈りに来ては自分達から食料を奪っていく人々が許せなかった。

シェパニャーにも打ち明けたが、取り合ってはくれなかった。

こんな時代だから仕方がない。お前さえ立派に成長してくれれば何も望まない。

私は一人じゃない。これがどんなに幸せな事か・・・

そういって抱き締めてくれていた。




とある日、娘が朝から祈りに来た人に怒りを爆発させた。

祈った後、少しの作物を手にシェパニャーに対して舌打ちをしたのだ。

笑って誤るシェパニャー。

娘はその人を教会の外で怒鳴りつけた。

すると首根っこを掴まれ散々引きずり回されたあげく川に突き落とされた。

クインメーは泳げなかった。

シェパニャーは祈りの時間なので外に出ることはない。

突き落とした人はもう姿も見えない。

クインメーは自分の非力さに腹が立って仕方が無かった。

濁流の中、歯を食いしばり自分の命の心配よりも、怒りに満ちていた。

やがて気を失った。


その晩、シェパニャーが神父の役目を終え、畑に出た。

いつもなら、芽を出した食物の隣にちょこんと座り、歌を歌っているのに

そのクインメーの姿が見えない。

耕具入れの中にもいない。畑の隅から隅まで探しても教会も地下の書物庫も

どこを探してもいないのだ。

シェパニャーは叫び続けた。

美しい色をしたヒラヒラと飛ぶ昆虫でも追いかけて森にでも行ってしまったのか。

どこかで遊びつかれて寝てしまったのか。



絶壁の下は海で激しい波飛沫が飛んでくる。こっちに来るはずはない。

昔、崖から身を乗り出して遊んでいてシェパニャーは娘をぶった事があった。

手を出したのは、道端に捨てられていた赤子を拾ってからその一度きり。

危険性はもう十分に分かっている年だし、こっちには来ない。


だとしたらやはり、森の中だろうか。


教会から太陽の沈む方向にキランドという森がある。

昔は頭蓋骨から羽を生やした化け物が飛び交っていたが、食料である人口も減り

絶滅している。


シェパニャーは娘の名を叫びながら走り続けた。

夜の暗い森の中を、10時間ほど走り続けた時、シェパニャーは倒れた。

もう1年以上ろくに食べていない。

シェパニャーは一人、地に伏しながら闇の中で祈った。


朝になった。

シェパニャーは全身が自由に動かなくなっていたが、気力で立ち上がり

教会へと戻っていった。

もう10歳くらいになるし、ひょっとしたらもう戻っているかもしれない。

そう願い続けた。



教会へ着いた時、中から人の気配がした。

安堵の笑みを浮かべたシェパニャーは、走りながら・・・

教会のドアを空け娘の名を叫んだ。





どれくらい流されたのだろうか。

クインメーは岸に打ち上げられいた。

しばらく仰向けのまま動けなかった。

口の中がジャリジャリする。


助かった・・・

ほっとすると同時に、記憶が甦ってくる。

父親同然のシェパニャーから食物を奪い、舌打ちをした人間。

再び憎悪に燃え歯を食いしばった。

口の中、左奥歯のあたりが傷む。

食いしばりすぎて歯が割れてしまったのだろうか。

若干左頬が腫れている気がする―――

が、そんなことはどうでもいい。

娘は立ち上がりあたりを見回した。

幸い、遊びに来たことのある岸で、教会まで充分に歩いて帰れる距離だった。


ふと太陽の位置を見て驚いた。

最初の祈りの人間が舌打ちをした。そいつに川に落とされた。

かなり流されていたのも覚えている。

なのに太陽はまだ東にある。

つまり丸1日、あるいはそれ以上姿を消してしまったという事。

シェパニャーが心配しているに決まっている。

シェパ・・・お父さんは、自分の食事よりも2人でいれる事を幸せだと言った。

寂しい思いはさせてはいけない。

必死で走った。

靴も流されてしまい裸足に急流の岸の石は痛かった。沢山血が出たが

必死で駆けた。もうすぐ帰るからね!





教会へ着いた時、中から人の気配がした。

安堵の笑みを浮かべたクインメーは、走りながら・・・

教会のドアを空け父の名を叫んだ。







中にはシェパニャーがいた。








シェパニャーの笑顔が迎えてくれた。








シェパニャーはテーブルの上にいた。








首だけだった。








隣には・・・自分を川へ投げた人間がいる。赤い色の付いた刃物が落ちている。

父と二人で育てた食物を手に、うっすらと太陽のように笑いを浮かべている。



お前生きてたのかよ。




聞こえない・・・




腹が減ってよ~、俺が死ぬところだったぜ~。




聞こえない。



もっと食料を作っとけよ~。足りねぇよ。

黙れ!!!!



クインメーが睨み付けると、人間はたちまち炎に包まれた。



呻き声も聞こえない。




人間の全てを焼き尽くすと、静寂が訪れた。



娘はその優しい微笑みを浮かべた首を取り、抱き締めて泣いた。


涙も涸れた頃、疲労からかそのまま倒れて眠りについた。


シェパニャーの夢を見た。

一人にしてしまってすまない。―謝ってばかりだね。

頑張って畑を作って、お腹がすかない様にしないとね。―うん。

ここへ祈りにきた人には優しくするんだよ。―・・・・・・

お父さんとは呼んでもらえなかったなぁ。―これからいっぱい呼ぶよ。

それじゃあ、少し休むよ。 おい、起きろ!

と、誰かに起こされた。

神父様はいないのかい?



そういいながら顔を覗かせた人間は、娘の抱えている首を見て尻餅を付いた。

次の瞬間には走り去っていった。



辺りを見回すとシェパニャーの胴体があった。

そっと首を付けてみる。


手を離すと、再び首は離れてしまう。



娘は教会の裏へ回り、穴を掘り、シェパニャーを埋めた。


しばらく佇んでいると、畑のほうから声がする。


おい、それは俺のだ!

何を言う!もうそんなに持ってるじゃないか!


人間が畑を漁り、踏み荒らしている。


クインメーが近づくと、人間達は気が付いた。

お、神父さんの娘じゃないか。神父さんはどうしたんだ?

畑をほったらかしにして!


もう父はいません。今日からは私が畑を作ります。


は?子供に、しかも女に出来るかよ。ったくよ~。

俺達が飢えちまうじゃねえか!!


怒りを抑え、祈りを促した。


食料が手に入らないなら、祈る必要なんて無いだろうが!

こんな時代だから、さすがの神父様もドロンってか!



我慢は覚えたが、怒りの抑え方は分からなかった。

対峙した、二つの人間という固体は業火の中に消えていった。

遠くで見ていた巡礼者は逃げ出した。



不思議な力を使えるようになっていた。

ただ、力を使う度に心に黒い影が出来ていくような気がする。

遠い昔の誰かの記憶も体に入ってくる。地球の泣く声も聞いた。


眠りにつくと、不思議と自分の体を意識だけが離れ、自由に

飛び回ることが出来た。


意識だけで好きなように形を変えられて、雷や炎は自在に操れるように

なっていた。


この不思議な現象と力を調べようと書物庫へ入り浸った。

物理法則~幻想~希望~現実~危険思想~オカルト~医術~歴史

年月は重なったが、膨大な量の書を読んでいく内に、一つの答えを見出した。

こんな世界を作り出したのは、他でもない人間のせい。


こんな荒んだ世界、人間が一切いなくなれば地球が泣く事もない。

全てを根絶やしにして、ゼロから始まればいい。

始まらなくてもいい。もうシェパニャーとの生活は返ってこない。


魔女になろう。世界中の生きている人間を後悔させてやらねばならない。



シェパニャーが付けてくれたクインメーという名前。

このままでは使いたくない。何か考えよう。何でもいい。




全てを無に返してあげないと!

意識だけ飛ばしても夢で見てしまうのが残念だけど、仕方が無い。

この世界を、シェパニャーと過ごした平和な日々を取り戻すために。




毎日シェパニャーの為に祈り、世界の為に人間を消す。




人類滅亡促進の為、クインメー、一世一代の魔女物語がここに始まる。
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こちらは

ルディロス大学付属高等学校2年カトン(短編)

の続編となります。








カトンは灰色を取り戻した。

しかし、カトンは気がついた。

良く考えたら、クラスに1人くらいそんなヤツがいてもいいじゃないか。

それに、ひもぷりに彼氏がいようが、カトンに色の付いた世界を再び見せてくれた人には違いないのだ。

何も落ち込む必要は無いのだ。

―ああ、ウンチマンでもいいよ! 

面白い人! 


つい振り向いてしまった。笑った顔も、これまたイイ。

再びカトンの視界は色を取り戻した。 


ねえ、本名はなんていうの?? 

―カト・・・・いてぇ! 

その時ラッシュ先生からチョークを投げられた。

後頭部に見事に当たったようだ。 

クラス中の視線がカトンとひもぷりに集まる。

そこの二人は廊下に出てなさい! 



なんという幸運か!? 


ついに二人きりになれるではないか!! 

ひもぷりは気の抜けた声では~いと言いながら廊下へ出て行く。 

カトンは、嬉しさを抑えながら怒ったフリをして、教室を出て行った。 

まだ授業始まって5分足らず・・・あと40分以上も一緒にいられるのだ。 

何を話そうか。ハンカチは何て言って返そうか。

色々と考えていたが、ふと、ひもぷりを探してみたが、姿が見えない。

今度は透明色か!? と、ひもぷりがトイレから現れた。両手にはバケツを持っている。 

やっぱこれよね! 

そう言ってカトンに片方のバケツを差し出した。

たっぷり水も入っている。

―でも普通、バケツって両手で持たない? 

そうだね。でも男子トイレも見たけどバケツ無いんだもん。あ!じゃあ空いてる手は繋いでよっか?

―え。。。 

ひもぷりが近寄ってくる。 

―ちょっとトイレ!! 

カトンはバケツを置いて走った。

・・・・・トイレと逆方向に走っていた。


なんだ!なんだ!なんなんだ!! 

全力で走りながらニヤついていた。 



夢中で走っていた。まさか俺に気が有ると言うのか!気がつくと体育館に来ていた。

バスケのドリブルの音がする。しかし声も無く足音も1つ。体育ではなさそうだ。

カトンは昔、バスケの漫画を呼んだ時から強い興味を持っていた。


覗いてみるとマルボウがバスケをやっていた。

ふと、目が合って よう! と声を掛けられた。

そのまま見なかった事にして体育館をあとにした。変態は放っておくに限る。

バスケなんて、いつでも出来るだろう。それに・・・・・・

海パンに裸足でバスケしてるんだもん。


走ってきたであろう通路を歩く。


しかし、ひもぷりって何なんだ・・・ドキドキしちゃうじゃないか。落ち着くんだ・・俺!

教室の前まで戻ってくると、ひもぷりは両手にバケツを持っていた。

純粋というか、ちょっと変わった子のようだ。

おかえり。

―うん。

はいこれ!

―うん。

1つだけバケツを手にした。

・・・・やっぱりウンチ君はウンチに行ってたのかな?

―あ、、いや、、うん。

さすがウンチ君ね!

もう意味が分からない。

でも、こんな風にクラスメイトと話すのも久しぶりだった。それにこんなかわいい子と話してるなんて。

再度、手を繋ぐ事は求められなくて寂しかったが、でも幸せだった。

何をニヤニヤしてるの?

笑ってしまっていたらしい。

―いや・・・・良い色のウンチ出たなあと思ってさ。

何それ!

二人して大笑いした。


するとチャイムが鳴った。40分以上あったハズなのに、

一瞬で終わってしまった。ひもぷりはカトンの手からバケツをもぎ取ると 

片付けとくね! 

と言ってトイレへ入っていった。どうやら授業も終わったようだ。

カトンは席へ戻った。なんとなく外の景色を遠い目で眺めていた。すると、頭を叩かれた。

ボグレだ。手にはノートを持っている。

何やってんだよ。まったく。

そう言うと現代国語と書かれたノートを置いて去っていった。

昼休みには返せよ!

ボグレは笑っていた。なんてステキな少年なんだ

・・・しかし、ノートなんて灰色になってから全く取っていない。こっそりと机にしまった。



教室の時間割を見ると2限目は数学である。

勉強もしないとなあ・・・・・

ひもぷりは廊下で皆に囲まれていた。机に肘を乗せて廊下を見ていたカトン。

すると、だんだんと視界が薄暗くなっていく。抗えない。カトンは眠りだした。

夢は見なかった。体がビクっとなったりしたが、起きなかった。

ヨダレが垂れてくる。垂れる!でも・・・ああああ!急いで啜った―――


と、目が覚めた。チャイムが鳴った。どうやら数学は丸々寝ていたらしい。

でも、先生が数学の先生じゃない。あの教室を出て行くのは英語のスローボ先生だ。

時間割に目をやると今日・・・英語は4限目だ。どうやらやっちまったらしい。

背中を突かれた。

おはよ。

―お、おう。

寝すぎだよ~。突いてもカカト落ししても起きないんだもん!

―こら!

・・・そういえば、背中のあたりがなぜか非常に痛い。

ね、売店ってどこ?

―ああ、1階の職員室の隣だよ。

ありがと!

そういうとひもぷりは行ってしまった。

さて、メシか。・・・・弁当なんて持ってきてない。

朝、玄関出るとき母ちゃんが騒いでたのは弁当か。やっちまった・・・・・いや。



・・・仕方が無いから俺も売店に行かないとな。やれやれだ。

またニヤついていた。カトンは走っていった。

しかし、人がごった返す昼休みの廊下では見つけられなかった。

売店までダッシュで行って、周りの人を確認する為

わざとゆっくりと品定めもしたけど、

ここで時間を掛けるのは周りのみんなに申し訳ない。

結局ひもぷりは見つけられなかった。

あきらめてカレーパンとおにぎりを買・・・おうとしたけど、サイフも無かった。

腹減ったなぁ・・・。まだ昼休みの時間はあるし家帰ろうかな。

昇降口から外へ出ると、そこにひもぷりがいた。

何してんだ??



―どうしたんだい!?

あ、ウンチ君!サイフ忘れちゃってさ、親を呼んで待ってるの。ウンチ君は?

―俺は家近いから家に帰って食おうかなって。

そうなんだ。あ、来た来た!

ふと、校門を見ると、黒いリムジンが止まっていた。

中からグラサンハゲでマッチョで黒いスーツを着た人が降りてくる。

じゃあね~!

そういうとひもぷりはリムジンへ走っていった。

なんだか、グラハゲに目で殺されたような気がして一路、家へ向かった。

どっかのお嬢様なのかな。それとも組関係とかかな。

立ち止まって振り返ると、もう車もひめぷりも見えなかった。

青い空。いい天気だ。腹減った。再び歩みを始めると、そこには黒いリムジンと、あのグラハゲがいた。

残念だったな。

??

グラハゲは懐からナイフを出すと目の前の少年を突き刺した。

カトンの視界は真っ暗になった。

体が痙攣を起こしているのか・・・思うように動けない。口から液体が出てくる。

血か。左の腕が痺れてきた。

せっかく親からもらった血と肉をここで終わらせてしまうのか。

血を飲み込んだ―――――――





チャイムが鳴った。




どうやら数学は丸々寝ていたらしい。ん・・・夢・・・・?


でも、先生が数学の先生じゃない。あの教室を出て行くのは英語のスローボ先生だ。

時間割に目をやると今日・・・英語は4限目だ。どうやらやっちまったらしい。

背中を突かれた。ひもぷりだ。

おはよ。

―お、おう。

寝すぎだよ~。突いてもカカト落ししても起きないんだもん!

―こら!

・・・そういえば、背中のあたりが非常に痛い。左腕も痺れている。

ね、売店ってどこ?

―ああ、1階の職員室の隣だよ。

ありがと!

そういうとひもぷりは行ってしまった。さて、メシか。・・・・弁当なんて持ってきてない。

朝、玄関出るとき母ちゃんが騒いでたのは弁当か。やっちまった・・・・・いや。


・・・仕方が無いから俺も売店に行かないとな。やれやれだ。

またニヤついていた。カトンは走っていった。

しかし、人がごった返す昼休みの廊下では見つけられなかった。

売店までダッシュで行って、ゆっくりと品定めもしたけど、

ここで時間を掛けるのは周りのみんなに申し訳ない。

結局ひもぷりは見つけられなかった。やっぱりか・・・

あきらめてカレーパンとおにぎりを買・・・おうとしたけど、サイフも無かった。

腹減ったなぁ・・・。家帰ろうかな。昇降口から外へ出ると、そこにひもぷりがいた。



何してんだ??

―どうしたんだい!?

あ、ウンチ君!サイフ忘れちゃってさ、親を呼んで待ってるの。ウンチ君は?

―俺は家近いから家に帰って食おうかなって。

そうなんだ。あ、来た来た!

ふと、校門を見ると、黒いリムジンが止まっていた。

中からグラサンハゲでマッチョで黒いスーツを着た人が降りてくる。

じゃあね~!

そういうとひもぷりはリムジンへ走っていった。

なんだか、グラハゲに目で殺されたような気がして一路、家へ向かった。

どっかのお嬢様なのかな。それとも組関係とかかな。

立ち止まって振り返ると、もう車もひめぷりも見えなかった。

青い空。いい天気だ。腹減った。ん。。

再び歩みを始めると、そこには黒いリムジンと、あのグラハゲがいた。

どっかで見たな。この光景。デジャブだ。


通り過ぎようとするとグラハゲに殴り倒された。

―なんだ!?いてぇ・・・

気がつくとグラハゲはナイフを持っている。


何故分からないのか。


グラハゲは溜息を付きながら鬼のようば形相で向かってくる。


―おいおいおい・・・・殺されるのか!?グラハゲはナイフを振り下ろした。




カトンの視界は真っ暗になった。薄れ行く意識の中でカトンは考えた。



俺が何をしたというのだ。



まだひもぷりにハンカチ返してないのに!



・・・ダメもとで好きだって言ってない!


それから・・・・おれは・・・・・・






それにボグレにノートも借りたまんまだ!昼休みには返すって言われてたのに!




マルボウにはバスケやってみたいって言ってない!




テルミヌとかシソ神にタバコ吸うとどんな感じなのか聞いてない!




父ちゃん、母ちゃん、ごめん・・・



俺はまだ何もやってないんだ!死にたくない・・・・


バレンタインだからって調子こんでましたぁ!!・・・




















最近、カーテン越しに入ってくる日の光がうざいと感じる。

ベッドの位置を変えなきゃと思っても、面倒臭いし、親に頼むのも面倒だ。

部屋に入られたくないし。

カトンは起きるなり部屋を見渡して深い溜息をついた。

何も変わらない一日がまた始まったのだ。









なんだか、不思議な夢を見ていた気がする。


弟がドタドタとうるさく階段を下りていく。


――――――2月13日




彼女欲しいなあ・・・・


いい友達はいるのになぁ・・・

誰かが授業を受けられなかったり、休んだりすると

必ずノートを貸してくれる勉強好きの秀才。

ボグレとか・・・

ボグレ・・・




昔は、いつも公園で一緒に遊んでたのに

勉強出来るからって俺を見捨てやがって。

ボグレは変わっちまった。



いや、変わったのは俺か。

努力をしないで、他人への妬みばっかり覚えてる。




夢・・・全てが死んで終わる夢を見た・・・


生きてるよな?


カトンは鏡を見た。




いい顔じゃないか。

なんとなく笑顔を作ってみた。

95点だな!



同時にボグレがノートを貸してくれるときの笑顔が浮かんだ。





―くそっ。







女と付き合ってもみたいけど、

やっぱりボグレと一緒に遊びたいな。



お前は変わったよ!もういい―――

そんなひどい事も言ってしまった事もある。



これからの時代は、どうせ勉強しなくちゃいけないんだ。

ちょっとずつでも教えてくれないかな。

ボグレ・・・・・・・

ノートはすぐに写して、すぐに返すようにしよう。


ノートを失くしたフリをして困らせるなんて、何を考えていたんだ。





夢では、あの転校生に心を奪われすぎて、


元々見えにくいのに、大事な物を見落としていた―





逃げてばかりじゃだめなんだ。


俺の事を思ってくれている人がいるんだ。
















何も変わらない1日がまた始まる?







いや、変えようと思ってないだけ。





変わるように考え、行動していないだけ。




誰にでもチャンスはある。







「かとん!ご飯よ!!!」


―分かってる!!当然、卵焼きだろうな!!!!




「目玉焼きだよ!」


―灰色になっちまうぞバカ母ちゃん!


「何を言ってんだい・・遅刻するよ!」




うるさい心配性の母ちゃん・・・

ぶつぶつ言いながら階段を降りて行く。








母ちゃんの困った顔。



久々に見た母ちゃんの顔。




私は美人だといつも言ってる母ちゃんの顔。




ん、母ちゃんの顔





ひもぷりじゃないか!!!!!!!!!

考えてみればグラハゲといえば父ちゃんのトレードマークだった。


ったく。

夢の中にまで出てきやがって。



幸せだな・・・。






平凡な日常にこそ幸せがある。


高校生の内に気がついた、幸せ者の物語でした。


なんだか近くにいると幸せをくれるイトキン世代の物語。


でした。



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真っ暗な林道の先に一つ明かりが見える。

橙色の光。

潮風が吹き荒れていて真冬の寒さに拍車をかける。


光の正体は体育館の電気だ。

時刻は23時頃。



体育館の中では二人の少年が卓球をしている。


少年のような男達が卓球をしている。

というかいい大人が卓球をしている。


一人は眼鏡を掛けた男。もう一人はイケメンな男。

見事なラリー。本気なのか遊んでいるのか分からなかった。


やがてイケメンは返球をネットに引っ掛けてしまった。

「あー!!くそう!」

「へへへ」

「全然衰えてないなぁ」

「たまに、ここへ来てやってるからね!」

「くそー・・・」

「終わりにしようぜー」

「あぁ、もうクタクタだ」

眼鏡は手で扇ぎ、イケメンは上着を脱いだ。

二人は座り込んだ。

「あっついな。それにしても大丈夫か?こんな時間に入り込んで」

「大丈夫、こんな田舎の学校だ。俺の庭みたいなもんだよ」

「お!さすが教員」

「っふ」

「それにしても懐かしいよなぁ。前にも、こうやって学校に忍び込んだっけな。酒持ってさ」

「あぁ、跳び箱に火を付けて飛んだりな!・・・あれは熱かったなぁ」

「なぁ・・・ってお前は飛んで無いじゃないか!」

「そうなんだよなぁ・・・・・ところで、東京はどうだ?しっかり仕事してるのか?」

「まぁ、楽しくやってるよ」

「おいおいおい。そこは違うだろ」

「ん?」

「場面的に、お前は東京へ出てやりたくもない仕事をしてボロボロに疲れ果てて、
 
 ふと帰って来た母校で親友の俺に慰められる。そんなシーンだろ!」

「なんだよそれ」

「だって悔しいじゃないか。東京なんてお店とかいっぱいあるしさ。コンビニも24時間やってるんだろ。

 なんか・・・そういう地元のぬくもりとか仲間、とかの力で対抗したいんだよ」

「なんだそれ・・・いや、まぁそれなりに大変ではあるけど頑張ってるよ」

「・・・違うんだよなぁ」

「そういうもんか?」

「そういうもんだよ!」

「そうか?」

「そうだよ!」

「そうかぁ?」

「そうだよ!!!」

すると二人は叫びながら卓球台へ向かって行く。

またラリーが始まる。

しかし、やはり眼鏡が1本取った。

「くそー」

「・・・そういうもんなんだよ」

「しかし、疲れるなぁ。こりゃ筋肉痛だなぁ。・・・明後日あたりに・・・ところで何で大人になると筋肉痛は遅れて来るんだ?」

「それはね、筋肉の特徴として・・・・・・」

眼鏡の専門的な話が始まった。こうなると間髪を置かずに話すので聞き取るのが大変だ。

「・・・・・と、いうわけなんだよ」

「・・・おお~。さすが理科の先生は違うなぁ」

「生物だよ」

「中学校だろ?理科だろ」

「違うんだよ」

「同じだろ」

「違うよ」

「同じ」

「違う!」

「同じ!!」

「違う!!!」

すると再び二人は叫びながら卓球台へ向かって行く。

またラリーが始まる。

しかし、またもや眼鏡が1本取った。

「くはぁ」

「・・・違うんだよ」

「くそう・・・。・・・あぁ・・・喉渇いたな」

「飲むか?」

「お!さすが親友」

二人は再び座り込み。眼鏡はカバンから1つ、缶ビールを取り出した。

「おお!いいねぇ・・・・・ってコップは?」

「ほら」

「ありがとう・・・って三角フラスコはやめろよ・・・」

「大丈夫、味は変わらないよ。ちゃんと洗ったしさ。スポイトは使うか?」

「いらねぇよ」

イケメンはしぶしぶ2つの三角フラスコにビールを注いだ。

「なんか実験してるみたいだな」

「なんのだよ」

片手にフラスコを持ち、ついつい横に振ってしまう。

「ぷはぁ。って、うわぁ。なんか実験の味がする」

「実験の味って何だよ」

「お前は飲まないのか?」

「あぁ、俺はやっぱいいや。車だし」

「そっか。あとさ、なんかつまみ的なものはないかな」

「そういうと思ってさ・・・」

眼鏡が取り出したのはラップに巻かれた肉だった。

「豚肉だよ。食いたいだけ自分で切って食ってくれ。俺の分も適当によろしく」

眼鏡はさらにピカピカに磨かれたナイフを出した。

「うお!やるじゃないかぁ」

ほんのりと豚肉の匂いに包まれる。

イケメンは肉にナイフを入れた。

「っておい!!・・・なんか生じゃないか?」

「あちゃぁ。マジか・・・。やっぱアルコールランプじゃ限界があるなぁ・・・悪ぃ」

二人は笑った。

「ところで、東京で何の仕事してるんだ?」

「花屋だよ」

「おいい!!それはダメだよ!」

「なんでだよ」

「花屋ってなんか素朴で純粋で綺麗なイメージじゃないか」

「・・・は?」

「お前は東京に行ったんだ。人に揉まれながらも、なんとか生きるしがないサラリーマンになれ!」

「意味わかんねぇよ・・・」

「じゃないと俺の・・・この田舎の良さが前面に出てこないじゃないか・・・」

「ふふ。変わらないな」

「変わらないさ。・・・・身も心も・・・」

「・・・変わってるよな」

「あぁ。変わってるのも変わらないさ。そう、変われないんだよ・・・。跳び箱を飛ぶ勇気も、東京に出る勇気も無かったんだ」

「・・・・・変わってるって言えば、小学校の時だっけか。お前、夏休みの宿題で昆虫の標本とか本気で作ってたっけなぁ!!」

「あったなぁ。そんなことも」

「あれには驚いたなぁ・・・昆虫のつがい標本500種類!1000匹!! まさに圧巻だったな」

「そうかぁ?」

「そうだよ、変わってるよな」

「ははは」

「今は、理科の先生で環境も整ってるだろうし、もっと上の・・・なんだ・・・。動物の剥製とかも作ってたりして!?」

「まさか。子供の頃の話だよ」

「そりゃそうだなぁ」

・・・・・

「って、本題だけどさ・・・・あの・・・佐藤さんさ!」

「ああ!忘れてたな」

「俺の事好きだったって本当なのか?」

「あぁ。この前飲んだ時にそう言ってたから間違いないよ」

「うひゃぁ・・・」

イケメンは悶え出した。

「ど、どうなんだ?やっぱり佐藤さんも・・・その・・・成長したのかな!?」

「あぁ。綺麗になったよ。離婚してからは特に・・・だなぁ」

「うやぁああああ・・・・」

さらに悶えた。

「あのクラスの・・・といっても1クラスしか無かったけどさ、そのマドンナが・・・」

「お前は卓球ばっかりだったからなぁ」

「・・・お前は佐藤さんの事どう思ってたんだ?」

「んん~。まぁ綺麗だなぁとは思ってたけど、俺は昆虫にしか興味なかったからなぁ・・・」

「ふは、そりゃそうだな」

・・・・・

「っと、そろそろ佐藤さんの仕事が終わる頃かな」

「おお、もうそんな時間かぁ」

「お前は今日はこっち泊まれるんだろ?」

「あぁ。お前に言われた通り東京の彼女には棚卸しがある!って言ってきたからなぁ」

「ったく。悪いやつだな」

「いいじゃないか! 俺は・・・佐藤さんと会って、その後、どうこうなりたいとかじゃないんだ」

「そうなのか」

「やっぱりお前に言われたように、東京に出て10年以上経って、やっぱり俺も疲れてたんだよね。

 だから昔の友達に会って昔の話してさ。リフレッシュして、また頑張ろうって思ってさ」

「・・・なんか・・・普通だなぁ」

「普通で悪いかよー」

「いやいや、お前らしいよ」

「でも、どうにかなっちゃいそうな時は・・・そん時はそん時だ!」

「ったく・・じゃあそろそろ迎えに行って来るよ」

「ああ。気をつけてな」

「ついでに酒でも買ってくるよ。強めのウォッカとかがいいかな」

「この辺に、しかもこんな時間に酒屋なんてあったか?」

「あるんだよそれが。・・・・・・フェリー乗るけどな」

「向こう岸か・・・・」

「じゃ、お前は佐藤さんに会った時の事をシミュレーションでもしてろ」

「ああ・・・っておい~」

「あと、眠くなったら・・・そこの体操マット使っていいからさ」

「眠らないよ」

「違うよ。三点倒立でもして眠気を飛ばせよ」

「なんだそれ!」

「ははは。あ、上着借りるぞ」

「おう」

「あ・・・」

「ん?」

「マットの耳はちゃんとしまえよ!」

「つかわねーよ!」

「じゃあまたな、すぐ来るよ」

「おう!」

眼鏡は体育館から出て行った。

・・・

山奥の中学校。体育館。

即座に静寂が訪れる。


イケメンは目を瞑っていたがやがて、見開き勢い良く立ち上がった。

「ひさしぶり」

格好良く言ってみた。

「んん~」

・・・

「じゃーん!おれでーす!」

陽気に・・・。

「んんん~」

・・・

「うぃっす!俺!!元気してた!?」

片手のポーズも付けてみた。

「んんんん~」

・・・


徐にピアノのほうへ向かった。鍵盤を適当に叩きながら

「だめだ・・・俺には・・・無理なのか」

立ち上がり、入り口のほうを振り返る。

「君は!・・・」

再び鍵盤を叩き出す。

「弾ける!弾けるよ!!!」

再び立ち上がり、入り口のほうを振り返る。

「君とならいける。好きだ。結婚しよう!!!!」

・・・・


「俺は・・・・・何かを間違っている・・・」

・・・・

考えるのを止め、体育館の床の上のテープの上を歩き出した。

・・・・

と、ピアノの鍵盤のフタが音を立てて閉じた。

・・・・

静寂が襲ってきた。

・・・・


・・・・・・



「こ、こわーくなーい!!」

なんとなく叫んでしまった。


・・・・


「怖いわけないじゃん・・・」

なんとなく壁際へ行き、壁に寄りかかった。

静かだ。


ふと体操マットを見つけた。

・・・・

「さ、佐藤さんと・・・」

・・・・

「いやいやいや」

・・・・・

「このマットの上で?・・・」


マットを確かめるように近づいていく。

と、マットは2枚が重なっていて裏には綿がボロボロに飛び出た体操マットもあった。

「きたねーなー。これだから田舎は・・・」


隣には眼鏡のカバンらしきものが。

「おいおい、忘れすぎだろ」

と、カバンから手帳が覘いている。

・・・・・

「・・・・・いやいやいや」


再び、テープの上を歩き出した。

・・・・

「・・・」


・・・・

「ちょっとだけ」

と、再びカバンの所へ行き、手帳を手に取った。

「どんな先生っぷりなのかな~」

・・・・

普通のスケジュール帳だった。

「ちぇ。つまんないなぁ」

と、手帳から小さいメモ帳が落ちた。

「お?」

イケメンはメモ帳を手に取る。

「どれどれ・・と、うわ、汚ねぇ・・・ってか古い」

覗いてみると、

アリ、ニホンゼミ、カブトムシ、クワガタ・・・・・

「ん」

アカトンボ、トノサマバッタ、スズメバチ、・・・・・

「なんだ・・・標本のやつかな」

ずっと裏の方まで見ていくと

アキタケン、ウサギ、ニワトリ、ブタ・・・

「おいおいおい、あいつめ~、剥製もやってるんじゃないかぁ」

・・・ニワトリ・・・ブタ、ニンゲン・・・

「ニンゲン・・・?」

・・・

「てことは剥製じゃないな・・・」

・・・

「惚れたリスト・・・か?」

昔は昆虫ばっか追いかけてたのを思い出した。

「やっぱり変わり者だよ。でもニンゲンってことは、あいつもとうとう好きな人でも出来たのかな」

・・・

「まさか、佐藤さんじゃ・・・・」

・・・

「でもそれだったらわざわざ、俺を呼んだりしないよな・・・」

・・・

「いや、でも俺への当て付けか!?・・・でも俺、彼女いるし、あいつもそれは知ってるし・・・」

・・・

「まぁいいか。これは良くない事だ」

メモ帳を手帳に挟み、カバンの中へしまった。



再び静寂がやってきた。

再びテープの上を歩き出す。


ふと、窓際の布に囲まれたスペースに気が付いた。

昔は、ここが外に繋がっていてよく二人の秘密の通路等と言って遊んでいた。

「懐かしいなぁ、まだ通れるのかな」

布を外し扉を開ける。

蝶番の所がサビているのか、扉が硬くなっていたがなんとか開ける。

なんだか、臭い。

ウサギ小屋臭かった。というか、ウサギが4,5羽いた。

それに、外の冷たい風が吹き付けてくる。

「ここ、ウサギ小屋になっちゃったのか」

ウサギが足元にやってくる。

「お前、フンするなよな!」

「しっかし寒いな・・・・」

「上着 上着~・・・・はあいつが着てったんだった」

・・・

「ていうか、あいつ!地元なら夜は寒すぎて上着がないと死ぬってくらい分かるだろうが!!! なぁ、うさぎ~」

と、1羽のウサギにイケメンは気が付いた。

「なんだこのウサギ、目ぇ開けたまま寝てるのか?」

鼻で笑いながら頭を撫でた。


「うお!」

生き物の感じがしない。

両手で体を触ってみたが、鼓動も温もりも無い。

「なんだよあいつ・・・剥製、やっぱり作ってるじゃんか・・・」

「しかし、すげえなぁ・・・一見、全然わかんないもんなぁ」

一応、剥製だけど撫でておいた。


再び、体育館内へ戻りテープの上を歩き出す。

・・・・

嫌な考えが頭を過ぎる。

「いやまさか・・・」


「あのメモ帳・・・」

・・・

「いやまさか、って人間も剥製にするってこと~?あいつが?あの昆虫オタクが?」

・・・・

「でも環境も整ってるって言ったのは俺か・・・。でもあいつもやってないって言ってたし・・・」

・・・

「・・・誰を・・・剥製にするんだ・・・」

・・・・・・・・


「俺か?」

・・・・・

「いやいやいや、ありえないでしょ」

・・・・

「大体、体を切るのに刃物がいるじゃないか・・・」

豚肉は生だった・・・


「いや、でも剥製作るなら消毒しないとな。・・・こんなビールじゃ・・・もっと純度の高いアルコー・・・」

眼鏡は買ってくると言っていた・・・

・・・・・


「いや!それなら俺を一人にするはずが無いじゃないか」

・・・・・

「この時期、この格好じゃ出られないけどさ・・・・・」


「いや!でも!!こんな事したらすぐに見つか・・・

 そりゃ東京で棚卸ししてることになってるけどさぁぁ・・・」

膝から崩れ落ちた。


・・・・


イケメンは震えながら立ち上がり、壁に寄り掛かりながら歩き出した。

「いやまてよ!中に詰める綿はどうする!・・・」

裏にはボロボロの体操マットがあった・・・

・・・・・

「いやいやいや、考えすぎだ!」

・・・・

「だ、大体、その為に呼び出すなら理科室とかに呼ぶはずじゃないか!!!!手術台がなきゃ・・・」

と、その時、手で寄り掛かっているのは卓球台だった。

全身の力が抜け、腰から地に着いた。

すると、急激な眠気に襲われた・・・・

「くそ!!あのフラスコのビールか!!!」

無理やりに目を擦った。

・・・・

「お、俺・・・嫌だからね!!!!!」

・・・

静寂が襲ってくる。



ふと、豚肉を切ったナイフを手に取った。


「くそーーーーー!!!!!どこから見てやがるんだ!!眼鏡野郎!!!」

「俺は簡単にはやられねーーぞ!!!!」

四方八方にナイフを構える。


・・・・

目蓋が下りてくる。


・・・・


と、その時、ピアノが鳴り出した。

ピアノの方を見るが、鍵盤は閉じたままだ。

・・・・

イケメンの携帯の着信音だった。相手は眼鏡。





「なんだよ眼鏡野郎!!!!!!!」

・・・・

「え?・・・うん。・・・・・うん。え?佐藤さんだけ?お前は???・・・・・・」

イケメンはニヤっとした。

「おいおい、二人だけの時間だなんて、その、、2時間半くらいでいいよ・・・うへへ・・・悪いね・・・うん・・・うん」

「あい、あと20分くらいね!はーい・・・・うん、耳はちゃんとしまうよ・・・っておい~。

 ・・・分かったー。気をつけてねー。あーい」


・・・・




「びびったああああああああああああああああああ!!!!!」


「マジで殺されるとか思っちゃったじゃんか~~!!!!」


「あいつがそんなこと出来るわけがねえもんな~!!!」


「しかし・・・びびったなぁ・・・・」


「あははははははは!!!!!」

イケメンは高らかに笑い声を上げた。

大爆笑だった。



笑い目に、体育館のガラスに反射して真顔のまま近寄って来る眼鏡の姿が見えた。

























またもや ~ラーメンズ 採集 より~ 脚色という愛を込めてw


ほんとに好きなんですよね。こういうの。というかラーメンズ。

ラーメンズといっても食べるラーメンしか連想出来ないと、中々興味を持てないかもw


私、今や家でメシ食う時とか、殆どラーメンズのコント見ながらだもんね!

これは分かり安いコントだったけど、ある程度の知識がないと理解が出来ないコントも多く

大衆向け・・・ではないけど、でも、どんな人でも笑わせられるラーメンズ。

特に、小林さんは海外でも注目されてるし、そんな芸人て他にいないよね。

ビートたけしくらい?芸人??か・・な?w

TVになっかなか出てこないし、今度舞台?講演?あったら是非行きたいと思います!


ね!





電線に大量の烏達が並んでいる。

まだ太陽が昇る前、波の音が聞こえてくる。

空は白く、どことなく重い空気が流れているようだ。



男は大きく息を吹いた。

白い煙が中に舞う。

カーテン越しに窓の外を見るが、まだ起きようと思える時間では無い。

そう考えて再び天井を見上げた。

ピンクのハートが敷き詰められた天井。

隣では女が寝息を立てている。

男は再びタバコを銜えて手で灰皿を探す。

金属の冷たい感触。

サラっとした布状の物体。

タバコの箱。

灰皿。


男はタバコの火を消し、温いペットボトルのお茶を飲み、再びベッドへ潜り込む。

隣に目をやると女は目を覚ましていた。

「・・・またタバコ?」

男は気に留める訳でもなく再び天井を見つめる。

女はじゃれついてくる様に腕にしがみついた。

と、間もなく再び寝息が聞こえてきた。


テーブルの上のグラスの氷が落ちる音がする。


段々と心が冷たくなっていくのが分かる。

少なくとも隣にいる女に興味も何も無かった。

天井へ向けた視線も徐所に下がりどこを見ているわけでもなくボンヤリしていた。




次の瞬間、朝日がカーテンを通り越し部屋中を明るく染めている。

女の腕をうまく振り払いつつ体を起こした。

男はタバコを加え火を付けた。


いつのまにか女は啜り泣いている。

あるいは・・・。


一言も発する事無く男はタバコを根本まで吸い尽くした。

お茶を飲もうとしたが既に空で、グラスの中の何かを飲み干した。

男は大きく溜息を付くと再びベッドに入った。

女は泣き止んだ。


女は男の胸の上に掌を置いた。



電車の走る音がする。



女は何かに気付いたように男の腕にしがみついた。



車の音がする。





波の音が聞こえる。


「ねぇ」

女は話し出す。

「生きてる」


電車の音が去っていった。


「ね?」



エアコンの音が聞こえる。


「あぁ。そうだな」



その後二人は何を話す訳でも無くボンヤリとどこかを見ていた。



またテーブルの上のグラスの氷が音を立てた。




カラン




カラン

「ねぇ、お客が来てやったっていうのに何ですぐ来ないの!?」

そう叫ぶと、カズコは怒りながら、店員が出てくるであろう方向を睨み付けていた。

「はいはい、ただいま」

実直そうな男性が出てきた。

「ったく、そんなんだから店が小さいままなのよ!コーヒー!!ホットね!!」

そう言って勝手に奥のBOXの方へズカズカと進んでいった。

小さな喫茶店:北風

駅前の大通沿いにあり、安くて深すぎるコクが売りの小さな喫茶店である。

「あぁもう、なんなの・・・」

カズコはずっと一人でグチグチと言っている。

先ほど、奇跡の如く長く付き合っていた彼に振られたのだった。


整った顔立ちにややスレンダー気味な体系。

薄めの化粧に綺麗な黒髪。

容姿は良いのだが、その内面は・・・。


「お待たせしました」

コーヒーが運ばれてきても、その男性には見向きもせずクリープだけ入れると

グイっと飲み込んだ。

「あつっ・・・」


男性はそれに気付いたがあえて関わろうとは思えなかった。


舌がヒリヒリする。

頭を掻き乱し不貞腐れた顔で外を眺める。



昔は・・・・。

容姿には自信があり、料理も得意である程度勉強も出来て。

中学校からは恋人がいない時なんて殆ど無かったのだ。

だけど、長続きしない。

その理由は、本人曰く「相手が悪い」。

友人に「そこまで続かないのはアンタに原因があるよ」と、諭された時も合ったが、

耳には入っても頭で理解も出来ず

結果、友人も信用出来ず日に日に孤独になっていった。

それでも彼氏がいない、と一言もらせば、その1,2ヶ月後には同棲が始まっていた。

「なんでこう、良い男はいないのだろう・・・」


過去、一番長く付き合ってた人で大学の時の最後の彼氏。

4年のバレンタインから新入社員の研修が終わる夏頃まで。

イケメンな彼氏で、適度に優しく友人も多く、何でも笑ってくれる。

こういう人なら悪くないかなー。



なんて思っていた新社会人2ヶ月目。

いざ社会に出てみると、仕事が出来る人が格好良く見え高所得者。

家に帰ってみれば、違う職場だが新人で毎日疲れて帰ってくる低所得者。

待っていれば、きっと立派に成長するであろうその彼氏の事も信じられず

次第に冷めていき、その年の夏に上司を飲みに誘い泥酔させる→お泊りコース。

ホテルの中から彼氏に荷物持って出て行けメール→アド変・着拒→上司の家に転がり込む。

生活も豊かになり、幸せを感じていた。



ただ、上司も仕事が好きで中々家に帰ってこず、少しずつ不満が溜まっていく。

こうなりゃ公務員でも捕まえるか!と思いきやこの時代それほど収入もらっていない。

ならばどっかの社長を捕まえるか!と思いきやただの上司のバージョンUP。


結局、上司の家を拠点に理想の彼氏探索中。

やがて来る大不況に疲れるを仕事をやめる訳にもいかず、仕事が不満・彼氏が不満。

不満だらけで家事も手につかず笑みは消え、脂の乗っていた全盛期を終え傷みが具合が

気になってきた。



クリスマスが近づいてきた頃。

熱っぽいのを理由に会社を休み、上司を見送ると、電話で昔の友達と男について熱く語っていた。

爆笑し話も盛り上がって来た頃、ふと時計に目をやるカズコ。

時計の下のドアのとこにはケーキでも買ってきたのか袋を提げた彼氏・上司。

心配で見舞いに戻ってきたのだろうか。

静かな部屋で気まずい友達の声が響く。

上司は袋を置いて出て行った。

慌てて電話を切り、カバンを持って追いかけていく。

(今、別れたら生活レベルが落ちちゃうじゃない!)

呼び止め、追いついたカズコ。

息を整え上司の顔を見ると、それは知ってる上司の顔では無かった。

何かを言われた。

時間が止まったように思えた。

自分だけ止まったように思えた。

駅前の大通りだけあって車の音がウルサイ。

ウルサイのだろうが、気付けなかった。

髪はボサボサで靴もパンプスにサンダルだった。

(落ち着け・・・私・・・)

カズコは目を瞑り深呼吸し、目に入ったちょっとオシャレな喫茶店のドアを開けた。




カラン


カラン


缶ビールを壁に投げつけた。

ダイジロウは途方に暮れていた。

いきなり別れて・・・出て行って、なんて。

確かに、互いに熱は醒めていたのは分かっていたが、こんなに唐突に別れが来るなんて

思ってもいなかったのだ。

初めての彼女だった。

いくら飲んでも酔いが来ない。

酒には弱いはずなのだが・・・。

電話も繋がらないし、メールも返ってこない。

出て行って、と言われても実家は遠いし・・・

仕方無しに荷物をまとめ友人宅を頼ってダイジロウは出て行った。

もともと彼女の部屋だし、荷物も代えのスーツ等服くらいしかない。


友人は親身に話を聞いてくれた。

結論としては、飲め!だけだったが心が和んでいく。

気がつけば朝。

ろくに寝てもいないがそれは友人も一緒だ。

さらにフライパンで焼いた食パンとインスタント味噌汁までご馳走になった。

「今日は6時くらいには戻るよ。盗られる物も無いし鍵は掛けなくていいや。

 あんまりボケっとしてんなよ~」

そういうと友人は仕事に出て行った。


ひどく頭が痛む。2日酔いか・・・

「初めて2日酔いになったわ。はは・・・」

TVで特ダネが始まった。

「うわぁ、時間無いし・・・くそ・・・」

顔を洗い着替えて急いで部屋を出る。

ほんとに鍵掛けなくて大丈夫か?とも思ったが鍵も見当たらないし仕方が無い。


ものすごい未練・・・なのか、怒りなのか分からないが、負の感情が浮き上がってくる。

同時に、真夜中に叩き起こして朝まで飲み付き合わせたと同時に励ましてくれた友人に対し

感謝の気持ちでいっぱいで、電車の中でも泣いていた。


その日、会社で何をしたかは覚えていないが彼女の事は忘れていられた。

と、帰り道、週間で彼女・・・元彼女のアパートに来ていた。

電気は点いていないし、ポストにチラシや新聞が入ったままで中にいる感じはしなかった。

「はは・・なんでこんなとこに・・・」

と、甲高い足音が聞こえてきた。

聞き覚えのある音で、ダイジロウは急ぎその場を去った。



友人のアパートに着くと、友人は既に帰っているようだった。

「悪い、今日も世話になる・・・」

「おう、おつかれー」

鍵なんか掛かっちゃいない玄関を開けた瞬間からいい匂いがする。

「カレーか!」

「当たり!ってか誰でも分かるわな」

「・・・悪いな・・・」

「まぁお互い様だろ、こういう時はさ。あと、風呂も沸いてるぞ。飯が先か?

 それとも・・・・俺?」

「あほう」


ベチャベチャのご飯に水気0のカレーだったが、意外とウマかった。

本人曰く「こ、この絶妙な水分バランスと、隠し調味料によって最高の味を作り上げているのだ」

だ、そうだ。

「隠し調味料って何だよ」

「ラー油だ!」

「このミーハー野郎が」

「うるさい!黙って食うんだ!」


食事中も駄弁ってる時も寝る前も、元カノの事は一切触れてこなかった。

ダイジロウが考えてしまい表情が沈んだときには友人は何か違う話題を振ってくれていた。

「そういえば明日は休みだよな?」

「あぁ」

「俺も休みだから、ちっと買い物付き合えよ」

「あぁ」

「ペアカップでも買いに行こうぜ」

「おやすみ」



そうだ。明日は不動産屋にいかないとな。

って、男2人でか?

さすがにヤバイだろ。やっぱそういうのは彼女とかと・・・・くそ・・・


色々考えていたが、疲れが溜まっていたのかすぐに意識は無くなっていった。


目を覚ますと、まな板と包丁の織り成す音が聞こえてくる。

コタツから出て見回すと友人が寝ていた所には綺麗に畳まれた布団があった。

「おっす」

「おう」

「お前、いい嫁になれるわ」

「だろ?」

顔を洗って居間に戻ると味噌汁やら昨日の残りのベチャベチャご飯やら目玉焼きやらが並んでいる。

何故か光って見えた。



二人そろって玄関から出ると、隣の女子大生?とバッタリ。



「すっごい綺麗な人じゃないか」

「あぁ。でもたまにアレの時の声が響いて来るんだ。想像すると直視出来ん」



街に出た二人。

取り合えず、不動産屋へ行きあと2,3日で入居出来るという、良さ気なアパートを契約し、

ダイジロウは生活用品を、友人は食材などを買いあさった。

日もすっかり暮れてきた頃、二人はアパートに戻ってきた。

と、またもや玄関の前で隣の女子大生?と出くわした。

ダイジロウは覚えている。奇異を見る目で見られた事を・・・。


友人のお陰で辛い思いをしなかった事を・・・。


ダイジロウはその後は女性恐怖症になっていた。

合コンや女性を紹介されたりもしたが、好きなんて感情は一切生まれてこなかった。

一瞬は好きかも、と思えるがその先を想像し完全に壁を作ってしまったのだ。

すっかり元カノの事も忘れた頃には友人に、いずれまた女を好きになる、とは言われたものの

ダイジロウにはまだ分からなかった。





ただ時が経ち、すっかり仕事も板についてきたダイジロウは、

クリスマスを間近に控え、ふと寂しさを覚えるようになった。


そんな時に思い浮かべるのは友人だ。頼りになり過ぎる友人。親友?

なんて恥ずかしいけど、少なくともダイジロウはそう思っていた。

あの時依頼、友人とは外でたまに飲むくらいだったが、今でもあのアパートにいるという。


懐かしい路地。

「変わってないな」

少しニヤニヤしながら友人の部屋のインターホンを押そうとした際、隣の玄関が開いた。

ダイジロウは反射的にビクっとした。

あの奇異を見る目は忘れられるものじゃない・・・。


ダイジロウは完全に固まってしまった。

が、出てきたのは知らないオジサンだった。

そう、考えてみればあれから5年以上経っている。

(そりゃいなくて当然だ)

ホっと安心し胸を撫で下ろすダイジロウ。

それにオジサンはかなりビビッて慌てて逃げるように去っていった。

(・・・そこまで驚くなっつうの)


インターホンを鳴らし友人が迎えてくれた。

「悪いな、突然」

「いいっていいって、まぁ上がれよ」

相変わらずの綺麗な部屋だ。

「飯は?」

「いや、まだ」

「じゃ、作ってやるよ」

「いや、寿司でも取ろうぜ。どうせカレーだろう」

「ギョ」

殆どあの頃と変わっていない。

「ほんとに変わってないな」

「まぁな。で、話って何だ?」

「いや、その。あの時から俺は女が怖くてさ。ずっと避けてきて」

「ほんっとに!ビビリーキングだ」

「はは。で、お前にも言われてたようにやっぱり・・・変わってさ」

「だろうだろう」

「で、合コンとかはあるんだけど、どうも俺の中の出会いってそんなんじゃなくてさ、なんていうんだ」

「お見合いとか?」

「・・・それは違う気がするな・・・」

「紹介とか?」

「・・・そう、それ!仲良い友達と、その彼女と、その友達で飲む!みたいな」

「大人数が苦手なのは変わらないんだなあ」

「ほっとけ」

「紹介ねぇ・・・」

「で、お前は彼女とか作らなそうだしさ・・・誰かそういう友達を紹介してくれないか!」

「俺じゃ役不足かよ!ひどいなそれ」

「お前に彼女とか・・・想像できん!」

「あのなぁ・・・」

そういうと友人はニヤついた。

「うわ、お前まさか!」

友人はアゴで壁を示した。

その方向に目をやると小さなコルクボード。

「おいおいおいおい」

近づいてみると幸せそうな友人と、その彼女?

「え・・・これ!」

「なははははは」

友人の顔は緩みっぱなしだ。

そこに移っていたのは幸せいっぱいに気持ち悪く笑う友人と、

忘れもしない・・・・・・・・・・・・・・・・・・







紐で吊るしてあったコルクボードが落ちた。





カラン




テーブルの上のグラスの氷が音を立てた。


二人は相変わらず黙っていた。

男は腕から、女は掌で互いの鼓動を確認しているだけだった。


だいぶ時間が経った気がする。

1時間か、2時間か・・・5時間か・・・

あるいはまだ30分くらいだろうか。


ふと、男は手を動かす。

何かをしている男に女は気がつく。

「また・・・タバコ?」

返事も無い。

男の手はタバコを見つけられないでいる。

女が男の腕に爪を立て強くしがみ付いた。

「つっ・・・」

だがそれすら気にしないようにと、男は捜し続けやがて一本を加え枕の隣のライターを手に取る。

寝たまま火をつけタバコの先端に火が近づく瞬間、女の手が伸びて火の上から押さえつけライターを止めた。

その手からは血が垂れてくる。

その瞬間、男は女を振り払いベッドの上から嘔吐した。

女は笑い出した。

緑の胃液を出し終え、息を整えた男はタバコを投げ捨て横たわる女を見た。

笑い続けて息が持っていない。なのに笑い続けている。

目の焦点も合っていない。口からは唾液が垂れている。

男は女を抱きしめた。


抱きしめられた女は静かになった。

醜い顔だが、静かになった。



また静かな時間が動き出した。




カズコはじっと外を睨み付けている。

彼氏である上司を裏切ったのだ。

仕事もやりにくくなるだろう。



むしろ、職場は嫌いだったし次の男もすぐ見つかるだろうし・・・

カズコの頭の中ではその答えを正当化する理由を懸命に探していた。


大体、自分に見合う男がいないのが悪い。


結局そこに辿り着いた。

そうだ。

まだ諦めるもんか。


立ち上がるとカズコは金も払わずに出て行った。

オジサンはそれに気付いたが、あまりにも自然に出て行く様子と

これから始まる会社帰りの人を迎える準備に忙しく、変人のタダ飲みを見逃した。



あそこから出て行こう。

思い入れの一つも無い上司のアパートに帰ると真っ先に風呂に入る。

出るときにはシャンプーも石鹸も何もかも散らかした。

もう怒りしか浮かんでこない。


濡れたまま服を着て自分の物だけ大きなカバンに詰めると、再び部屋の中へ戻り

テレビを割り冷蔵庫を倒し本棚を倒し、とりあえず目に映るものは全て薙ぎ倒した。

自分の荷物を拾い上げ玄関を開けると、知らない女性がこちらを見てドギマギしている。

血走った目で睨み付けながらアパートを後にする。


思い荷物を抱えたまま、宛もなく歩き続ける。


やがて体力の限界が来て歩道に座り込んだ。

「私は・・・何をしてるんだ・・・」

友人に連絡してみようと携帯を出すが、昼間の長電話のせいか電池が切れている。

「最悪だ・・・」


「なんでこんなになっちゃったんだろう」



その場でうずくまったままカズコは寝てしまった。



恋人と別れるなんて、何度も経験してきた。

どいつもこいつも、つまんない男ばっかりで。

金も無いし時間も無いし。

私は完璧なのに。

何で私に見合う男が現れないのか。


世界は狂っている。


なんであの男と別れたくらいで、こんなになっちゃってるのか。

そう、世界が狂ってるから。


・・・


今までだって何十人とも別れてきたのにな・・・

振ってやってきたんだ。


あぁ。今回は私が振られたんだ。

私が?

あんな男に?


ありえないし。


じゃあ何で私は泣いているんだ?


こんな世の中はありえないよ。


と、カズコは目を覚ました。

辺りはすっかり真っ暗だった。

周囲には人ごみが出来ていたが特に声を掛けてくる人もいなかった。

「何なんだよウザイな!!」

そう言って立ち上がり荷物を・・・探したが見当たらない。

「わたしの!・・・・」

声が出てこない。

この状況をみっともないと感じた。

完璧な私が。ありえない。

何より、この見物客の目。

暗がりでハッキリとは分からないが、バカにしたような、哀れむような目。

耐えられないカズコは見物客を掻き分けて走り出した。


と、ヒールが音を立てて折れ、真正面から倒れこんだ。

ありえない。

ほんとにこの世界は狂ってる。

見物客はきっと、着いて来ている。

笑いながら、哀れみながら。


カズコは発狂した。


その時、年配の男性がカズコにそっと毛布を掛けワザとらしく大声で言った。

「こんなとこにいたのか。ダメじゃないか、勝手に~」

そういうとカズコを抱きかかえどこかへ連れて行った。


なに、このジジイ。誘拐?

ていうか、お姫様抱っことか、マジでありえないし。

もう、どうでもいいわ。



カラン


カズコは部屋に連れて来られた。

「すまないな、無理矢理で。大変だったな。」

なんだか香ばしい匂いがする。

「おい、大丈夫か?」

「どこよここ。ていうかアンタ何?」

「昼間にアンタがコーヒー飲みに来た店だよ。

 余計なお世話だったかな。助けてやったつもりなんだが」

「は?ほんとウザイし」


そう言うと靴を両手に持ち店から出ていった。


とりあえず歩いた。


すれ違う人全てに笑われてる気がした。

歯を食いしばり、脹脛もパンパンになっていたがそれでも歩き続けた。

狂ってる狂ってる。

狂ってる狂ってる狂ってる・・・。


人にぶつかりながら、スーツ着た人、女子高生の集団にぶつかりながらも

呪文のように・・・言いながら歩き続けた。

「マジ痛かったんだけどー」

「何かキモくない?」

「裸足だし」

「ねぇ、今日はアイツにしない?」

「えぇ、裸足だよ?持ってるかな」

「服とか良いの着てるじゃん。持ってるって」

「じゃあ決定ー」


狂ってる狂ってる狂ってる・・・。


髪の毛を引っ張られた。

「っ痛!」

「ちょっとこっち来なよ、ババア」

「アンタ、そこ見張っといて」

「はいは~い」

そういって4,5人の女子高生は路地裏へとカズコを引っ張っていった。

「なんかまだブツブツ言ってるし、マジキモイんですけど」

「なんか抵抗しないからサイフ探そう」

皆で探すがサイフは見つからなかった。

「コイツ、持ってないしー」

「ありえなくね?」

「持ってねぇからオシオキじゃね」

「いえーぃ」

すると、カズコの衣類を剥がし、暴行を加えた。

殴る・蹴るだけでなく、一人がタバコを顔に押し付けてきた。



狂ってる狂ってる・・・。



「あぁ、誰だよ服投げたのー。汚れたしー」

「貰い物なんだしガマンしなよ」

「うけるー」


気息奄々とするカズコを他所に女子高生達は去っていった。


立ち上がろうにも立ち上がれない。

ただ狂ってると言うしか出来なかった。

3時間後にはゴミ捨てに来たどこかの店員に発見され、救急車を呼んでもらえた。


「狂ってる・・・」

救急隊員は、

「そうだねぇ。狂ってるよねぇ」

と鼻で笑い片手で携帯をいじりながら返事を返してくれた。

カズコの携帯だ。

その様子に激昂しながら・・・。





激しく激昂しながら・・・・





ダイジロウはコルクボードを拾い上げた。

そう、忘れもしない、奇異の目で見られたあの女子大生?だ。

「貴様ーーー!」

相変わらずの緩んだ笑顔の友人に対し首を締めた。

「どうなってるんだー!お前に彼女とかー!どうやって付き合ったー!

 いつからー!?何でだー!!」

「やめろっての・・!話すってば!・・」

「・・ふー!!!!」

「実はな・・・・」


時折思い出したように、友人は天井でも壁でもなく、本人にだけは見えているであろう

ハートを追いかけながら、話始めた。

ゴキブリ退治を頼まれた事。

酔っ払って間違って部屋に入ってきた事。

鍋を貸した事。

隣で男女の大喧嘩してるのを聞いた事。

そこに付け入ってしまった事。

もう、2,3年になるという事。


「こんにゃろうーー!」

再び首を絞めるダイジロウ。

いつも自分の幸せな事は、話してこない。

しかも厭らしくない。

ダイジロウはなんて良い親友を持ったのだと。改めて感動していた。

同時に、ダイジロウと友人・奇異の子とその友人で遊べるんじゃないか!?

と、期待が膨らんでいった。

「というわけでさ、俺だって紹介出来るんだぜー!」

「おお・・・おぉ・・・」

生唾を飲み込むダイジロウ。

「で、いつ頃が都合良いんだ?お前は」

「ちょちょちょっと待ってくれ!そんな急に」

「はは。まぁこれでお前も女嫌いが直れば言う事ねぇなぁ」


ダイジロウはコタツに蹲り、必死にスケジュールを思い出していた・・・。

同時にいつだってヒマだった事を思い出していた。

「いつでもいいぜ!来週とか!」

「だと思ったよ。セッティングはしてやるから、鼻伸ばして待ってな!」

「うはーーーー」


と、再びコタツに潜り込む。


と、ダイジロウはハっとした。

「てことは、彼女と同棲してんのか?」

「まぁ~そんなもんだな」

「くはーー!」

「隣同士だしさ。まぁほぼ毎日一緒に寝てるから」

「こんにゃろうーー!」

また首を絞めてやろうと重いコタツから這い出た。


「と・・・・・」

「ん?」

「隣同士って・・・?どういうことだ?」

「あ?忘れたのかよ。お前も見た事あるだろ?隣からそいつ出てきたの」

「あぁ。そうだけど・・・でも、さっきここ入る前に俺が見たのは変なオヤジだぞ?」

「あぁ?こっちだぞ?」

と、顎で壁を指した。

「あぁ・・・」

と、アパート全体の間取りを考えて、記憶を辿る。

「いや、やっぱりそこからオヤジ出てきたって!」

「まさか・・・オヤジさんが来てるのかな。でも聞いてないぞ、そんな事・・・」

「まぁ、それくらいは言わなくてもな・・・・」

「そうだよ。変な事言うなよな~。マジでビビルじゃないか」

「わりいわりい」

「最近、ここらで多いんだよ。強盗がさ。しかも女の一人暮らしばっか狙った強盗」

「ほ~。怖いな・・・」

「まぁウチに来たら逆にボコボコにしてやるけどな」

「はっはは」

笑いながらもダイジロウは変なオヤジを思い返していた。

深々とニット帽を被っていたし、暗がりだったし・・・

・・・・

緑っぽいコートに・・・・

ピンクのカバン・・・

ピンク?60近いオヤジが?何で俺を見てびびった?


「おい!行くぞ」

「は?」

俺の慌てた様子に呆気に取られながらも付いてきているようだった。


玄関はしまっており、電気は点いていない。

「開けるぞ」

「開かねーよ。アイツはいつも鍵掛けまくるからな・・・。普通だけど」


ダイジロウが取手に手をやると普通に開いてしまった。

「え・・・」

二人は顔を合わせた。

瞬間、友人は急ぎ部屋へ入っていった。


中の構造は友人の部屋と一緒だった。良い香りがする・・・気がした。


電気が点く。


友人は震えだした。

肩越しに覗くと、奇異な目は閉じられていて黄色いパジャマであろう服には

赤黒い模様が多数付いていた。動いている気配は全く無かった。


ダイジロウは体全体が震えだしたのが分かった。

友人は固まったままでいる。

友人を見たとき、不思議と冷静になれた。


「と、とにかく救急車だ!」

慌ててポケットを探すが無い。友人の部屋だ。

裸足のまま友人の部屋へ行き携帯を取り119に掛ける。


中々出ない。1時間くらい待たされてるような気がした。

「はい、こちら・・・・・・」


テレビでは芸人が大笑いしていた。


住所も知っていたし近くには大きなスーパーもあり場所も詳しく話せた。

急いで隣の部屋へ行くと友人は奇異の・・・友人の彼女を揺さぶって何かを叫んでいた。


目の奥が熱くなってきたのが分かったが、そこには居てはいけないような気がして

裸足のままで外へ飛び出した。


友人の叫び声に反応して近隣の人がゾロゾロと出てくる。


「やめろ。見るな。出てこないでくれ・・・・」

言葉にはなっていなかった。


「嘘だろ・・・」


震えが止まらなくなっていた。

吐き気がする。

幻聴も聞こえる。

頭を抱え座り込んでしまった。


やがて赤い光が偉そうにやってきて白い人間達が何かを喋っている。

タンカを持って人だかりの中へ入っていった。


ボンヤリとその光景を見ていた。


「意識が無い!」

「急げ!」

「タンカだタンカ!もう一つ!!」

「早く呼べ!!!」


ダイジロウには何も感じる事が出来なかった。

ただ、地面が冷たくて尻が冷たい。赤い光。それだけだった。



聞き取りづらいマイクで叫ぶ声。五月蝿いサイレン。

赤い光は遠ざかっていった。


どれだけ道端に座っていたのだろうか。


気がついたときには警官に何かを聞かれていた。

多分、ちゃんと会話は出来てただろうし、歩くことは出来ていた。


奇異の目の子の部屋に連れてこられた。

だいぶ過激な部屋の模様だな。


友人はどこにいるんだ・・・。


思い出そうとしても、よく分からない。

自分は、ダイジロウは警官に何かに答えているが、

俺は何を言ってるか分からない。

友人の首を絞めた事と奇異の目で見られた事だけは鮮明に覚えているのに。


呆然としたまま、パトカーに乗りどこかへ連れていかれた。

夜とはいえ見覚えのある景色。

そりゃそうだ。

さっき歩いてここを通ったんだ。


病院へ着いた時には歩けなくなっていた。

警官に肩を担がれ、ソファに座らされた。


視線がずっと動かなかった。




どれくらい時間が経っただろうか。

外が明るくなってきている。

誰かが外から入ってきている。大勢だ。


その中の一人に殴られた気がした。


オバサンの匂いだ。

殴られた所が熱くなってくる。


ずっと視線は動かなかった。

地面に佇む、誰かの髪の毛をずっと見ていた。



段々と賑やかになってきて病院の業務が始まった。


警官に何かを言われたり、看護士に何かを言われたりしたが全く体に力が入らなかった。


人が移動する際に、地面の髪の毛は揺れ動いたが、上手い事ずっと視界に入れられる範囲に

留まっていた。


再び人の声が少なくなっていく。


ダイジロウはソファの上に倒れこんでしまった。




名前も分からん虫の鳴く声がする。



泣きたいのはこっちだ・・・。




「・・さーん。・・さーん」

酷い頭痛だ。目も痛い。

ダイジロウはベッドの上にいた。


「自分の名前は言えますかー?」


「あぁ・・はい」


「言ってみて下さーい」


「ダイジロウ・・・」


「うん。大丈夫ですねー。先生呼んできますのでちょっと待ってて下さいねー」


「なんだかウザイ看護士だな・・・」

ベッドに倒れこんで明るい窓を見た。

視界が開けてくる。

「何してるんだ俺は!!」

体を起こして当たりを見回す。

ベッドの上の年寄りたちがアタフタした様子でコチラを見ている。

軽く会釈をして自分の携帯に気付く。

開いてみると着信有り13件。メールの印も付いている。

着信履歴を見てみると全部会社からだった。

「やっべぇ。遅刻じゃないか・・・」

時計は11時を過ぎている。

電話を掛けようと靴を履き立とうとするとさっきのウザイ看護士が現れた。

後ろには胡散臭い医者がいる。

「あぁ~。いいから座って座って」

胡散臭いヤツに両腕で押さえつけられてベッドに座り込んだ。

やけに小さい声で話しかけられ、目に光を当てられた。

「うん。問題ないでしょう。じゃ後は宜しく」

そういうと胡散臭いのは去っていった。

「じゃアナタを待っている人がいるのでコチラへー」

「はぁ」

部屋の外にいたのは友人と奇異の目の女。


では無く、警官ぽい人だった。

段々と意識が沈んでいくのが分かった。

色々と思い出してきた。


友人の笑顔。奇異の目。冷たい地面。髪の毛。

病院内の使われてなさそうな会議室なる部屋に連れて行かれ、

アレコレ聞かされた。


今朝に、奇異の目のカードを使ったらしく犯人はもう逮捕された事。

奇異の目はこの世には居ないこと。

そして友人も自身で喉を裂き、一緒に行ったこと。


他にも色々聞かれたりしたが、もうそれ以外は頭に入らなかった。

友人の気持ち悪い笑顔が目に浮かぶ。

奇異の目で見られた事を思い出す。

二人の写真は幸せそうだったなと、思い出す。

ダイジロウはまた頭を抱え込んで机に蹲ってしまった。


警官ぽい人に肩を叩かれ、そいつは出て行った。


また視界が動かなくなりそうだった。


しかし、本当にこれは現実か?


そう疑うしか無かった。

気持ちを押し殺すように、会社に連絡しとくか。

と、会議室を出て初めて見るであろう病棟を歩き出した。

病室はどこも満室のようだ。

これだけ病人がいれば、人が死ぬなんて、そんなに大事じゃないんだ・・・

そう自分に言い聞かせるようにした。


病室の様子や分かるはずもない患者の名前の入ったプレートを見ながら

階段を探している内に妙に馴染んだ名前が目に入った。

(○○ カズコ)


「・・・あいつが?・・・まさかね」


と、言いつつ室内を覗くと紛れも無いカズコだった。

窓の外を眺めるその綺麗な横顔は・・・

忘れもしない。

初めて付き合った相手。

初めての相手。

ダイジロウを振った相手。


ダイジロウは見入っていた。

具体的な理由も告げずに別れを言われた・・・。

怒りと。

見たことも無い沈んだ表情と・・・。


ダイジロウはカズコの元へ歩いていた。

と、手前の患者の相手をしていた看護師に止められた。

「ちょっと。もしかして○○さんのお知り合いですか?」

「・・・はい」

「良かったぁ。あの子入院してきてから誰とも話そうとしないのよ。お友達が来てくれたら

 喜んでくれるかもね。ちょっと○○さん!○○さん!」

名前を呼ばれても振り向こうともしない。

「はぁ」

溜息をついてダイジロウを見ながら手で誘導した。



カズコに見えるように視界を塞いだ。

カズコの目はダイジロウの顔を見るわけでもなくずっと腹のあたりを見ている。


ダイジロウは腰を落として目線を合わせた。


カズコの目は見る見る見開いていきダイジロウの顔全体を見回した。

ダイジロウもカズコの顔を見ていた。顔半分は包帯だらけだ。

(まるでミイラ男。女か。)

患者衣から出ている手の甲や指も包帯だらけだった。

「どうしたんだ?」

ダイジロウが聞くと、カズコはぐっと涙を堪えているように見えた。

ボソっと何かを呟いたカズコだったが次の瞬間にはシーツに隠れるように伏せた。


不思議な顔で看護士を見ると、病室の外へと手で誘導された。



再び会議室的な部屋へ戻ってきた。


そこで、カズコが運ばれてきた経緯と怪我の具合。

精神的にもダメージを追っている可能性が非常に高いと聞かされた。

また、ダイジロウが来るまでは一切、表情が変わることも無かった事と、

カズコの家族に一切連絡が取れない事を伝えられた。


なんだか死人と同じじゃないか・・・。


ダイジロウが言ったのか看護士が言ったのか。

恐らくダイジロウが言ったのだろうが、友人や奇異の目の子を考えると

カズコの病状なんて何でも無いじゃないか。そう思えた。


そう結論を出すと、ダイジロウは何を考える風も無く会議室を出て病院を出て

タクシーを拾い自宅へと向った。


友人のアパートと同じくらい古いアパートの自室の前に来て愕然とした。

鍵が無いのだ。


・・・辿りたくない記憶を思い浮かべると友人の部屋。コタツの横。汚いソファの隣・・・

部屋の隅。俺専用の荷物置き場になっていた所に鍵・・・カバンを置いたのを思い出した。



戻れるわけが無い。


携帯も電池が残り1つ。会社のバカ共が・・・。

アパートの合鍵は実家に預けてある。


ダイジロウは実家へ電話した。


「はい。○○です」

「あぁ、俺だけど・・・」

「なんだ、ダイか。どうした」

「俺のアパ」

音が切れた。

画面を見るとクリリンがカワイくGOODBAYと手を振っている。


「はぁ」

サイフを見ると1万3千円と50円。カードもあるが蓄えなんか無い。

あったとしても、2,3千円程度だろう。



玄関を背に蹲り途方に暮れた。

大家さんでも来てくれれば・・・・とは思ったが大家がアパート見に来るなんて記憶が無い。

誰かに電話を借りるか・・・そして実家から鍵を持ってきてもらおう。


もう休みたい。グッスリ休みたい。


そう考え、立ち上がった。

気が付けばもう日が暮れてきている。



名前も分からん虫の鳴き声がする。



だから泣きたいのは・・・・




ふと、友人の顔が浮かんだ。不細工な笑顔で笑っている。

奇異の目もその横に浮かんでいる。

さらにカズコの痛々しい姿も同時に浮かんだ。


「は。俺だけグッスリ休むってか。そうはいかねぇよなぁ」

「カズコもまだ死んでないってな・・・。でも家族に連絡も付かず精神的にも・・・」


「みんな死んだんだな」


「俺も行くよ・・・」


虚ろな目でダイジロウは歩き出す。

「いつもお前に助けてもらってたもんなぁ」

「アンタのその目は人を殺せるよ」

「なんで俺を振ったんだか、そこんとこよーく聞かせてもらおうじゃないか」

「ははは・・・」


街ではクリスマスソングが溢れ煌びやかなネオンが目に痛かった。


「クリスマスだな~」

「お前らも楽しみにしてたんだろうなぁ」


周りはカップルだらけ。あるいは同性のグループ。

一人で歩いてる奴なんて数えるくらいしかいなかった。


「あっはははーうけるー」

「ねぇ次はもっと持ってそうな奴にしようよー」

「さんせーぃ」


女子高生グループも大はしゃぎだ。


「ちょーありがとう!」

宝石店から出てきたカップル。

「私、こんなに嬉しいクリスマスなら死んでもいいよ!」

「はっはははー」



トナカイのきぐるみを来た奴にすれ違い様に肩を叩かれた。

「めりーくりすまーーーす!」




ダイジロウは人ごみを避けるように歩みを変えた。


妙に冷え込んでくる。

雪でも降るんじゃないだろうか・・・。



どれくらい歩いたのだろうか。

ダイジロウが足を止めたのは病院の中。カズコのいたベッドの前だった。

そっとカーテンをめくると、カズコはまた外を見ていた。

傷の少ない右側の目の周りがヒクヒクしている。


痛々しい姿に半笑いしながらカズコの顔の目の前にダイジロウは立った。

今度はカズコの目線はダイジロウの顔へと辿り着いた。


「外へ行こう」

そう手を出した。

カズコの手は簡単にダイジロウの手の上に乗っかった。


手を繋いだまま、病院を抜け出す。

幸い誰にも見つからなかった。

クリスマスだし、看護士だって浮かれるよな。


「さて、どうするか」




「・・・どこか行きたいトコあるか?」


「狂ってる」


「そうか。そうだな」


適当に手を引いて歩き出す。



「寒いな・・・」


「狂ってる」


「お前、それしか言えないのか?」


「狂ってる」


「あぁ、俺が悪かったよ」


「・・・狂ってる」



ダイジロウは片手でタバコを取り出し火を付けた。

一吸いして思い出したように

「お前、タバコ嫌いだったっけな」

と聞くと、何も答えなかった。

「まぁいいか」


「そういえば、何で俺は振られたんだ?」

「狂ってる」

「そうですか・・・」

「・・・・」



雪が降ってきた。


「お、ホワイトクリスマスってヤツだな」

「狂ってる」


寒さで手が悴んできた。


「もうダメだな。手が冷てぇ」

「・・狂ってる」



「死ぬと、人間はどうなるのかな・・・」

「・・・狂ってる」

「お前は正常に戻るかもな」

「・・・狂ってる」

「そうか」


「ん」


「お前、手が震えてるじゃないか」

「・・・・」

カズコの顔色は青く変色していた。


「そりゃそうか。患者衣一枚だもんな」

「・・・・」


ダイジロウはタバコを手前に落とし、足で火を消した。

すると、視界から手のひらが迫ってきた。

「狂ってる」


「ってぇ・・・」



ダイジロウはそのままジャケットを脱ぎカズコにかけた。

「狂ってる」


「はいはい」

再び手を引いて二人は歩き出す。




「こりゃ、寒いな・・・。ごめんな」

「・・・狂ってる」



「なぁ、死ぬって何だろうな」

「狂ってる」

「じゃ生きるって何だろうな」

「・・・」


「お」

カズコは俯いてそのまま顔を上げなかった。

「寒いもんなぁ」


「生きる」


「ん?」


「生きる」


「あぁ。いい言葉だよな。生きたいと思ってる内はさ・・・」


「・・・狂ってる」




「生きてる内に温まろうか」


ダイジロウは手を引いたままカズコと共に建物の中へ入っていった。



幸い部屋は一つだけ空いていた。

「クリスマスなのにねぇ。不景気っていやだねぇー」

「狂ってる」


部屋はとても暖かかった。

「ふえーあったけぇなー・・・」

「暖かい」


「お」

とカズコの顔を見ると鼻水が垂れている。


ダイジロウは笑いを堪えながらティッシュを持って拭き取った。

カズコは自分の足でベッドまで歩き出した。


ダイジロウはカーテンを開けた。

「うおお。マジか。海が見えるよ。どこまで歩いてきたんだ俺達は・・・」


振り返るとカズコは横になっていた。


具合でも悪いのだろうか・・・。

「大丈夫か?・・・いや・・・でも・・・いいか」


ダイジロウは服を脱ぎ風呂場へ向った。

(※サービスショット無し)


「ぷはー」


シャワーを浴びながら目を閉じていると、そのまま寝てしまいそうだった。


極楽・・・ではあったがカズコが気になったダイジロウはすぐにシャワーを止めた。



「まだ迷ってるのか・・・俺は・・・」


ベッドの横で立ち尽くす。




すると、ダイジロウに気付いたカズコは、両手を差し出した。


ダイジロウはカズコの中へ入っていった。


「お前、精神異常とか・・・無いんじゃ・・・ないか!?」

「暖かい」

「・・・・」

「生きてるの」


「そうだな」

途中で顔に巻かれていた包帯が解けた。



所々皮膚が剥がれ目の下には明らかにタバコだと分かる火傷があった。



・・・言葉も出なかった。


傷という傷を全て嘗め回し、心からカズコを抱きしめた。




目を閉じれば友人と奇異の顔が浮かんでくる。

開ければ・・・。








メリー・クリスマス



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